女性を金づちで撲殺し、強盗殺人罪で服役40年。人生の大半を刑務所で過ごす70代男の「罪の意識」と「社会復帰」(47NEWS) - Yahoo!ニュース
女性を金づちで撲殺し、強盗殺人罪で服役40年。人生の大半を刑務所で過ごす70代男の「罪の意識」と「社会復帰」
10/21(月) 10:02配信
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コメント162件
47NEWS
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自身の起こした事件を語る山本正男受刑者(仮名)
70代の山本正男受刑者=仮名=は無期懲役の判決を受け、徳島刑務所(徳島市)で刑に服している。犯した罪は強盗殺人。事件を起こしたのは1970年代、20代の時だ。
【写真】刑務所の前で「出待ち」を毎朝する男性、何をしている? 「刑務官はいい顔をしないが、やめられない」同行して分かった理由
勤務先の社長の家から現金十数万円を盗み、居合わせた社長の母親を金づちで殴って殺害した。「いまだに心に残るくらい強烈なうめき声だった」。恐怖を打ち消そうと、思わず火を放った。事件を起こした動機は「遊興に明け暮れて妻の出産費用に困った」。一審では死刑判決だったが、二審で無期懲役になった。
殺人などの罪で服役する無期懲役受刑者は、人生の大半を刑務所で過ごすことになる。彼らは過去とどう向き合い、何を思って過ごしているのか。無期懲役受刑者を多く収容する徳島刑務所で、3人の受刑者がインタビューに応じた。1人目は刑務所で約40年過ごしてきた山本受刑者だ。(共同通信=今村未生)
※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。
▽「幸せ」の意味がわからなかった
山本受刑者は4人きょうだいで、寺に関連する施設で育った。両親の顔は知らなかった。小学5年のころ、山本受刑者だけ「グレて」、別の施設に移った。「きょうだいの愛情は全く感じた事がなかった。『幸せ』という言葉の意味は分かる。だけど幸せだった記憶がない。本当の『幸せ』の意味が分からない」。人を信用できず、友達もいなかった。
事件前、姉が戸籍をたどって母親を見つけ、一度だけ会うことができた。しかし、その母親は服役中に亡くなったという。
▽死刑判決で「自分見失う」
一審では死刑判決を受けた山本受刑者。そのころ、体に不思議なことが起きた。1、2カ月間、全く声が出なくなり、神経が過敏になった。「聞こえるはずのない蛍光灯のバチバチという音が聞こえる。自分自身を完全に見失っておかしくなっていた」
二審は無期懲役判決だった。「重しが薄れたような感じ」がした。上告はせず、刑は確定した。「死に対しておびえる死刑と、ほんのわずかでも希望を持てる無期懲役刑は全く違う」
▽事件で失った絆、生まれた絆
徳島刑務所に服役して約40年。事件後に生まれた息子のことは片時も忘れていない。「〇月〇日〇時〇分〇〇〇〇グラムで生まれた。これはずっと頭に入っている」
裁判のため拘置所に収容されている時に、息子と面会した。当時妻が送ってくれた写真は大切に持ち続けている。だが、妻とは裁判中に離婚し、家族としての縁は切れた。
10/21(月) 10:02配信
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自身の起こした事件を語る山本正男受刑者(仮名)
70代の山本正男受刑者=仮名=は無期懲役の判決を受け、徳島刑務所(徳島市)で刑に服している。犯した罪は強盗殺人。事件を起こしたのは1970年代、20代の時だ。
【写真】刑務所の前で「出待ち」を毎朝する男性、何をしている? 「刑務官はいい顔をしないが、やめられない」同行して分かった理由
勤務先の社長の家から現金十数万円を盗み、居合わせた社長の母親を金づちで殴って殺害した。「いまだに心に残るくらい強烈なうめき声だった」。恐怖を打ち消そうと、思わず火を放った。事件を起こした動機は「遊興に明け暮れて妻の出産費用に困った」。一審では死刑判決だったが、二審で無期懲役になった。
殺人などの罪で服役する無期懲役受刑者は、人生の大半を刑務所で過ごすことになる。彼らは過去とどう向き合い、何を思って過ごしているのか。無期懲役受刑者を多く収容する徳島刑務所で、3人の受刑者がインタビューに応じた。1人目は刑務所で約40年過ごしてきた山本受刑者だ。(共同通信=今村未生)
※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。
▽「幸せ」の意味がわからなかった
山本受刑者は4人きょうだいで、寺に関連する施設で育った。両親の顔は知らなかった。小学5年のころ、山本受刑者だけ「グレて」、別の施設に移った。「きょうだいの愛情は全く感じた事がなかった。『幸せ』という言葉の意味は分かる。だけど幸せだった記憶がない。本当の『幸せ』の意味が分からない」。人を信用できず、友達もいなかった。
