手術当日の朝小太郎を病院へ連れて行った。
担当の獣医師が診察室に入ってきた。
なんだか表情がやけに明るい。
「昨夜、大学時代の感染症を専門にしている先生に血液の顕微鏡画像みてもらったのですが
リケッチアに感染してるんじゃないか?って言ってたのですよ。改めてよく見てみたら
赤血球に小さな黒い点が付いていてリケッチアっぽいんですよね~」
「もしリケッチアだったら脾臓を取ってしまうのは禁忌なので、投与する抗生物質を変えてみて少し様子を見ましょう・・・」
・・・という話だった。
リケッチアと聞いてピンときた。
タイにいたときにマダニに寄生されることが何度もあった。その度にダニを殺す薬を塗布していた。
そのときに感染していたのだろう。
そして日本行きの飛行機で興奮して発症したってことだろうな。
獣医師の話ではリケッチアに感染して考えられる病気はエールリヒア・・・とのことだった。
その他赤血球に感染ということでライム病、バベシア症が考えられるとのことだった。
エールリヒア、ライム病はテトラサイクリン系という一般的な抗生物質で治療可能だが
バベシアに対するものは日本では手に入らないとのことだ。
バベシアじゃないことを祈りましょうみたいな感じで抗生物質の点滴を開始した。
毎日通院し点滴を開始して1週間ほど経った頃だろうか、それまでシリンジで無理やり餌を食べさせていたのだが
自分からシリンジから出てくる流動食を食べるようになっていた。
試しにドライフードを与えたらバリバリ噛んで食べている。
血液検査の結果は貧血、肝機能共に正常値近くに回復していた。
その結果を見た先生はかなりテンションが上がっていたな。
血液検体をアメリカの検査機関に送っていたとのことで、その結果も分かり
エールリヒアと病名も確定した。
アメリカで検査したのは私が勝手に送ったので料金は結構ですとのことだ。
日本ではかなり珍しい病気なので今までの治療の過程を論文にまとめて学会で発表させて欲しいとの申し出があった。
それから更に2週間ほど服薬治療をし完全に治癒した。
半年後再度血液検査をし血液に異常はないとのことだった。
「学会で論文発表したら反響が凄かったですよ~」と先生はご機嫌だった。
町医者だけど大学病院レベルの治療を目指すというこの病院だったから病名も分かり治癒できたのだろう。
本当に良かったよ。
つづく