「孤独な暮らしをするなら刑務所に戻ったほうがいい」60歳以上の女性受刑者が急増している衝撃の理由
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/0d/9e31aa63c1b124c976c56e78d2786fb6.jpg)
(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース
孤独な暮らしをするなら刑務所に戻ったほうがいい」60歳以上の女性受刑者が急増している衝撃の理由
4/4(火) 11:17配信
0コメント0件
出所=法務省「令和3年版犯罪白書」
社会の高齢化に伴い、シニアになってから罪を犯し刑務所に入る人が増えている。ジャーナリストの猪熊律子さんは「受刑者全体における女性の割合は増加傾向。中でも65歳以上の伸びが著しく、女性受刑者の中で約2割に。“塀の中のおばあさん”が増えるということは、刑務所が福祉施設化することを意味する」という――。
【この記事の画像を見る】 ※本稿は、猪熊律子『塀の中のおばあさん』(角川新書)の一部を再編集したものです。
■女性受刑者の中で65歳以上が約2割を占める 年々、“おばあさん”世代の高齢受刑者割合は上がっているが、最初に受刑者全体の状況を見ておきたい。
令和3年版犯罪白書によると、2020年に刑務所に入った受刑者(男女計)は1万6620人(男性1万4850人、女性1770人)。
人口減少や少子化などの影響もあり、5連続で戦後最少を更新した。戦後、最も人数が多かったのは1948年の7万727人。平成時代に最も人数が多かったのは2006年で、3万3032人だ。
受刑者を性別で見ると、減少ぶりが著しい男性に比べ、平成期以降、増加や高止まりの傾向が見られるのが女性だ。2020年の受刑者数は1770人。入所受刑者全体に占める割合は10.6%で、戦後初めて10%を超えた。終戦直後の1946年には2.5%、平成元年である1989年には4.2%だった。
女性の中でも増加ぶりが目立つのが、65歳以上の高齢女性だ。女性受刑者全体に占める割合は、1989年にはわずか1.9%だったが、今では19%と、ほぼ2割を占める。高齢化の影響が塀の中にも及んでいると考えられるが、この値は、男性受刑者に占める65歳以上の男性の割合(12.2%)と比べても高い(図表1)。
女性全体で最も多い年齢層は40代で、26.1%と、全体の3割近くを占める。 ■逮捕された理由はほとんどの高齢女性が「窃盗」
犯罪の内容はどうか。 男性、女性とも、罪名のトップは「窃盗」で、次が「覚醒剤取締法違反」であるのは共通している。両者をあわせた割合が男性受刑者では6割弱なのに対して、女性の場合は8割を超える。窃盗が46.7%、覚醒剤取締法違反が35.7%というのがその内訳だ。
女性で次に多いのが「詐欺」(6.7%)で、以下、「道路交通法違反」(1.9%)、「横領・背任」(1.3%)、「殺人」(1.2%)、「その他」(6.6%)の順となっている。
高齢受刑者の犯罪の内容はどうだろうか。
高齢受刑者全体(男女計)では、罪名は「窃盗」がトップで約6割(59.4%)を占める。次いで「覚醒剤取締法違反」(10.2%)、「道路交通法違反」(6.1%)と続く。
これを男女で比較すると、高齢男性では窃盗が5割程度(53.8%)であるのに対して、高齢女性ではほぼ9割(89%)を占め、高齢女性の犯罪として窃盗が断トツに多いことがうかがえる。窃盗の中でも多いのが「万引き」だ。万引きは通常、微罪とされる。それにもかかわらず刑務所に来るということは、それが何度も繰り返されていることを意味している。
<>
■刑務所が孤独な高齢者の「居場所」になっている現状
もうひとつ驚いたのが、女性の副看守長の次の言葉だ。
「刑を終えて社会に復帰しても、家がない、出迎えてくれる人もいない。ならば刑務所のほうがいいと、何度も戻ってきてしまう高齢者が多い」
犯罪で多いのは万引きなどの窃盗で、経済的困窮はもとより、「寂しかった」などの理由で罪を重ねるケースが目立つとも聞いた。
これは福祉施設や住宅整備が十分でないなど、ハード面の政策の貧しさからくるものなのだろうか。それとも、孤独や孤立など、ソフト面のニーズに対する政策の不十分さからくる結果なのだろうか。刑務所が高齢者の「居場所」になっていいはずがないと、当時、強く思ったのを覚えている。
■悪い犯罪者というイメージとは異なる受刑者たち
福島を訪れた後、編集局の部長職となり、自分で取材する機会がなかなかなかったが、2017年、編集委員となったのを機に刑務所取材を再開した。高齢の女性受刑者はその後どうなっているのだろうかと、ずっと気になっていたからだ。ほぼ10年ぶりに福島刑務支所を再訪し、その他の女性刑務所も訪れた。
そこでわかったことは、高齢受刑者の割合は増え、刑務所の福祉施設化はますます進んでいるということだった。
刑務所のイメージが、世間一般がもつものと随分様変わりしていることも実感した。一般に、「刑務所」というと、男性、しかも暴力団ややくざなど、屈強で極悪非道な男性が服役しているイメージが強いのではないかと思う。統計を見ると、今から約30年前、1990年には、新規に刑務所に入る受刑者の約4人に1人(24.7%)が暴力団関係者だった。
それがどうだろう、今ではその割合は約25人に1人(4.2%)にまで減っている。反対にこの30年間で割合が増えたのが女性で、受刑者全体の1割を占め、しかも65歳以上の女性が顕著に増えている。
男女あわせた65歳以上高齢者の割合は約13%と、約30年前の10倍に増えた。さらに、受刑者全体(男女計)の約2割は知的な障害をもつ可能性が高いともいわれている。
「極悪非道な大犯罪人」とはだいぶ異なる印象のデータが並んでいるのが現状だ。
以下はリンクで