1分で読める小さなお寺の法話集

子育て、人材育成に関する法話を実話と歴史から紐解いて書いております。

【住職の法話。考え方を少し変えるだけで、苦しい人生が、楽しい人生に】 家族7人、人生は各々別々。その7人に共通しているが、先祖が同じという事。この先祖に1人1人が心を向ける事で、家族が1つに。

2023-08-14 21:42:34 | 法話

【8月15日投稿分】


一昨日(8月13日)、昼過ぎにわが寺の檀家(重鎮)男性が86歳を一期として、この世を去って逝かれました。男性は、裸一貫で会社を起こし、拙僧父(先代)の時代から、拙僧の時代まで50数年間、1度も欠かさず毎月1日、朝5時にわが寺へ参拝を。ご祈願も事業繁栄を願うではなく、従業員の身体健全、家庭円満のみを。男性曰く「従業員が心身共に健康で、各々の家庭が円満であるならば、わが家庭を守る為、自ずと仕事も真剣に取り組む様になる。わざわざ会社の繁栄を願う必要などないよね」と。そういう社長の心を授業員さん達は皆、知っていたので、社員も会社に愛着を持っているようで。これと同義の会社数社(熊本など)に拙僧、毎月1日には、安全祈願に何十年も足を。


13日の夕刻、自宅の方へ枕経に。その時、最期の様子を伺うと、全身癌でありながら、痛みは殆どなく、眠るように息を引き取られたとのこと。これも、この男性の人徳かな。ご家族が「実は住職、恐らく会葬者は300人を超えてくるものと。が、関係者の大半は盆休みで、各々用事で留守に。その人達を抜きに葬儀などしようもんなら、必ず『なんでよ、なんでよ』と後から、恐らく怒られる事に。ほんと、有難い事ですよね。昨今、お世話になった人のお通夜、告別式にも『もうこの人(故人)から、何もしてもらえないから』と会葬に顔を出さない人が増えてきたという時代に。よって、お通夜を盆明けの16日、告別式を17日と考えたのですが、それが、その日(17日)が友引でして。友引の日に葬儀は、やはり駄目ですよね。どう思われますか、住職」と。


対し、拙僧「友引の日に葬儀をするは駄目、など、仏教の中ではそんな事、何も言ってないんだけどな。仮に、友引の日に1000人の葬儀をしたら、1000人があの世に連れて逝かれるっていうの、という話。そんな事はないでしょ。なれど、多くの会葬者の中には『友引の日に、葬儀をするのか』と嫌がる人も一定数はいるんじゃないのかな。『お世話になったから、故人を送らせて頂こう』と来られる人に、そんな嫌な思いをさせるは、遺族側としては申し訳ない、という事から、友引の日を避けるというは、あり、かな。49日法要も、また、同義。3ヶ月にまたがらない方がいいと、『苦が身につく』という昔からの言い伝えが。これもただの語呂合わせ、にて。まあ、家族で決めたら」と。家族はその場で話し合い、友引の次の日の18日に、告別式をする事に決定。13日に亡くなって18日に葬儀を。夏のこの暑い時期に、遺体の管理が大変ですね。東京近郊では火葬場不足で、随分(何日も)と待たされているとの事。死んで逝くのも、大変ですよね。


このご家族が選択した葬儀のやり方(会葬者側の事を考えた)に似た、某家族の葬儀の話を以前、SNS に投稿したところ、そのご家族が下した選択(葬儀のやり方)に対し、文句を付けてきた読者が、何人かいましたね。人(他人)の家の事情の事なのに、自分の主観を『これが正解』であるかの様に、ああじゃ、こうじゃ、と押し付けてきた人達が。こんな人は、自分の考えと違う事には、何にでも噛み付いてくるんでしょうね。


