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「もののけ島のナキ」

 妻がWOWOWで録画しておいた『friends もののけ島のナキ』を、日曜の夜に見た。原案は浜田廣介の『泣いた赤鬼』だが、そのストーリーは次のよう。

『霧に隠された海の先には、“もののけ”が住むと恐れられ、近づくことさえ禁じられた不気味な島があった。ある日、そこに迷い込んだ人間の赤ん坊コタケ(声:新堂結菜)は、不思議なもののけたちに出会う。突然現れたコタケを目にして、大パニックを起こすもののけたち。実はもののけたちも人間に怯えて暮らしていたのだ。そこで暴れん坊の赤鬼ナキ(声:香取慎吾)と青鬼グンジョー(声:山寺宏一)がコタケの面倒を見ることになった。初めはケンカばかりのナキとコタケ。だが、一緒に暮らしているうちに、ナキの心の中には優しい気持ちが芽生え、2人はかけがえのない“ともだち”になっていく。だが、どんなに仲良くなっても、もののけと人間はずっと一緒にいることはできない。やがて悲しい別れの日が訪れるが……』

 香取慎吾がナキの声をやっているから、当然のことながら、妻は映画館でこの映画を見ていた。それだから、この録画が、大事な箇所を幾つか端折っていて、もののけたちの悲しみが伝わってこない、と大いに憤っていたが、WOWOWでも、放映時間に合わせて、映画を編集したりするのかな、とちょっとガッカリした。と同時に、この映画の原案とされている『泣いた赤鬼』ってどういう話だったっけ?と首を傾げてしまった。もちろんこの映画とはまるで設定が違うだろうが、もう一度読み返したくなった。
 検索してみたら、すぐに見つかった。驚くほど短い話だが、驚くほど内容の詰まった物語だった。引用してみる。

『山の中に、一人の赤鬼が住んでいました。赤鬼は、人間たちとも仲良くしたいと考えて、自分の家の前に、「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます。」
と書いた、立て札を立てました。
 けれども、人間は疑って、誰一人遊びにきませんでした。赤鬼は悲しみ、信用してもらえないことをくやしがり、おしまいには腹を立てて、立て札を引き抜いてしまいました。そこへ、友達の青鬼が訪ねて来ました。青鬼は、わけを聞いて、赤鬼のために次のようなことを考えてやりました。
 青鬼が人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへ赤鬼が出てきて、青鬼をこらしめる。そうすれば、人間たちにも、赤鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう、と言うのでした。しかし、それでは青鬼にすまない、としぶる赤鬼を、青鬼は、無理やり引っ張って、村へ出かけて行きました。
 計画は成功して、村の人たちは、安心して赤鬼のところへ遊びにくるようになりました。毎日、毎日、村から山へ、三人、五人と連れ立って、出かけて来ました。こうして、赤鬼には人間の友達ができました。赤鬼は、とても喜びました。しかし、日がたつにつれて、気になってくることがありました。それは、あの日から訪ねて来なくなった、青鬼のことでした。
 ある日、赤鬼は、青鬼の家を訪ねてみました。青鬼の家は、戸が、かたく、しまっていました。ふと、気がつくと、戸のわきには、貼り紙がしてありました。そして、それに、何か、字が書かれていました。
 「赤鬼くん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、ぼくが、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで、ぼくは、旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。どこまでも君の友達、青鬼。」
 赤鬼は、だまって、それを読みました。二度も三度も読みました。戸に手をかけて顔を押し付け、しくしくと、なみだを流して泣きました』

 ええ話や・・。





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