大分県宇佐市と宮崎県高千穂町を舞台として、行方不明になった鳴上漣を探索救出するというストーリーに、この小説のタイトルとなっている「卑弥呼の葬祭」かつ「天照暗殺」という推理・謎解きプロセスが絡んでいく。しかし、後者の推理・謎解きがメインストーリーであり、鳴上漣の行方不明はサブ・ストーリーというのが読後印象である。いわば、古代史謎解きシリーズという感の小説である。
主な登場人物は、最終段階までは要所要所でチラリと登場するだけで、行方不明となっている鳴上漣。漣の母親で、叔母にあたる鳴上睦子から緊急連絡を受けて、漣の探索に九州の現地を急遽経巡ることになる萬願寺響子。東京ではコンタクトが取れず、宮崎県の高千穂で結果的に出会うことになる桑原崇である。そして、大分県警と宮崎県警の刑事たち及び被害者と犯人が加わる。
登場人物についてまずそのプロフィールを補足しておこう。
萬願寺響子 大阪生まれ、岡山を経て京都で育つ。市立大学の理学部卒。
母・卯子の「四柱推命」の結果を信じ、そのスケジュールで動いている。
現在は、東京の世田谷区等々力渓谷辺のマンションに住み、千代田区・市ヶ谷にある
医薬品関連出版社「ファーマ・メディカ」に勤める。編集部に在籍。入社3年目。
響子自身も八面体のサイコロを所持し、「四柱推命」を多少かじっている。
鳴上 漣 大学生で23歳。出入口以外は書物で埋め尽くされた部屋に住む。
自室で「ヨリトモ」と名づけたオオヤドカリを小学生の時からずっと飼育している。
古代史を含め日本歴史に詳しい。「将門塚保存会」会員にもなっている。
大学の春休みを利用し九州に一人旅。目的は卑弥呼、邪馬台国を調べることという。
桑原 崇 東京・目黒区にある漢方薬局「萬治漢方」に勤める薬剤師。独身。
古代史を含め日本の歴史に詳しい。その分野で漣とは親しい関係にある。
事件解決に協力し、警視庁や県警などに親しい刑事たちが幾人も居る。
このストーリーは、宮崎県の高千穂で始まった高千穂夜神楽の最中に起こった殺人事件の場面から幕があいていく。26番「戸取り」の手力雄神の舞が終わり、舞手の杉橋が退出する。その舞手はしばらくの休憩後すぐさま面を取り替えて、27番「舞開き」に登場するはずだった。だが舞手が出てくるのが遅いので休憩部屋に声をかけてのぞくと、舞手が殺されていたのである。しかもその首が切り取られて無くなっていたのだ。
一方、大分県にある宇佐神宮では、境内の御霊水をたたえる3つの井戸から、女性の生首、手首から切断された左右の手が発見された。第一発見者は神宮の近くに住み、御霊水を汲みにやってきた氏子の森山秋子だった。また、凶首塚古墳傍の雑木林の木の枝で首を吊っている男の死体が発見される。さらには、第一発見者の森山秋子もまた殺害されてしまう。そんな事件が発生していた。
上記した通り、響子は叔母から緊急連絡を受けて、漣が邪馬台国・卑弥呼のことを調べに九州に一人旅で出かけ、行方不明になっていることを知る。まず、響子は漣の部屋で彼の旅行目的と行き先の情報がわかるか調べてみる。パソコンの保存ファイルから、大雑把な旅行の予定に関連するページを見つけたのである。ランダムに記されていた名称と地名がいくつかあり、それぞれに細かいメモ書きが撃ち込まれていた。そこには、宇佐神宮・高千穂神社・天岩戸神社などの名称と、福岡、糸島、安心院(あじむ)等の地名。具体的旅程については立った一行。「3月17日(土)羽田出発。大分空港。803キロ。1時間35分」そして、「宇佐神宮、百体神社、化粧井戸、凶首塚古墳」という名称である。
響子は桑原のことを思い出し、連絡を取ってみるが、桑原が休みを取っているということでコンタクトができずに終わる。邪馬台国・卑弥呼については殆ど何も知識を持ち合わせていない響子は、漣がパソコンに残していた旅程に関する情報と、急遽入手した邪馬台国関連資料を取りそろえる。そして、大分の宇佐神宮を皮切りに、現地で漣らしき学生に付いての聞き込みをしながら漣の旅程を追跡し、漣の行方を探索する旅に出る。
