落葉松亭日記

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変わりつつある世界

2016年02月21日 | 政治・外交
米ソ冷戦時代はある種の均衡があったが、ソ連崩壊から25年を経て、一人勝ちかと思われたその米に弱さが目立ってきた。
同盟国米の庇護の下にある日本はこれからどうなるのだろうか。
西村眞悟の時事通信 平成28年2月19日(金)
地盤が動き始めた

この度の北朝鮮の「水爆実験」と「人工衛星打ち上げ」が、 東アジアの地盤が既に動いていることを明らかにしたように感じる。
北極圏の大河に冬に凍結して張りつめた分厚い氷が、 割れて大きく動き流れ始める切っ掛けは、 ほんの些細なヒビから始まる。
また、大木の枝が雪の重みで折れる切っ掛は、ラストストロー。
北朝鮮の鳴り物入りの馬鹿馬鹿しい「実験」は、 このヒビでありラストストローか。

では、東アジアで、何が割れて流れ始め、何が折れるのか。
分厚く東アジアに張り付いていた中国共産党独裁国家が割れて流れ始める。
中共という貪欲な暴力と無慈悲を本質とする大きな枝と寄生する北朝鮮が折れる。
振りかえれば、二十世紀も四分の三が過ぎた頃、 アメリカがベトナムから撤退しさらにフィリピンの基地を空き家にして出ていった「空白」を狙って、 中共は露骨な海への勢力拡大を開始している。
まずベトナムが領有を主張する西沙諸島を武力で占拠し、 次ぎにフィリピンが領有を主張する南沙を武力で占拠した。
さらに東シナ海の我が国の領土である尖閣諸島を中共の領土と主張し始めた。
それと同時に、経済の急成長を背景に核ミサイル戦力と海空戦力の増強と近代化に励み、 その武力による東シナ海と南シナ海と西太平洋を「中国の海」と化する示威運動を展開したのだ。

そして、これと連動するように北朝鮮も軍事強国化を誇示し、 核開発とミサイル開発に乗りだし、 ミサイル実験と核実験をして我が国らの西側をゆすりカネをせしめた。
アメリカのクリントン大統領は、騙されて軽水炉と重油を北朝鮮に供給し、 次のブッシュ大統領は、核開発を凍結すると騙されて効果的な北朝鮮への金融制裁を解除した。 その間、我が国は北朝鮮の工作基地であり資金供給地であり続けた。
老人が北朝鮮のマスゲームをみせられて涙を流して一兆円の提供を歌いあげ、 馬鹿が五十万トンの米を送った。

とはいえ、この段階では、問題は東アジアのことであり、 動いている国際政治の地盤の上での問題とは意識されなかった。
しかし、中東のシリアにおいてアサド政権が反政府勢力派に苛酷な殺戮を開始し、 この問題に対するオバマ大統領の優柔不断が、 アメリカの威信、アメリカへの信頼を大きく失わせてから様相が変わってきた。
東アジアの問題も地球上の問題だと認識された。

二〇一二年八月、
オバマ大統領は「アサド政権がサリンなどの化学兵器を使用すればレッドラインを超える」と アサド大統領に警告した。
アメリカ大統領が言うレッドラインとは、 これを超えれば軍事行動を開始するということである。
八月二十一日、アサドはサリンを使用し、住民一四二九人を殺害した。
オバマは、軍事行動を開始せず、 逡巡の末、ロシアのプーチン大統領の仲裁に飛びついて アサドが化学兵器を国外に運び出すと、口先で言うだけで、納得してしまった。
するとアサドは、また化学兵器を使用した。

つまり、アメリカは信頼(力)を失い、 オバマは世界から馬鹿にされたのである。
その後、オバマは、「アメリカは世界の警察官を止める」と一昨日来いの発言をする。
次ぎにロシアのプーチン大統領は、合法的に選挙で選ばれた親露派のウクライナ大統領が、 NATOとアメリカの工作で追放されウクライナがNATO支配下に入りつつある危機に直面する。
ロシアにとって、 ナポレオンとの祖国戦争もヒトラーとの大祖国戦争もウクライナが主戦場であった。
西側からウクライナが突破されればモスクワそしてロシアは陥落の危機を迎える。
従って、プーチン大統領は、 ウクライナの首都である「キエフはレッドラインである」と発言した。
その上で、警告通りクリミアを武力で併合した。

世界は、オバマの優柔不断な不作為によってではなく、 プーチンの百六十年前のクリミア戦争の時のようなクリミア併合に驚き、 始めて欧州の情勢は「戦前に回帰」していることを実感した。
つまり、ユーラシアの西半分においては、 第二次世界大戦後の世界秩序である 「武力による領土変更はない」という前提が崩壊したことを悟った。

欧州における戦後の世界秩序を崩壊させたのは、オバマとプーチンである。
しかし、これだけでは、「世界規模の認識」にはならない。
ユーラシアの西半分では、 オバマが優柔不断の晒し者になりプーチンが白昼堂々やったから万人が分かっただけで、 ユーラシアの東方では、 そもそも、もともと、「戦後の世界秩序」はなかったではないか。

