醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  985号  白井一道

2019-02-01 12:27:36 | 随筆・小説


  ソクラテスの産婆術


侘助 最近、ノミちゃん足の具合はどうだい。
呑助 足ですか。どうにか普通に歩けるようになりましたよ。
侘助 発作が出たのは何回目なの。
呑助 三回目ですかね。初めての時は驚きましたよ。右足の親指の付け根が赤く腫れてきましたからね。痛くて痛くて歩けなかったですからね。ワビちゃんは左足の親指の付け根だったんでしょ。
侘助 そうなんだ。私の場合は痛くて痛くて夜も寝られなかったな。痛みに休みがないという感じだったかな。
呑助 私の場合はそれほどの痛みの経験はありませんよ。それなりにお酒の方は自制していましたからね。
侘助 本当かな。お酒は毎日どのくらい飲んでいるの。
呑助 毎晩、3合ぐらい飲んじゃいますね。先日、飲み会があってね、少し、飲んじゃいましたね。それで翌日、足に違和感を覚えたんですよ。こりゃ、痛風がきたなと、感じたんですよ。足を引きづって医者に行き、薬を飲むと痛みは和らぎましたがね。二、三日するとまた腫れて赤くなるんですよ。医者に行くと赤く腫れたところに注射するんですよ。飛び上がる程痛かった。紅く腫れたところにですよ。医者はかまいなく無慈悲に注射針を刺すんですよ。
侘助 はっはっはっ、そりゃ痛かったね。
呑助 笑っている場合じゃないですよ。注射してもらうと確かに痛みはなくなるんですよ。そんな経験はしてないですか。
侘助 私の場合は、四十代の後半だったかな、右肩が痛くなったことがあったよ。ソフトボールを楽しんだことがあったんだ。ライトを守った時にフライをキャッチし、ファーストランナーを刺すべく、ファーストに送球した時、右肩に痛みが走ったんだ。その時だよ。医者に行ったら、右肩の痛い所にズブッと注射針を刺された経験があるな。凄い痛みだったな。
呑助 いろいろ痛みの経験があるんですね。痛みの経験も時が過ぎると忘れるから不思議なもんですね。
侘助 痛風の経験をすると分かってくるね。こりゃ、痛風だなと、ね。
呑助 私の仲間には、風の会という仲間を作っている人がいますよ。それらの人々の飲み会ではビールを飲まないそうですよ。
侘助 焼酎のお湯割りかな。
呑助 そうですよ。焼酎のお湯割りと湯豆腐だそうですよ。絶対焼き鳥のレバーは食べないそうですよ。30前後の若いものたちにも結構風の会の仲間がいるみたいですよ。
侘助 痛風持ちの若者も結構いるみたいだね。
呑助 そうですよ。元気に体を使って働いている人に痛風持ちの方がいるようですよ。
侘助 痛風は老人病じゃないとしたら食生活に問題があるのかな。
呑助 私らが子供の頃はあまり痛風という話を聞いたことが無かったように思いますね。
侘助 食生活の欧米化が痛風という病を日本人に広めたのかもしれないな。
呑助 プリン体を多く含む食べ物を食べると痛風になると聞きますね。
侘助 肉や魚に割合多くプリン体は含まれているから食生活の欧米化が原因だと言われてきたのかもしれないな。
呑助 炭水化物にもプリン体はあるらしいですね。
侘助 すべての食品にはすべてプリン体を含んでいるという話のようだよ。
呑助 痛風がくるなと感じると食が進まなくなりますね。病が食を抑えるんですかね。食べたくなくなりますよ。
侘助 病は自分の力で治すものだ考えているんだ。医者の力を借り、薬の力を利用して自分の力で自分の体を治す。これが基本だよね。
呑助 そうなんでしようね。自分の体なんですからね。
侘助 昔、読んだことがあるんだ。古代ギリシアの哲学者ソクラテスは産婆術ということを言った。医療や教育というものは産婆術だということなんだ。医者や教師は産婆だソクラテスは言った。