この友引の話の後、このご遺族が「ところで住職。私達の耳にも『悪霊祓い、祟り封じ』などで、拝み屋さんに高額供養料(祈願料)を収めた、なる話が入って来ていますが、悪霊が襲うとか、先祖が祟るとか、そんな事って、本当にあるんですか」と拙僧に。「例えば、だよ。本当にそんな事がある、と仮定(地獄、閻魔、悪霊、祟り)しての話だよ。悪霊になるという事は、人間の時代に、悪霊になる様な悪さをしたから、悪霊になった、と考えるが妥当でしょ。悪さをした人は当然、地獄に堕ちて閻魔に接見を。人間界で何かしらの悪さをして地獄に来たのに、また、人間界に赴いて、悪さをするの。それを閻魔が『おう、おう、やれ、やれ』と黙って見てるっていうの。そうであるとしたなら、閻魔の存在価値なんて、何もないやん」「ですよね。• • • という事は、悪霊なんていない、という事ですよね」「拙僧は、いないと思うけどね。悪霊になっているというその人(故人)に、24時間四六時中付き纏って、その人の人生(生き様)を、ずっと見てきた訳でもないのに、如何なる根拠(確信)を持って、その人(故人)を『悪霊、化け物』呼ばわりするのか、いやはや、訳がわからんよね。失礼にも程があると思うよ。先祖を愚弄するのも、大概にせにゃあかん」「まったく、そうですよね」と。


続けて、拙僧「まあ、そんな話はここまでにして、とにかく18日は、しっかりとお父さんを送らにゃあかん。お父さんの『人間卒業式』だからね。葬儀の最後に遺族が、お礼の言葉を述べるは、本来なれば故人は、生きている内に、お礼を言っておかなければいけない人達が沢山いたのに、殆どの故人はそれを言えずに、この世を立つ事になる。『私(故人)の代わりに、お世話になった人達に、すまんがお前の口から、故人に成り代わりまして、とお礼を言っとってくれんか』が、葬儀最後の遺族答礼。そう考えると、お通夜、告別式は『有難うございました』の交換会にて。大事な事だと、思いますけどね。こんなよか風習が昨今、徐々に、徐々に、この国(日本)から。これでは、人間関係が希薄になっていくも、仕方のない事なのかな、と思うよ」と、このご遺族に。


お通夜、葬儀の打ち合わせ(枕経時)の最後に、4人いる子供さんの45歳の次女さんが泣きながら「3日程前、お父さんに『英照(拙僧)さんは、お盆の三ヶ日は忙しいから、そこは避けて向こうに逝かないと、迷惑を掛ける事になるからね』『わかった』と会話していたのに、よりにもよって、お盆の初日に逝くなんて。『ご臨終です』と医師に告げられたすぐその後、お父さんに『何やってんの』と、その事の文句を」と。「8月13日なんて、大半の人は『お盆』と知ってる有名な日でしょ。俺の事を忘れるなよ、じゃないの」「実は不思議な事に、お父さんには、どれもこれも『1と3』の数字が付き纏うんだよね。生年月日も、昭和13年10月3日でしょ。両親が結婚して最初に借りた風呂無しアパートも、103号室でしょ。他にも様々『1、3』の数字が常に絡んで。まさか、他界日も『13』になるんじゃないか、と思って『お盆中は、駄目よ』と言ってたんですけどね。見事に13日に。偶然とはいえ、何とも面白い縁ですね」と。


帰り際に拙僧「あっ、もう1つあった。戒名ですが、お父さんの人生を漢字1文字で表すとしたなら、何という字を当てはめますか。戒名を授ける時、遺族の方々に毎回、聞いているんですが」と。すると長男さんが「父は常に人に恵まれた人生でした。会社を起こす時も、ここまで会社を維持出来てきたも、多くの人に支えられて。『豊』という漢字が相応しいかな」と。すると、今度は次女が「父は常に人から好かれ、父の周りには常に人集りが。寛容の『寛』を入れてもらえれば」と。「了解です。その2つの漢字を戒名に使おうかね」と。枕経での時間はずっと、泣き笑いの楽しい時間でしたね。戒名は『豊院寛一道居士位』としました。100年後に、この戒名を読み取れる住職が座っていたなら、100年後のこの家族の子孫に、戒名の意味を説明してくれるでしょう。因みに、わが寺では、戒名料はいただいておりません。


【追伸】

この投稿写真(添付)は、わが家の仏壇です。仏壇って、いいですよね。お客さんをお通しするその家の1番大事な部屋に仏壇が、整然と安置されている姿は、見ている(存在)だけで、心が癒され、落ち着きますよね。何よりも勝る風水かもしれませんね。仏壇は、感謝の心の表れですもんな。その部屋に通されたお客さんも「親を、先祖を、こんなに大事にする家族なら、間違いなく信用、信頼出来る、決して裏切る事はないだろう」の基準にも。実際、知人の社長さん達は、それを基準に商談相手を図っておられる人も。


次回の投稿法話は、8月20日になります。