このストーリーの構想は、響子が漣の立ち寄り先を追跡し、それぞれの史跡スポットを訪ねながら響子自身の第一印象と無知の事項について諸資料の情報を重ね合わせていくプロセスを積み上げて行く。響子は様々な疑問をもちつつも、邪馬台国と卑弥呼、この探訪先にまつわる古代史の状況を分析し整理していき、漣の関心とどのようにつながっているのかを探っていく。響子の疑問が重なって行くプロセスは、読者が邪馬台国や卑弥呼、古代史に関わる情報を蓄積していくプロセスでもある。その経緯こそが古代史の謎の深さに対する興味・関心へと読者を導くことになる。漣がなぜ行方不明、とらわれの身に陥ってしまったか、それに交わる点が徐々に明らかになっていく。
大分の宇佐神宮から始まった響子の漣探索の旅は、高千穂の天岩戸神社にまで至るが、そこで危難に遭遇する。それを救出するのが、桑原崇である。響子は漣を介して桑原の名前は知っていたが、面識はなかった。桑原は自分自身の関心事の探求で休みをとり、高千穂まで来ていたのだ。「天安河原入口」近くの一軒の店で、互いを知らずに偶然に出会う。
女性店員と響子のやり取りを聞いていた桑原が、響子の危機を救うことになる。それは行方不明の漣の居場所を特定する手がかりを桑原が県警の刑事に示唆することに繋がっていく。そして語り部の役割を担ってきた響子による一連の情報と響子自身の疑問に対して、桑原の謎解きが展開されていく。卑弥呼と天照大神が結びついていく。本書タイトルの副題にある天照暗殺という事態が背景に食い込まれていたのである。
このストーリーは、邪馬台国九州説を前提にして古代史の謎が解明されていく。それは宇佐神宮とその周辺および宮崎の高千穂への案内ガイドの旅でもある。これらの地へ読者は誘われていく。私にとっては未訪地である。この作品から関心と興味を一層誘発されることになった。
ご一読ありがとうございます。
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本書に登場する史跡地関連情報その他を少し調べてみた。一覧にしておきたい。
八幡総本社 宇佐神宮 ホームページ
宇佐神宮 大分屈指のパワースポットを満喫するなら? :「たびらい」
百体神社 :「宇佐市観光協会」
化粧井戸 :「宇佐市観光協会」
凶首塚(きょうしゅづか)古墳 :「宇佐市観光協会」
安心院 :「コトバンク」
安心院町 鏝絵通り :「トリップアドバイザー」
史跡・文化財 :「糸島市」
高千穂 夜神楽三十三番 :「高千穂町」
高千穂の神社一覧 :「高千穂町」
高千穂神社 :「高千穂町観光協会」
天岩戸神社 :「高千穂町観光協会」
天岩戸神社 ホームページ
境内のご案内
天安原河原 :「みやざき温故知新ものがたり」
高千穂の神話 :「高千穂町観光協会」
高千穂町と日本神話 :「高千穂町コミュニティセンター」
邪馬台国九州説 :ウィキペディア
邪馬台国は「99・9%」九州にあった :「iRONNA毎日テーマを議論する」
邪馬台国はどこか? :「続倭人伝」
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徒然に読んできた作品のうち、このブログを書き始めた以降に印象記をまとめたものです。
こちらもお読みいただけるとうれしいかぎりです。(シリーズ作品の特定の巻だけの印象記も含みます。)
『神の時空 京の天命』 講談社NOVELS
『鬼門の将軍』 新潮社
『軍神の血脈 楠木正成秘伝』 講談社
『神の時空-かみのとき- 五色不動の猛火』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 伏見稻荷の轟雷』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 嚴島の烈風』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 三輪の山祇』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 貴船の沢鬼』 講談社NOVELS
『神の時空-かみのとき- 倭の水霊』 講談社NOVELS
『神の時空-かみのとき- 鎌倉の地龍』 講談社NOVELS