事件前、姉が戸籍をたどって母親を見つけ、一度だけ会うことができた。しかし、その母親は服役中に亡くなったという。
▽死刑判決で「自分見失う」
一審では死刑判決を受けた山本受刑者。そのころ、体に不思議なことが起きた。1、2カ月間、全く声が出なくなり、神経が過敏になった。「聞こえるはずのない蛍光灯のバチバチという音が聞こえる。自分自身を完全に見失っておかしくなっていた」
二審は無期懲役判決だった。「重しが薄れたような感じ」がした。上告はせず、刑は確定した。「死に対しておびえる死刑と、ほんのわずかでも希望を持てる無期懲役刑は全く違う」
▽事件で失った絆、生まれた絆
徳島刑務所に服役して約40年。事件後に生まれた息子のことは片時も忘れていない。「〇月〇日〇時〇分〇〇〇〇グラムで生まれた。これはずっと頭に入っている」
裁判のため拘置所に収容されている時に、息子と面会した。当時妻が送ってくれた写真は大切に持ち続けている。だが、妻とは裁判中に離婚し、家族としての縁は切れた。
どうしているだろう、とは思うが「未練でしかない。自分が犯したことの結果だ」。一方的に送っていた年賀状は服役して30年の節目に送るのをやめた。区切りを付けるためだった。
一方で、事件を起こした後に生まれた絆もある。5つ年上の姉との交流だ。「叱咤激励しながらずっと支えてくれている。ものすごく愛情を感じる」。被害者を供養してくれる寺が見つかり、山本受刑者が送る1万円を姉が代理で納めている。
▽服役40年、仮釈放の手続きは―
服役後、ほかの受刑者をまとめる立場を任されるようになり、自分の中で変化を感じるようになった。人とうまくコミュニケーションをとれない性格と向き合い、少しでも直そうと努力した。それに伴って、更生しようという気持ちが強まったと感じる。そのころから20年以上、刑務所内での反則行為はゼロだという。
今年4月、仮釈放に向けた手続きの対象となった。対象となるのは2回目だった。しかし、仮釈放はかなわなかった。
山本受刑者は命を奪った被害者や、遺族のことをどう思っているのか。「自分が命を奪うことで、家族の方々もいっぺんに人生が変わってしまった。憎しみは絶対に消えないと思う」
「悔悟の念でいっぱい。自分自身は後悔ばかりが積み重なる」と話す山本受刑者。仮釈放で社会に戻れるのか。かすかな期待は捨ててはいない。だが、こうも感じている。「年齢も年齢。社会復帰の希望は薄れてきている」
無期懲役囚へのインタビュー、第2回は10代で事件を起こした30代の受刑者。彼の考える「謝罪と償い」とは。(刑務所内で撮影したインタビュー動画も公開中)
× × ×
無期懲役 期間を定めない懲役刑で、死刑に次いで重い刑罰。刑法28条は、改悛(かいしゅん)の情があれば服役から10年経過後に仮釈放できると定めるが、その場合でも一生保護観察下に置かれる。仮釈放が許されなければ、死亡するまで刑務所で過ごすことになる。法務省によると2022年12月末時点で、全国の刑事施設の無期懲役受刑者は計1688人。22年中に10人が新たに収容され、41人が死亡した。仮釈放された6人の平均受刑期間は45年3カ月。
一方で、事件を起こした後に生まれた絆もある。5つ年上の姉との交流だ。「叱咤激励しながらずっと支えてくれている。ものすごく愛情を感じる」。被害者を供養してくれる寺が見つかり、山本受刑者が送る1万円を姉が代理で納めている。
▽服役40年、仮釈放の手続きは―
服役後、ほかの受刑者をまとめる立場を任されるようになり、自分の中で変化を感じるようになった。人とうまくコミュニケーションをとれない性格と向き合い、少しでも直そうと努力した。それに伴って、更生しようという気持ちが強まったと感じる。そのころから20年以上、刑務所内での反則行為はゼロだという。
今年4月、仮釈放に向けた手続きの対象となった。対象となるのは2回目だった。しかし、仮釈放はかなわなかった。
山本受刑者は命を奪った被害者や、遺族のことをどう思っているのか。「自分が命を奪うことで、家族の方々もいっぺんに人生が変わってしまった。憎しみは絶対に消えないと思う」
「悔悟の念でいっぱい。自分自身は後悔ばかりが積み重なる」と話す山本受刑者。仮釈放で社会に戻れるのか。かすかな期待は捨ててはいない。だが、こうも感じている。「年齢も年齢。社会復帰の希望は薄れてきている」
無期懲役囚へのインタビュー、第2回は10代で事件を起こした30代の受刑者。彼の考える「謝罪と償い」とは。(刑務所内で撮影したインタビュー動画も公開中)
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無期懲役 期間を定めない懲役刑で、死刑に次いで重い刑罰。刑法28条は、改悛(かいしゅん)の情があれば服役から10年経過後に仮釈放できると定めるが、その場合でも一生保護観察下に置かれる。仮釈放が許されなければ、死亡するまで刑務所で過ごすことになる。法務省によると2022年12月末時点で、全国の刑事施設の無期懲役受刑者は計1688人。22年中に10人が新たに収容され、41人が死亡した。仮釈放された6人の平均受刑期間は45年3カ月。