新古今増抄 巻第一 よみ人しらず 帰雁 蔵書
一 題しらず よみ人知らず 一 故郷にかへるかりがねさ夜更て雲ぢにまよふ聲きこゆ也 増抄云。夜中にかりの空をゆきやらずこゑの きこゆるをきゝて、古郷にはやく...
新古今増抄 巻第一 俊成 帰雁 蔵書
一 刑部卿頼輔哥合し侍けるによみてつかはし ける 皇太后宮大夫俊成 一 聞人ぞ涙は落るかへるかりなきて行なるあけぼの空 増抄云。古今にかりのなみだや落つら...
新古今増抄 巻第一 寂蓮 蔵書
一 摂政太政大臣家百首ノ哥合に。寂蓮法し 俗名定長。中務少輔。従五位上俊成卿猶子 俊忠ノ孫也。 一 今はとてたのむのかりも打侘ぬ朧月よのあけぼの空 古抄云。たのむ、たの...
新古今増抄 巻第一 通具 蔵書
もひとつにとは、月の色と一様に、かすみてと也。 月ばかりさへしく物ぞなきといひつるに、 花も一様にかすみこめたる世界の躰也。 藤壺は弘徽殿ノ西或五間四面飛香舎なり。 一...
新古今増抄 巻第一 菅原孝標女 春秋優劣 蔵書
てりもせず、冬の空のしぐれのごとくくもりもはてず、 らう/\として、優美なる躰也。しくものぞなき とは、くらべてうへするものなしとなり。花紅葉 雪もゑまさらぬとなり。 ...
新古今増抄 巻第一 大江千里 不明不暗朧朧月 蔵書
どもいろをも香をともにしる人はとひこねば、ひとい りながめてちりぬと也。さてもおしきことかな と、心をあましたる花也。しるばかり成とは、 古君ならで誰にかみせん梅花色をもかをも ...
新古今増抄 巻第一 八条院高倉 散花不訪人 蔵書
こゝにうぐひすのなく。むかしはかやうに少かへても よめり。鴬と春風とをかへたるばかり也。定家卿 詠哥大概さだめられしよりは、こゝろある べき事にや。春風が木の花はみな吹ち...
新古今増抄 巻第一 有家 梅香留袖 蔵書
増抄云。行尊僧正の大峯にて、諸ともにあはれ とおもへ山桜花よりほかにしる人もなしとあそ ばしたるに似たり。梅よわれをわするなわれ は後のよまでも終日のながめをわするまじ ...
新古今増抄 巻第一 式子内親王 軒端梅 蔵書
とを論ぜずとあれば、うとき人も花を折に くるほどに、まして親きはとめこかしと也。 又説には、詩にもかゝれば、うときあたりしたし きをえらびぬるは、折ふしにこそよる事 な...
新古今増抄 巻第一 西行 遥見人家花便入 蔵書
そでにみだるゝよと、納得したる哥なり。 詩も折梅花挿頭とある故に、越てといふ にて、頭にさす事をあひしらひ、二月の雪 と花を詩にもいひたれば、匂ふ雪といひ て花の事にし...