1分で読める小さなお寺の法話集

子育て、人材育成に関する法話を実話と歴史から紐解いて書いております。

【住職の法話。考え方を少し変えるだけで、苦しい人生が、楽しい人生に】 今日は、臨時法話を。この頃、この3年を改めて振り返ってみたいと、読者からコロナ関連の法話を要望されて、以前投稿の法話を今日。

2023-08-07 10:14:53 | 法話

 この法話は、昨年の12月25日に投稿させて頂いたものです。コロナも3年を過ぎてくると、改めて振り返ってみたいという読者が、この法話の再投稿を希望されたので 


檀家の小学生男子12歳が「住職、父さんが『夏目漱石の、吾輩は猫である、を読んでみな』と言うので読んでみた。その中に『人間ほど、ふてい奴はいねえ。人(猫)の獲った鼠を交番に。五銭を懐に入れやがる』という面白い言葉があったんで、父さんに『これ、何の事よ』と尋ねると『お寺の住職(拙僧)に聞いて来てみな。お前さんが興味を抱く様な、面白い話が聞けるかもぞ』と言うんで来た。ねえ、教えてよ」と。


対し、拙僧、この小学生に「1894年に香港で発生したペストが、1899年に日本に上陸。その時に対応したが、ペストの原因菌を突き止めた北里柴三郎という医師だよ。ペストは鼠、犬などを宿主に、蚤(ノミ)が媒介して人に伝染する病気でね。よって『鼠の駆除』を北里医師が提案したところ、商売人(商売繁盛所縁の鼠)さんから『鼠は、神の使いじゃ』と猛反発が。それがペストを広めた原因の1つになったようでね。そこで北里医師は考えた。『鼠1匹5銭で貰い受ける』と世間に公表しようと。すると、次の日には数千匹の鼠が届けられたんだと。『人間は、神の使いよりも、目の前の銭に飛びつく』と北里医師は、人間の習性に目を付けたんだね。これでペストが減少の方向に」と。


対し、小学生が「なるほど、頭いいね、北里先生。夏目漱石さんの『5銭』は、その事を書いてたのか」「まあ、そういう事だね。人間というは大なり小なり、自分にとって都合の悪いものを押し付けられたら、必死になって抵抗するもの。が、その都合の悪いものが、良いものに変わった途端に、コロっと態度を変えよる。人間って、面白いだろ。全ての人が納得出来る政策なんて、そんなもの絶対にないよ。全てが、シーソーだよ。片方が上がれば、片方が下がる。そのバランスをとるのが、政治家さんの仕事かな」「国会も、学校の学級会も、そう変わんないんだね、住職」と、この小学生が。


続けて、この小学生が「ペスト(黒死病)の話、他には何かありますか」と。「ペストは6世紀に発生し、最も酷かったが、当時の世界人口4億5千万人のうち、1億人が感染死したといわれる14世紀だよね。ユーラシア大陸の移動(人の流れ)の活発化もあって、中国に攻め込んだモンゴル軍が、ペスト菌を媒介する蚤(ノミ)と鼠を、欧州に齎したが原因の1つと、言われているよね。黒海まで攻め込んだモンゴル軍だが、その時、兵士が次々に原因不明の病死を。何かの感染病と推察したモンゴル軍が、感染死した兵士を次々に大きなパチンコで、敵国に投げ入れたと。この行為が感染拡大になっていったとの事。まあ、何せ、14世紀の事だからね、どこまでが真実かはわからん。その残っている文献(資料)も、誰が書いたか物か、誰(当時の権力者など)に書かされた物か、それによっても、大きく食い違うだろうからね。これが本当の話だとしたら、人間ちゅう奴は、ほんと、救いようのない生き物、ちゅう事になるわな。思えば、人間の歴史は、殺し合いの歴史。今現在も途切れなく、それが続いとる。人間を1番殺しているは『蚊』と。人間を2番目に殺しているは『人間』と。石川五右衛門さんが辞世で『浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ』と言ったこの言葉は、恐らく永遠の真理だね」と。


続けて、拙僧「他にも、鼠を駆除する黒猫を欧州の人達は『魔女の使いであるこいつら(黒猫)のせいだ』と決め付け、大量殺戮を繰り返したもまた、感染拡大原因の1つになったのかな。この時、同時に魔女狩りも行われたと。フランスのジャンヌダルクさんも、魔女狩りにあった1人。人間というは、原因不明、解決不能の恐怖には、何かの(誰かの)せいにして、心だけでも安らぎを求めようとする。所謂『スケープゴート、身代わり、生贄(いけにえ)』と言われるものだよね。知識がないというは、ほんと、悲しいもんだよね。これは余談だけど、この一連の事により、欧州の人達が黒猫を不吉と感じるは、何となく理解は出来るが、全く因果関係のない日本人が『黒猫が前を通るは不吉』と黒猫を嫌うは、何ともおかしい話だよね。何でもかんでも、外国の真似をするからね、日本人は。まあ、今の時代にそんな事(黒猫は不吉)を言う人は、少なかろうが」「13日の金曜日を嫌がるも、同じ事だよね。僕の親も何故か、その日を避けてるもんね。何なんだ、と思っちゃうよ。日本には関係のない事でしょ。あれは欧州での出来事でしょ。全くもって、変」と、この小学生が。


続けて、この小学生12歳が「そうか、人間の暴挙は、知識不足によるものか。それでか、子供の世界が残酷なのは」と。対し、拙僧「でも、悲観的な事ばかりではないよ。ペストのパンデミックは500回ほどあったというが、17世紀のパンデミックの時には、学校が自宅勉強になり、そのお陰で研究が進んだニュートンさんが『万有引力の法則』を発見出来たと。りんごが落ちるを見ただけでは、その法則は流石に、発見出来んわな」「その頃から、自宅学習って、あってたんだ。コロナと同じじゃん」「そうだよ。コロナも対策法は同じだよ。コロナも人間の足は止めたが、時間までは止めてない。仕事が出来る人間は、仕事が出来る工夫を探すもの。仕事が出来ない人間は、仕事が出来ない事の言い訳を探すもの。同じ時間を費やして探すなら、言い訳など探さず、工夫を探しな、という事だね。この言葉を拙僧、この3年間で、何人もの檀家の学生さん達に『君ら、学校、塾が閉鎖して、勉強が出来んと愚痴を言ってるらしいが、その横で、そんな事(学校、塾の閉鎖)など何も気にせずに、工夫を凝らして黙々と、勉強している学生がいるんじゃないのか。そんな子らに、溝を開けられてるんじゃないのか。時期が来たら、受験日は来るで』と言ってきたな」と。


それにしても、この檀家の小学生、凄いでしょ。拙僧とのこの会話ですが、ほんとに理解してるのか、と疑いたくなるでしょ。この12歳小学生男子ですが、いつも父親と、真剣に政治や社会問題の話をしているとの事です。因みに、将来の夢は、医者になる事と。こんな利発な子供が、わが寺には、何人かおるんですよね。


さて、今日の本題の続きですが、この子に拙僧「感染病を詳しく知りたいなら、漫画で出版されている『カミュのペスト』という本が、実にわかりやすいと、色んな人からそう言われたよ。ほんとに面白いのかもしれないね。読んでみたらどうだい。拙僧も1度、試しに読んでみようかな、と思っとる」と。


次回の投稿法話は、8月10日になります。