新古今増抄 巻第一 中務 梅不咲如月 蔵書
よいながらあけたると覚ゆる作ほどに、夜こそよひ のまゝにて明たれ。されとも月はのこりてあらん とおもへば、月も入にけりといふ作なり。その ごとく、春の夜の夢のうきはしこそ...
新古今増抄 巻第一 定家 夢浮橋 蔵書
とみたてたり。雲と云ものは、夜はやまにかゝりて有 あけぼのに山より外へわかれたるものなれば也。 かすみたつゆくすゑと云かけて、遠望の躰 をもたせたり。ほの...
新古今増抄 巻第一 家隆 末松山春曙 六百番歌合 蔵書
山本より東の方よど河へながれ入川なり。此川は すなにてうへには水みえず。そこを水行也。 哥にもしたにかよひてなどよめり。見わた せばと云五文字、とをく望む躰をよむ也。 ...
新古今増抄 巻第一 後鳥羽院 水無瀬水郷春望 元久詩歌合 蔵書
射水郡ニ有リ奈呉海。哥の心は、海の遠望なり。 西に入日をみれば海のうちに入やう也。あらふ とは入ざまに日影明にみゆる故に、波があらひて かゝるかとの作也。かすみの間よりみ...
新古今集聞書幽斎補筆 秋歌上 通具 野原秋來 蔵書
松にふく風なれば花もみぢふくごとくにその 色は見へねども秋のくるとは聲にしられた るとな...
新古今増抄 巻第一 実定 那古海晩霞 蔵書
むろの八嶋のけぶりのたつ所なるべしと。すいし たる也。わたりとはあたりなり。渡にあらず。室 八嶋は、下野にあるひろき野也。そこに 水ありて、八所にしまあり。その水より煙が...
新古今増抄 巻第一 清輔 室の八島 蔵書
雪のうへにたなびきしが、春に成たれば山と かすみて雪はかくれ、かすみたるうへに、一村けぶり がたなびきたる心といえへり。春のいろの霞と いふ、いろといふ、いろと云字を味へ...
新古今増抄 巻第一 慈円 富士春景 蔵書
一 岩そゝぐたるひの上のさわらびの萌出る春になりにけるかな 増抄云。岩そゝぐたるひとは、岩よりつたひて そゝぎ落る水のこほれるをたるひと云也。 扨も時節といふものがあるな...
新古今増抄 巻第一 志貴皇子 早蕨 蔵書
こほれるなみだ今やとくらん。此哥などをや思 ひてよめる成べし。これはいまだ鴬は出ぬを おもひやりて、さだめてつらゝもとけぬべき程 に、ふるすのうちに有ながら、春をしるらん...
新古今増抄 巻第一 惟明親王 涙解知春 蔵書
事也。餘寒の時分なれば、あわ雪ふりて、うぐひ すのはねのうへに、うす/\たまれる由也。 なきてうつろふはね白妙の詞など、万葉 すの中にはやさしき詞なり。さるにより て、...