「替え玉受験」すると内定は絶望的…企業が「ズルい大学生」を見抜く凄まじい対策(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

「替え玉受験」すると内定は絶望的…企業が「ズルい大学生」を見抜く凄まじい対策
2/22(水) 8:03配信
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替え玉受検で高得点のはずなのに
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2020年代以前から横行していながら逮捕事例はゼロだった適性検査の替え玉受検。
それが2022年に初の逮捕者を出したことは前編記事「就職試験で「替え玉受験」がバレた…依頼した女子大生・受験した「京大院卒エリート社員」の哀れな末路」で示しました。
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後編となる本記事では、この替え玉受検による効果について解説していきます。
前編記事でも示したように、替え玉受検を依頼して書類送検された就活生はいずれも内定を得るところまでは行っていません。
一部報道では、数十社依頼した中で最終選考まで残った企業は数社程度だった、とも言われています。
私はこの書類送検された就活生を取材したわけではありません。 ただし、替え玉受検を依頼しながら内定を得られず苦戦した就活生、あるいはそうした就活生を落とした企業・採用担当者は相当数、取材しています。
実は替え玉受検の不正対策は簡単
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替え玉受検で内定を得られない理由を知るには適性検査の前提条件を知る必要があります。
主なもので3点、「適性検査で精度の高いものは企業側負担が高額」「能力検査と性格検査はセット(ばら売りは基本なし)」「適性検査の利用方法は企業次第」、これらを理解しておく必要があります。
まず、1点目、「適性検査で精度の高いものは企業側負担が高額」。
企業側が適性検査の結果を重視していても、選考序盤から高額な適性検査を利用していては、それだけで莫大な利用料金が発生します。
しかも、自宅受検であれば、簡単に不正できてしまうことは、企業側も熟知しています。
では、どうするか。実は結構、簡単で適性検査を2回実施すればいいのです。
1回目は不正しやすい自宅受検、選考中盤ないし終盤に2回目を実施、こちらは会場受検です。会場受検は企業の会議室などを利用して対面式で実施されます。
選考の中盤・終盤だと選考に参加する就活生も相当、絞られていますから人事担当者は就活生とも顔見知りになっています。ここで替え玉受検はほぼ不可能。
適性検査を2回実施、そのスコアに大きなかい離があれば、不正をしたことが簡単にあぶりだせてしまいます。企業からすれば、躊躇なく落とすことができます。
適性検査の2回実施は、他のパターンとしては「同じ問題を改めて対面式で解答させる」「面接中の口頭試問で数学の問題を出す」などもあります。
この簡単、かつ、効率的な不正対策によって、替え玉受検をした就活生は内定まで行きつかないのです。
就活生が軽視する部分での選考落ちも
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2点目「能力検査と性格検査はセット(ばら売りは基本なし)」と3点目「適性検査の利用方法は企業次第」はまとめて解説します。
この前提条件をなぜ示したのか、と言えば、企業によっては「能力検査はそこまで重視しない。性格検査をより重視したい」とするところがあります。具体的には接客業務の多い、小売・流通・アパレルなどの企業、職種だと販売職、一般職では、こうした企業が多いようです。
ところが適性検査のばら売りはほぼしていません。そうなると、企業としては、適性検査の導入をあきらめるか、能力検査をそこまで重視せずに性格検査を利用するか、二択となります。しかし、適性検査を全くスルー、という選択を企業はほぼしません。
そこで、後者(能力検査を重視せず性格検査を重視)を選択するわけですが、こうした企業では、当然ながら替え玉受検の効果が全くありません。
いくら能力検査で高スコアとなっても、それを企業側は重視していないのですから。 それどころか、替え玉受検の自称・代行業者が受検した性格検査では、当然ながら自称・代行業者の性格が示されることになります。
その性格検査の結果が企業の求める人物像から大きくかい離していると、適性検査の段階で落とそう、という話になります。
ある小売業界の採用担当者はこの事情を次のように話します。
「うちは適性検査では能力検査よりも性格検査を重視しています。例年、1~2割くらいは適性検査の段階で落ちますね。落ちる就活生の相当数が能力検査のスコアは極端に高く、性格検査はたぶん、難関大出身のエリートなんだろうなあ、という共通点があります。
社内でも色々話して、おそらくは替え玉受検だよね、と。正直、うちで替え玉をしてもムダなんですけどね」
不正対策をくぐり抜けたとしても
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2022年11月に書類送検された就活生は報道によれば、数十社の替え玉受検を依頼。その企業の内訳や具体名は出ていません。
しかし、性格検査を重視している企業や2回実施などで不正対策をしている企業であれば、最終選考の前に落ちたとしても、不思議ではありません。
それから、クレジットカード会社は最終選考で落ちた、との報道もありました。金融関連の企業は、数的処理能力を重視します。
そのため、適性検査の2回実施(または数学の口頭試問実施など)で替え玉受検による不正対策を実施したことは容易に想像できます。
それでも、不正対策をくぐり抜けて内定に至った就活生もいるでしょう。では、そうした就活生が社会人となって幸せか、と言えば、私はそうとは思えません。
内定後に替え玉受検が発覚、それによって内定取り消しとなる可能性もあるでしょう。2020年代以前は、そうした話がなかったとしても、警視庁の捜査方針が変わった以上、内定取り消しのリスクは高まった、と言えます。
入社後の発覚で低評価も
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内定取り消しまで行かなくても、想定されるのは、社内での冷遇です。能力検査のスコアを偽って入社したのであれば、企業からすれば、その社員は数的処理能力が高い、という前提で接します。
大企業を中心に、入社後も昇進等でテストを課すところもあります。
そうした社内テストや仕事などを通して、その社員に数的処理能力が高いか低いかははっきりしていきます。能力が低い社員であれば、適性検査での替え玉受検が疑われて、人事評価などは著しく落とされることになります。
昇進や昇給、部署異動でも本人の希望から大きくかけ離れたものになるでしょう(もちろん、他の部分で高いパフォーマンスを残すことができれば話は別ですが)。
まとめますと、適性検査の替え玉受検は百害あって一利なし、なのです。 適性検査、特に能力検査は地道な努力を続ければ、きちんと回答できるようになります。『これが本当のSPI3だ! 』(講談社)などを活用して、勉強することを強くお勧めします。
さらに連載記事『「低学歴」な大学生を切り捨てる、就活「学歴フィルター」の過酷な実態』では、適性検査の実態について、学歴に応じた選別機能という側面から紹介します。
石渡 嶺司(大学ジャーナリスト)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c5286303a772cf72bf2620e602474a48db4a2a95