芸備地方史研究会へ投稿していた標記の書評を掲載する『芸備地方史研究』第320・321合併号が、完成し東広島市の自宅に届けられました。発行の日付は投稿から約1年後の2022年7月11日で、掲載は56~63ページです。
今回批評を試みた編著
(岩田書院、2019年11月)は、八王子千人同心につき、慶応2年(1866)のいわゆる「第2次長州征討」(「幕長戦争」などともよぶ)に従軍した日記を分析しながら再評価を促そうとするものです。書評を投稿しようと考えた理由は、当時、中国路(山陽道)を西進し、九州に抜け出てからは瀬戸内海路を通り伊予国松山藩領経由で大坂(大阪)へ戻った点より、私自身の研究テーマ〝江戸時代の公用通行を支えた情報ネットワーク〟にも関係するゆえです。日本史学界における書評は普通、研究の方向性や論証の説得力を問うことに終始するものなのですが、今回は珍しく、史料の解釈に重点を置きました。解釈によって描く歴史像が正反対となりうるからです。ならば、そもそも史料の原文を正しく翻刻できているか?から検証する必要があるわけですけど、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み上京を延期……。いたずらに時間が経つのも良くないので、今回は、無念ですけど本書に翻刻されたものについて批評することとしました。おそらく、本書のなかで割愛した部分に、私自身の研究テーマで重要な記録がありそうなので、コロナ禍が落ち着いたらぜひ原史料を閲覧したいと思います。
執筆メンバーからすれば目的外の批評を含むでしょうけど、私自身の研究テーマにとれば、今後に向け重要なヒントを得られました。