『七夕の雨闇 -毒草師-』 新潮社
『毒草師 パンドラの鳥籠』 朝日新聞出版
『鬼神伝 [龍の巻] 』 講談社NOVELS
『鬼神伝』 講談社NOVELS
『鬼神伝 鬼の巻』 講談社
『カンナ 出雲の顕在』 講談社NOVELS
『QED 伊勢の曙光』 講談社NOVELS
主な登場人物は、最終段階までは要所要所でチラリと登場するだけで、行方不明となっている鳴上漣。漣の母親で、叔母にあたる鳴上睦子から緊急連絡を受けて、漣の探索に九州の現地を急遽経巡ることになる萬願寺響子。東京ではコンタクトが取れず、宮崎県の高千穂で結果的に出会うことになる桑原崇である。そして、大分県警と宮崎県警の刑事たち及び被害者と犯人が加わる。
登場人物についてまずそのプロフィールを補足しておこう。
萬願寺響子 大阪生まれ、岡山を経て京都で育つ。市立大学の理学部卒。
母・卯子の「四柱推命」の結果を信じ、そのスケジュールで動いている。
現在は、東京の世田谷区等々力渓谷辺のマンションに住み、千代田区・市ヶ谷にある
医薬品関連出版社「ファーマ・メディカ」に勤める。編集部に在籍。入社3年目。
響子自身も八面体のサイコロを所持し、「四柱推命」を多少かじっている。
鳴上 漣 大学生で23歳。出入口以外は書物で埋め尽くされた部屋に住む。
自室で「ヨリトモ」と名づけたオオヤドカリを小学生の時からずっと飼育している。
古代史を含め日本歴史に詳しい。「将門塚保存会」会員にもなっている。
大学の春休みを利用し九州に一人旅。目的は卑弥呼、邪馬台国を調べることという。
桑原 崇 東京・目黒区にある漢方薬局「萬治漢方」に勤める薬剤師。独身。
古代史を含め日本の歴史に詳しい。その分野で漣とは親しい関係にある。
事件解決に協力し、警視庁や県警などに親しい刑事たちが幾人も居る。
このストーリーは、宮崎県の高千穂で始まった高千穂夜神楽の最中に起こった殺人事件の場面から幕があいていく。26番「戸取り」の手力雄神の舞が終わり、舞手の杉橋が退出する。その舞手はしばらくの休憩後すぐさま面を取り替えて、27番「舞開き」に登場するはずだった。だが舞手が出てくるのが遅いので休憩部屋に声をかけてのぞくと、舞手が殺されていたのである。しかもその首が切り取られて無くなっていたのだ。
一方、大分県にある宇佐神宮では、境内の御霊水をたたえる3つの井戸から、女性の生首、手首から切断された左右の手が発見された。第一発見者は神宮の近くに住み、御霊水を汲みにやってきた氏子の森山秋子だった。また、凶首塚古墳傍の雑木林の木の枝で首を吊っている男の死体が発見される。さらには、第一発見者の森山秋子もまた殺害されてしまう。そんな事件が発生していた。
上記した通り、響子は叔母から緊急連絡を受けて、漣が邪馬台国・卑弥呼のことを調べに九州に一人旅で出かけ、行方不明になっていることを知る。まず、響子は漣の部屋で彼の旅行目的と行き先の情報がわかるか調べてみる。パソコンの保存ファイルから、大雑把な旅行の予定に関連するページを見つけたのである。ランダムに記されていた名称と地名がいくつかあり、それぞれに細かいメモ書きが撃ち込まれていた。そこには、宇佐神宮・高千穂神社・天岩戸神社などの名称と、福岡、糸島、安心院(あじむ)等の地名。具体的旅程については立った一行。「3月17日(土)羽田出発。大分空港。803キロ。1時間35分」そして、「宇佐神宮、百体神社、化粧井戸、凶首塚古墳」という名称である。
響子は桑原のことを思い出し、連絡を取ってみるが、桑原が休みを取っているということでコンタクトができずに終わる。邪馬台国・卑弥呼については殆ど何も知識を持ち合わせていない響子は、漣がパソコンに残していた旅程に関する情報と、急遽入手した邪馬台国関連資料を取りそろえる。そして、大分の宇佐神宮を皮切りに、現地で漣らしき学生に付いての聞き込みをしながら漣の旅程を追跡し、漣の行方を探索する旅に出る。
