そば屋のカレーはなぜ「うまい」のか? 店主に聞くと…
「そばよし」の店主・山﨑能孝さん
そば屋のカレーライスはなぜ「うまい」のか。ひと口に“カレー”といっても多くの種類がある。家でつくるカレー、専門店や牛丼屋で食べるカレー、インドやタイ料理屋で食べるカレー。それぞれ、まったく味も風味も異なる。そんななかでも根強いファンがいるのが、そば屋のカレーだ。
2020年03月14日
そば屋「そばよし」のカレーライス
今回は、そば屋のカレーがおいしい理由を探るべく調査。そして、カレーが人気のそば屋を実際に直撃してみた。
そば屋のカレーはなぜうまいのか?
まずは、Twitter上でそば屋のカレーについて言及している人たちに聞き込み調査してみる。Gyoにゃんさん(@Gyo50Gyo)もそば屋のカレーのファンのひとりだ。朝からそばとカレーを平らげることもある。基本的にルーが水っぽい「サラサラ系カレー」は苦手だというGyoにゃんさんだが、そば屋のカレーはなぜか好きなんだとか。 「だしとかそば湯を使っているからなのかなぁ? わからないけど……」
また、近年はそば屋のカレーもバリエーションが豊かになっているらしい。そば屋のカレーといえばお母さんのカレー、田舎カレーのようなイメージをもつかもしれないが、今では本格的なインドカレーを提供する店まで出てきているという。チーフさん(@SW_Chief)が話す。
「そば屋のカレーといえば和風だしですが、銀座や日本橋に店舗がある『よもだそば』は異色です。ここのカレーは本格インドカレーなんですよ」
ふらっと立ち寄った立ち食いそば屋にインドカレーがあることに衝撃を受ける人もいるのだとか。各店で様々な工夫を凝らし、こだわりのカレーを提供している様子。ともあれ、共通しているのは、やはり「うまい」ということだ。そこで、実際に人気店で話をうかがってみることにした。
日本橋の人気立ち食いそば屋店主が語る「うまさ」の秘密
「そばよし」の店主・山﨑能孝さん
「やっぱり、親しみのある味の“そばつゆ”と“だし”がカレーに入ってるから、無意識に『おいしい』と感じているんじゃないかな」
こう話すのは、都内に3店舗を構える「そばよし」の店主・山﨑能孝さんだ。厨房で陣頭指揮を取るのはその妻である女将さん。毎日大きな鍋で3店舗分のカレールーをひとりで仕込む。
もともと鰹節屋を営んでいるそばよしでは、半年かけて丁寧につくられた鰹節からだしやそばつゆを生み出す。そんなカレーライスを目当てに全国から客が訪れるという。
「福岡からわざわざ目指してやってくる人とか、日本橋に来たらまずうちで食事してから別のところへ行く人もいます。それから、三越の紙袋を持った奥様方が券売機とにらめっこしていらっしゃったり。たまに芸能人がお忍びで来られることもあります」(山﨑さん、以下同)
昼時になれば、店から行列がはみ出すほどの人気ぶり。そのなかには、カレーライスだけを食べに来る人も少なくないんだとか。 「いつもカレーライスを食べに来る若い女性のお客さんもいらっしゃいますよ
そんな鰹節のだしが魅力のそばよしだが、現在の味に到達するまでは何年も試行錯誤していたという。
「創業当初は近所の食堂の料理人がつくるカレーを出していて、そばつゆとかは入れていませんでした。とてもおいしかったのですが、なぜかあんまり売れなくて……。当時、鰹節を卸していたお店でカレーうどんが有名なお店があって。そこの大将につくり方を教えて欲しいとお願いして教えてもらったんです」
水は一切使わず、だしとそばつゆ、玉ねぎから出た水分だけ。そこに豚バラの脂身と旨味をプラスする。そしてスパイスの量などを何年も調整しながら、現在の味を完成させた。
実際に食べてみると、初めて食べたにもかかわらず、どこか懐かしいと感じた。幼い頃から慣れ親しんできただしやそばつゆの味。そして、また食べたいと思った。これが、そば屋のカレーを私たちが自然と「おいしい」と感じる秘訣なのだろう。 「鰹節卸し業の仲間が『悔しいけど牛丼チェーン店とかのカレーよりここが一番うまい!』といってくれたのが嬉しかったですね」
今では人気メニューのひとつになったカレーライス。今日もサラリーマンやOLの空っぽになった胃袋を喜ばせているのだった。