人気が無い政策

　総選挙だ台風だ、風は吹く雨は降る、大忙しの週末を抜けて、いつもの通勤路線の運転見合わせから新しい一週間が始まった。
　
　目がパッチリした台風だった。各地方自治体では相当に緊張して対策を講じたことだろうと思う。かなり大きな被害が出たところもあるようだが、地道でしっかりした準備のおかげで当初予想された大災害と呼ばれるような結果にはならなかった。今もまだ寝ないで対応してくれている方々もいらっしゃると思う。心から感謝したい。
　
　選挙の方は、やっぱり変わらないな、と、ちょっと気が抜ける結果だったように思う。台風を心配して期日前投票に出かけた人が多かったようだが、全体の投票率自体はさほど好転しなかった。7割8割の国民は既成の政治家の皆さんにみんなお任せする、好きにしてくれ、と与党の方々に全幅の信頼を寄せたのだろう。選挙に行かないことで信任を示した。
　
　天気予報では何十年に１回の気象現象が発生していることを告げる言葉に最近たびたび出くわす。今回の台風も海水の温度が異常に高い結果の大型化だ。温暖化が台風の形になって日本を襲ってきていると言っても過言ではない。そんな中で行われた選挙であるにもかかわらず、この問題を大きく取り上げて対策を取ろうと呼び掛けた政党はひとつも無かった。国の借金が取り返しのつかないところまで行っている現状を認識し、対策を講じよう、と面と向かって言わないのと似たようなものだ。
　
　地道な改善策を打ち出しても、人気は出ない。自分自身を振り返っても同じだ。少し先の未来のために時間を割くことより、今の楽しみのために時間を割くことを選んでしまう。だが時間は確実に流れており、少し先の未来、だったはずのその時は、すぐにやって来る。とは言え、例えば温暖化などについて言えば、結果が出るのは自分の時間の話しではなく自分の子供たちの時間に関する話しかもしれない。自分たちの時間はギリギリ逃げ切れるかもしれない、そんな状況で、なんで未来のために今自分たちが我慢したり耐えたりしなければならないのか、と思う人が多いのだろうか。または、人間の力を心底信じており、今何か策を講じなくても、とてつもないイノベーションが起きて一気に問題を解決してくれる、と、そんな奇跡的なことを信じている人が多いのだろうか。
　
　結局のところ、地道に着実に努力する以外ない。すぐに結果が出ないことであきらめてしまったり投げ出してしまったりしてはいけない。それが未来の自分に、未来の世界に役に立つ、と信じたことを繰り返し繰り返し愚直に続けて行くしかない。そんなことを言う人が当選することはないのだろうな、地道な政策は人気が無いのだ。総選挙と台風が過ぎ去った今、そんなことを考えながら歩いて会社を目指したのだった。（三）
　
　
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