このストーリーの構想は、響子が漣の立ち寄り先を追跡し、それぞれの史跡スポットを訪ねながら響子自身の第一印象と無知の事項について諸資料の情報を重ね合わせていくプロセスを積み上げて行く。響子は様々な疑問をもちつつも、邪馬台国と卑弥呼、この探訪先にまつわる古代史の状況を分析し整理していき、漣の関心とどのようにつながっているのかを探っていく。響子の疑問が重なって行くプロセスは、読者が邪馬台国や卑弥呼、古代史に関わる情報を蓄積していくプロセスでもある。その経緯こそが古代史の謎の深さに対する興味・関心へと読者を導くことになる。漣がなぜ行方不明、とらわれの身に陥ってしまったか、それに交わる点が徐々に明らかになっていく。
大分の宇佐神宮から始まった響子の漣探索の旅は、高千穂の天岩戸神社にまで至るが、そこで危難に遭遇する。それを救出するのが、桑原崇である。響子は漣を介して桑原の名前は知っていたが、面識はなかった。桑原は自分自身の関心事の探求で休みをとり、高千穂まで来ていたのだ。「天安河原入口」近くの一軒の店で、互いを知らずに偶然に出会う。
女性店員と響子のやり取りを聞いていた桑原が、響子の危機を救うことになる。それは行方不明の漣の居場所を特定する手がかりを桑原が県警の刑事に示唆することに繋がっていく。そして語り部の役割を担ってきた響子による一連の情報と響子自身の疑問に対して、桑原の謎解きが展開されていく。卑弥呼と天照大神が結びついていく。本書タイトルの副題にある天照暗殺という事態が背景に食い込まれていたのである。
このストーリーは、邪馬台国九州説を前提にして古代史の謎が解明されていく。それは宇佐神宮とその周辺および宮崎の高千穂への案内ガイドの旅でもある。これらの地へ読者は誘われていく。私にとっては未訪地である。この作品から関心と興味を一層誘発されることになった。
ご一読ありがとうございます。
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宇佐神宮 大分屈指のパワースポットを満喫するなら? :「たびらい」
百体神社 :「宇佐市観光協会」
化粧井戸 :「宇佐市観光協会」
凶首塚(きょうしゅづか)古墳 :「宇佐市観光協会」
安心院 :「コトバンク」
安心院町 鏝絵通り :「トリップアドバイザー」
史跡・文化財 :「糸島市」
高千穂 夜神楽三十三番 :「高千穂町」
高千穂の神社一覧 :「高千穂町」
高千穂神社 :「高千穂町観光協会」
天岩戸神社 :「高千穂町観光協会」
天岩戸神社 ホームページ
境内のご案内
天安原河原 :「みやざき温故知新ものがたり」
高千穂の神話 :「高千穂町観光協会」
高千穂町と日本神話 :「高千穂町コミュニティセンター」
邪馬台国九州説 :ウィキペディア
邪馬台国は「99・9%」九州にあった :「iRONNA毎日テーマを議論する」
邪馬台国はどこか? :「続倭人伝」
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徒然に読んできた作品のうち、このブログを書き始めた以降に印象記をまとめたものです。
こちらもお読みいただけるとうれしいかぎりです。(シリーズ作品の特定の巻だけの印象記も含みます。)
『神の時空 京の天命』 講談社NOVELS
『鬼門の将軍』 新潮社
『軍神の血脈 楠木正成秘伝』 講談社
『神の時空-かみのとき- 五色不動の猛火』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 伏見稻荷の轟雷』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 嚴島の烈風』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 三輪の山祇』 講談社NOVELS
『神の時空 -かみのとき- 貴船の沢鬼』 講談社NOVELS
『神の時空-かみのとき- 倭の水霊』 講談社NOVELS
『神の時空-かみのとき- 鎌倉の地龍』 講談社NOVELS
『七夕の雨闇 -毒草師-』 新潮社
『毒草師 パンドラの鳥籠』 朝日新聞出版
『鬼神伝 [龍の巻] 』 講談社NOVELS
『鬼神伝』 講談社NOVELS
『鬼神伝 鬼の巻』 講談社
『カンナ 出雲の顕在』 講談社NOVELS
『QED 伊勢の曙光』 講談社NOVELS