ユーラシアの東方では、 第二次世界大戦の「戦勝国」になっていたソビエトと中共がやっていたから見て見ぬ振りをされていただけで、彼らは領土、領域を拡大するのに、武力の行使を躊躇ったことはない。

ソビエト・ロシアが我が北方領土を如何にして護ってきたか、 話し合いによる領土問題解決に乗ったことがあるのか。
中共によるチベット・ウイグル侵略そしてモンゴル・満州の武力平定は言うに及ばず、 現在進行中の南シナ海や東シナ海における示威運動など、 これを放置すれば、止まることを知らない暴走が始まる段階にまで来ている。
そして、冒頭に記したように、 北朝鮮の二つのちんけな実験が、流れを決定的に明るみに出したようだ。

本年に入り、台湾では、 中共との接近を進めてきた国民党の馬英九主席の方針を打破して、 民進党の蔡英文女史が総統選挙に勝利した。
中共やアメリカを睨んで蔡女史は明確には言わないが、 明確に言わないことが「腹に据えている」ことを示している。
即ち、台湾は海洋国家として「台湾となる道」を進む。
これは、我が日本と台湾は一衣帯水の友邦の道を進むと言うことだ。

次ぎに、同じ一月、 我が天皇皇后両陛下は、 フィリピンを行幸啓され、 大東亜戦争におけるフィリピン人戦没者と日本軍戦歿将兵を等しく慰霊された。
この時、フィリピン大統領は 両陛下が乗られたエアー・フォース・ワンの下に来て両陛下を出迎え、 同じくエアー・フォース・ワンの下で両陛下を見送るという特別なプロトコールをみせた。
この行幸啓は、フィリピンと日本との精神的な絆を示したものであり、 両国の結びつきを計り知れなく強めたものである。
天皇の尊い御業と頭を垂れるのみである。

中共の脅威に直接接している台湾とフィリピンそして我が国の三国は、 共に連携して海洋の自由を護る海上のリンクとなった。
そして、この度、フィリピンを含むアセアン諸国は、 アメリカのカリフォルニア州に集まってアメリカと首脳会談を行った。

これらの動きは、中共に対して自国の生存を確保するために動き出した 東アジアにおける安全保障構築のための胎動であり、 北朝鮮の二つの実験と中共が南シナ海に埋め立て基地建設を強行し地対空ミサイルを配備したなかで行われた。
そして、この安全保障構築の動きに、 昨年の九月三日、天安門に登っていた朴女史も乗ってきたようだ。
このことから分かるように、 従来の中共と仲良くして中共を当てにすれば、 北朝鮮問題が納まるという判断は既になく、 中共と北朝鮮という独裁国家は、共に、 春に融けて流れる河の氷、ラストストローで折れる枝だと認識されるに至った。
これが、この度の北朝鮮の実験と中共の南シナ海における地対空ミサイル配備の効果である。

東アジアにおける邪悪な残酷な大と小の独裁国家のハードランディングによる終焉が近い。 この時が、 一番の危機と認識しなければならない。
覚悟を決めよう!
「平和を望むならば、戦いに備えよ」
平和のための軍備を整える時だ。
男子国会議員が育児休暇を取るとか、そんな話題で騒いでいる時ではないぞ!

お問い合わせ:西村眞悟事務所
TEL:072-277-4140 E-mail:sakaioffice@n-shingo.com
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成28年(2016) 2月19日(金曜日)弐 通算第4821号
http://melma.com/backnumber_45206/
ロシアの軍事力を侮ってきたオバマ大統領だったが
アセアン首脳会議で「ロシアは世界第二位の強い陸軍を確保している」


 オバマは「世界の警察官からアメリカは降りた」と言って、すごすごと米軍をアフガン、イラクから撤退させた。
ときに思いつきで米軍を増派したり、縮小したり、派遣するといったり、あれは止めると言ったり。この外交戦略が秋風のように変わる、まったく不安定な凸凹路線。地域を安定化させると言って軍事介入したアフガニスタン、イラクを逆に不安定化させ、シリア内戦を激化させた。

 一年前までオバマはロシアの軍事力を侮り「弱い軍事力でありロシアは地域的パワーにすぎない」と公言していた。
 一年後の今日、オバマは「ロシアの陸軍は世界第二位の強さを誇る、ワールドパワーである」と米アセアン首脳会議の議論のなかで言及していることが分かった(英文プラウダ、2月19日)。

 シリアの反体制派への空爆とトルコのロシア機撃墜に報復を自重しながらも、ロシアはシリア領空を補足するS400システムを導入したため、トルコなどNATOが臨んだ「飛行禁止区域」の設定は不可能となった。
 オバマ発言はこの現実を踏まえたもので、  「しかしシリアの安定、秩序回復という目標は軍事力によっては達成されない」とオバマは言い続けた。
軍事力が弱いから南シナ海は中国の海となった現実に目を背けている。

■ひろさちや ラストストロー(最後の藁)~天台ジャーナル~
http://www.tendai.or.jp/journal/kiji.php?nid=50