割高な空の旅、まだまだ続きそう-航空運賃が安くならない理由(Bloomberg) - Yahoo!ニュース
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割高な空の旅、まだまだ続きそう-航空運賃が安くならない理由
4/27(木) 21:54配信
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Bloomberg
(ブルームバーグ): 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が収束し、各国が入国規制を緩和、出張も観光も本格的に再開した。航空会社はそれなりの利益を見込んでいる。それでも、航空運賃が高止まりしている。
理由の一つは旅客機の不足だ。パンデミックの最中、旅行需要が激減。航空各社は運航可能な旅客機数を大きく減らしていた。以前のような運航体制を整えるには時間がかかる。
別の理由もある。国によっては3年間も旅行する機会が奪われていたため、運賃が高くても旅行したいと考える人は多い。
オンライン旅行会社のブッキング・ドットコムが今後1年から2年の間に旅行を計画している成人2万5000人余りを対象に実施した調査によると、失われた機会の埋め合わせに旅程を「よりぜいたく」にすることを多くの旅行者はいとわない。
同社のフライト担当シニアディレクター、マルコス・ゲレロ氏は「たとえ一部の旅行が以前より少し高くなったとしても、旅行にお金を出すことに価値を感じている人はまだ多い」と述べた。
搭乗客数で欧州最大の航空会社ライアンエアー・ホールディングスのマイケル・オリアリー最高経営責任者(CEO)によれば、航空券価格は今後数年、高水準で推移する可能性が高く、消費者にとっては悪いニュースだ。
スタッフの不足
新型コロナ禍で航空会社は2000億ドル(約27兆円)近い損失を被り、数千万という航空関連職が削減された。
旅行需要の回復が順調に進む今、業界が苦慮しているのが十分な従業員の確保だ。この業界で働いていた多くの優秀な人材は、より安定した職に就こうと別の業界に転職した。
人手不足に伴い、空港のチェックインカウンターや入国審査、手荷物預かり所での遅延が深刻化。航空会社はスタッフを確保しつなぎ留めるため、より良い給与を支払うよう強いられ、こうした追加コストも航空運賃を押し上げている。
原油価格
航空会社にとって最大のコストは燃料だが、原油は2019年1月に比べてまだ50%余り高い。多くの航空会社、特に格安航空会社は燃料価格にヘッジをかけておらず、ロシアのウクライナ侵攻といった事象に端を発する価格高騰の影響を受けやすい。
世界の炭素排出量のうち、2%強を占めているのが航空会社だ。よりクリーンな未来を目指すという点で、業界の脱炭素は遅れている。現時点で唯一実現可能な解決策である持続可能な航空燃料は、従来のジェット燃料の5倍ものコストがかかることも理由だ。
国際航空運送協会(IATA)によれば、50年までのカーボンニュートラル実現に向け、航空業界は2兆ドルを支払う必要がある。航空会社はこの対応で航空券を値上げしなければならず、空の旅を割高にしている。
航空機
パンデミックの最悪期には世界の民間航空機の3分の2程度に当たる1万6000機もの航空機が地上待機を余儀なくされた。こうした航空機を再び運航可能な状態にするのは、安全性を確保するためにあらゆる部品を点検するなど膨大な作業となる。
地上待機となった多くの航空機は米国やオーストラリアの砂漠で保管されていたが、内装やエンジンに損傷などの問題が生じている可能性もある。
航空機メーカーも問題を抱えている。下請け企業の労働力不足が製造を抑えているほか、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する制裁措置でエアバスやボーイング、それに両社のサプライヤー企業がチタンなどの原材料を確保することが難しくなっている。このため、部品価格の上昇も顕著だ。
ライアンエアーのオリアリーCEOは、今月開催されたブルームバーグの会議で、「生産能力が課題だ」と指摘。「エアバスとボーイングは中期的に有意な増産を実現できない。今後2年、3年、5年と生産能力は厳しい状態が続く」と予想した。
同CEOによると、運賃は昨年、最大15%上昇したが、今年の夏も2桁の値上がりとなる見込み。
中国
世界2位の経済大国、中国はパンデミック前、年2800億ドル近い旅行支出を誇っていたが、コロナ禍からの復活は今のところ途上段階だ。
中国政府は都市全体を封鎖するなど極めて厳しいコロナ封じ込め策をどの国よりも長く続けた。こうした「ゼロコロナ」政策は昨年終盤に撤回されたが、中国の人々は海外旅行に対し依然として慎重だ。
26日に発表された調査では、23年に中国本土から出るつもりはないとの回答が31%に上った。
中国人観光客、半数余りが今年は海外旅行予定せず-安全性巡り懸念
アジア太平洋航空協会(AAPA)によれば、中国がパンデミック前に見られた国際便の運航水準に戻るには少なくとも1年かかる見通し。
原題:Why Flying Is So Expensive and Likely to Remain That Way(抜粋)
--取材協力:Siddharth Vikram Philip、Karthikeyan Sundaram.
(c)2023 Bloomberg L.P.
Anurag Kotoky