NHK「JAPANデビュー アジアの“一等国”」を巡るNHK一万人集団訴訟の第三回公判が九月十七日、東京地裁で行われ、台湾のパイワン族の陳清福氏が意見陳述を行った。
メルマガ版「台湾は日本の生命線!」より転載
メルマガ版「台湾は日本の生命線!」より転載
番組は、百年前に現在の屏東県牡丹郷の高士村(クスクス村)の若者たちが、ロンドンで「人間動物園」として展示されるため、日本人によって連行されたことをデッチ上げた。
連行の「被害者」の娘である高許月妹さんが「人間動物園」の話を聞かされ、沈痛な面持ちで言葉を発する場面は、おそらく番組のなかで最も視聴者に衝撃を与えたのではないか。
さて、その言葉を「悲しいね。この出来事の重さ、語りきれない」と日本語に通訳したのが、この陳清福氏なのである。
同氏はあの番組を見て、原告団に加わった。それはいったいなぜなのか。
それについては本人が、公判やその後の記者会見、報告集会でも怒りを込めて語っている。そこで私が直接本人からうかがった話も合わせながら、ここに書き留めてみたい。
話によると、ある日、浜崎憲一ディレクターを含むNHKのスタッフ四人(日本人三人と台湾人一人)がクスクス村へ取材に来た。三日間も通ってきたそうだ。その際取材を受けた高許月妹さんは日本語ができないため、元学校教員のだった陳清福氏が通訳を務めることになった。
そのとき、スタッフは高許月妹さんにロンドンで撮影された村人たちの写真を見せ、父親はどれかと聞いた。高許月妹さんは初めに集合写真を見せられ、「小さくてよく見えない」と答えた。その後一人ひとりが写った写真を見せられ、今は亡き父親の写真を見つけた。
そしてそれをとても喜び、懐かしさがこみ上げ、パイワン語で「悲しいね。この出来事の重さ、語りきれない」と話した。
よく知られているとおり、この「悲しいね」は「懐かしいね」の意味だった。
陳清福氏はカメラの前では直訳したものの、そのことをスタッフに説明していたそうだ。
いずれにせよ、高許月妹さんは父親が「人間動物園」として見世物にされたことを「悲しい」などとは言っていない。なぜならスタッフは「人間動物園」があったなどと一言も言っていなかったからだ。
三人の日本人はとても礼儀正しかった。そこで陳清福氏はクスクス神社の跡地へ案内し、「この神社があったからこそ、村の子供たちは議員や教員になるなど、多くが成功している」とし、神社再建の夢を伝えた。そして三人に協力を求めたところ、頷いてくれたそうだ。
陳清福氏が番組が放送されたことを知ったのは、人間動物園の虚構を明らかにするため、チャンネル桜の取材班が来村してからだ。
陳清福氏は取材班から初めて「人間動物園」の話を聞かされ、仰天した。また番組の映像を見て、自分はほんの数秒間の声のみの出演であり、しかも神社再建の話にまったく言及されていないことにショックを受けた。
また高許月妹さんの名を「高許月」と誤って紹介しており、そしてNHKが誤りの指摘を受けながらも、一切修正をしていないことも知った。
これで陳清福氏は怒りを抱いた。
三人の日本人の取材を懸命に手伝った陳清福氏は子供時代、日本人の先生にすばらしい教育を受けた。
信頼、責任、道徳の大切さを教わり、そのおかげで教員にもなれた。
そのため日本人には感謝の気持ちがある。だからこそ三人を手伝った。
ところが番組は神社の跡地の光景は映さない。悪い話ばかりを取り上げ、民族の尊厳を傷つけた。
「そもそも百年も前のことを取り上げる必要はあるのか」と激怒する陳清福氏。
村の老人たちにも番組のことを話すと、やはり誰もが激怒した。
みな日本人を尊敬してきただけに、NHKへの不信感が高まった。
それはクスクス村だけではない。牡丹郷全体の老人に共通するものだ。
しかしNHKに対して日本語で怒りを表すこともできない…。
そこで陳清福氏は牡丹郷を代表し、はるばる日本へやってきたのだった(陳清福氏は牡丹郷老人会の会長でもある)。
クスクス村は特別に親日的な村だった。
だが番組はこともあろうにこの村を舞台に、人々は日本人を怨んでいるとの悪質な印象操作を試みた。
そしてそのためなら、「人間動物園」なる作り話を行い、「動物」扱いにされたなどと村の先人たちを辱めることも辞さなかったのだ。
番組は日本の台湾人に対する差別、虐待、虐殺を糾弾するた、自らが台湾人を侮辱した格好だ。
陳清福氏は「パイワン族は間違ったことをすれば謝るのが当然だと考える。
それなのにNHKはなぜ…」と怒りを抑えられない。
「そこまで我々を馬鹿にするのなら、三人がまた来たら殺してやろうと、村の人々は話している」「本当に斬るよ。遠慮はしない」とも。
かつては、自らの尊厳を守るためなら、首狩をも辞さなかった誇り高き民族の血がそう言わせたのである。
「生命を簡単に犠牲にできるパイワン族の精神は日本人と同じだ」と話す陳清福氏。
当初、日本人がパイワン族のためにNHKに抗議の声を上げているなど信じられなかったそうだ。
しかし今回来日し、多くの人々が戦っている姿を見て、心から感動したそうだ。
一方多くの日本人も、パイワン族の尊厳のために立ち上がった陳清福氏の姿に感動したはずだ。
心の通い合える両民族の友情がふたたび深まりつつあるのは何よりである。
NHKとの戦いはそれぞれの尊厳を守るための、崇高なる戦いでもあるのだ。
なおNHKは「人間動物園」に関し、次のような主張を今でも取り下げていない。
