醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1297号   白井一道

2020-01-10 11:26:49 | 随筆・小説



 徒然草122段 人の才能は



原文
 人の才能は、文(ふみ)明らかにして、聖の教を知れるを第一とす。次には、手書く事、むねとする事はなくとも、これを習ふべし。学問に便りあらんためなり。次に、医術を習ふべし。身を養ひ、人を助け、忠孝の務も、医にあらずはあるべからず。次に、弓射、馬に乗る事、六芸に出だせり。必ずこれをうかゞふべし。文・武・医の道、まことに、欠けてはあるべからず。これを学ばんをば、いたづらなる人といふべからず。次に、食は、人の天なり。よく味はひを調へ知れる人、大きなる徳とすべし。次に細工、万に要多し。

現代語訳
 人の才能は、中国古典の典籍に明るく、四書・五経に精通していることが第一だ。次には、書き写すことまですることはなくとも、古典を学ぶべきだ。学問に精通するためだ。次に医術を習うべきだ。身を養い、人を助け、忠孝の務めも医術に優るものは無い。次に弓を射り、馬に乗る事、六芸に優れることだ。必ずこれらの事に取り掛かるべきだ。文・武・医の道、まことに欠けてはならないものだ。これらを学ぼうとする人は無駄なことをしている人だと言ってはならない。次に食は人の命を左右するものだ。良く食べ物について知っている人は実に立派なことだ。次に料理方法については大事なところが多くある。

原文
 この外の事ども、多能は君子の恥づる処なり。詩歌に巧みに、糸竹に妙なるは幽玄の道、君臣これを重くすといへども、今の世には、これをもちて世を治むる事、漸くおろかなるに似たり。金はすぐれたれども、鉄の益多きに及かざるが如し。

現代語訳
 この他のいろいろなことができることを神様は恥ずかしいことだと言っている。詩歌を上手に詠み、管弦の妙は幽玄の道だ。君臣はこれを重視してはいるが、これによって世を治めることはどう考えてもできることではない。金には優れた輝きがあるが、鉄のようにいろいろなことに役立つことがないようにだ。

 「食は人の天なり」  白井一道
 「食は人の天なり」とは、兼好法師の言葉である。この言葉は「医食同源」と同じことを表現していると私は理解した。

「医食同源という言葉自体は中国の薬食同源思想から着想を得て、近年、日本で造語された。この言葉「医食同源」は発想の元になった中国へ逆輸入されている。 初出は1972年、NHKの料理番組『きょうの料理』の特集「40歳からの食事」において、臨床医・新居裕久が発表したもの(NHK「きょうの料理」同年9月号)。これは健康長寿と食事についてのもので、中国に古くからある薬食同源思想を紹介するとき、薬では化学薬品と誤解されるので、薬を医に代え医食同源を造語し、拡大解釈したものであると新居裕久は述懐している。 また、同年の1972年12月に『医食同源 中国三千年の健康秘法』(藤井建著)が出版されているが、これは前出の「医食同源」の語彙を転用したものである。その他の使用例では、朝日新聞の記事見出データベースの初出は1991年3月13日であった。また『広辞苑』では第三版には無く、1991年の第四版から収載されていた。
以上のことから考えると、この「医食同源」という言葉は1990年前後にはすでに一般で使われており、その思想も健康ブームなどにより、広く受け入れられてきたものと考えられる。」
 『ウィキペディア(Wikipedia)』より