ーーーパイワン族の人たち自身が当時どう受け止め、感じたかということは、「人間動物園」の事実を左右するものではありません。こうしたことは台湾の方々にとっても心地よいことでないことはもちろんですが、番組は当時の状況の中でおきた事実としてあくまでも客観的に伝えたものです。
連行の「被害者」の娘である高許月妹さんが「人間動物園」の話を聞かされ、沈痛な面持ちで言葉を発する場面は、おそらく番組のなかで最も視聴者に衝撃を与えたのではないか。
さて、その言葉を「悲しいね。この出来事の重さ、語りきれない」と日本語に通訳したのが、この陳清福氏なのである。
同氏はあの番組を見て、原告団に加わった。それはいったいなぜなのか。
それについては本人が、公判やその後の記者会見、報告集会でも怒りを込めて語っている。そこで私が直接本人からうかがった話も合わせながら、ここに書き留めてみたい。
話によると、ある日、浜崎憲一ディレクターを含むNHKのスタッフ四人(日本人三人と台湾人一人)がクスクス村へ取材に来た。三日間も通ってきたそうだ。その際取材を受けた高許月妹さんは日本語ができないため、元学校教員のだった陳清福氏が通訳を務めることになった。
そのとき、スタッフは高許月妹さんにロンドンで撮影された村人たちの写真を見せ、父親はどれかと聞いた。高許月妹さんは初めに集合写真を見せられ、「小さくてよく見えない」と答えた。その後一人ひとりが写った写真を見せられ、今は亡き父親の写真を見つけた。
そしてそれをとても喜び、懐かしさがこみ上げ、パイワン語で「悲しいね。この出来事の重さ、語りきれない」と話した。
よく知られているとおり、この「悲しいね」は「懐かしいね」の意味だった。
陳清福氏はカメラの前では直訳したものの、そのことをスタッフに説明していたそうだ。
いずれにせよ、高許月妹さんは父親が「人間動物園」として見世物にされたことを「悲しい」などとは言っていない。なぜならスタッフは「人間動物園」があったなどと一言も言っていなかったからだ。
三人の日本人はとても礼儀正しかった。そこで陳清福氏はクスクス神社の跡地へ案内し、「この神社があったからこそ、村の子供たちは議員や教員になるなど、多くが成功している」とし、神社再建の夢を伝えた。そして三人に協力を求めたところ、頷いてくれたそうだ。
陳清福氏が番組が放送されたことを知ったのは、人間動物園の虚構を明らかにするため、チャンネル桜の取材班が来村してからだ。
陳清福氏は取材班から初めて「人間動物園」の話を聞かされ、仰天した。また番組の映像を見て、自分はほんの数秒間の声のみの出演であり、しかも神社再建の話にまったく言及されていないことにショックを受けた。
また高許月妹さんの名を「高許月」と誤って紹介しており、そしてNHKが誤りの指摘を受けながらも、一切修正をしていないことも知った。
これで陳清福氏は怒りを抱いた。
三人の日本人の取材を懸命に手伝った陳清福氏は子供時代、日本人の先生にすばらしい教育を受けた。
信頼、責任、道徳の大切さを教わり、そのおかげで教員にもなれた。
そのため日本人には感謝の気持ちがある。だからこそ三人を手伝った。
ところが番組は神社の跡地の光景は映さない。悪い話ばかりを取り上げ、民族の尊厳を傷つけた。
「そもそも百年も前のことを取り上げる必要はあるのか」と激怒する陳清福氏。
村の老人たちにも番組のことを話すと、やはり誰もが激怒した。
みな日本人を尊敬してきただけに、NHKへの不信感が高まった。
それはクスクス村だけではない。牡丹郷全体の老人に共通するものだ。
しかしNHKに対して日本語で怒りを表すこともできない…。
そこで陳清福氏は牡丹郷を代表し、はるばる日本へやってきたのだった(陳清福氏は牡丹郷老人会の会長でもある)。
クスクス村は特別に親日的な村だった。
だが番組はこともあろうにこの村を舞台に、人々は日本人を怨んでいるとの悪質な印象操作を試みた。
そしてそのためなら、「人間動物園」なる作り話を行い、「動物」扱いにされたなどと村の先人たちを辱めることも辞さなかったのだ。
番組は日本の台湾人に対する差別、虐待、虐殺を糾弾するた、自らが台湾人を侮辱した格好だ。
陳清福氏は「パイワン族は間違ったことをすれば謝るのが当然だと考える。
それなのにNHKはなぜ…」と怒りを抑えられない。
「そこまで我々を馬鹿にするのなら、三人がまた来たら殺してやろうと、村の人々は話している」「本当に斬るよ。遠慮はしない」とも。
かつては、自らの尊厳を守るためなら、首狩をも辞さなかった誇り高き民族の血がそう言わせたのである。
「生命を簡単に犠牲にできるパイワン族の精神は日本人と同じだ」と話す陳清福氏。
当初、日本人がパイワン族のためにNHKに抗議の声を上げているなど信じられなかったそうだ。
しかし今回来日し、多くの人々が戦っている姿を見て、心から感動したそうだ。
一方多くの日本人も、パイワン族の尊厳のために立ち上がった陳清福氏の姿に感動したはずだ。
心の通い合える両民族の友情がふたたび深まりつつあるのは何よりである。
NHKとの戦いはそれぞれの尊厳を守るための、崇高なる戦いでもあるのだ。
なおNHKは「人間動物園」に関し、次のような主張を今でも取り下げていない。
ーーーパイワン族の人たち自身が当時どう受け止め、感じたかということは、「人間動物園」の事実を左右するものではありません。こうしたことは台湾の方々にとっても心地よいことでないことはもちろんですが、番組は当時の状況の中でおきた事実としてあくまでも客観的に伝えたものです。