「アメリカ第一」施策をとるトランプ米大統領は、メキシコからの不法移民や犯罪者の締め出しに、国境に壁を建設すると大統領令を出した。
欧州でもドイツが移民政策の失敗や、英国のEU脱退など内向きになりつつある。
壁の主目的は「防犯」だが、世界からは「壁を作るな」の声
欧州でもドイツが移民政策の失敗や、英国のEU脱退など内向きになりつつある。
実現可能? トランプ米大統領の「国境の壁」2017年01月27日 11:41 発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/articles/-/3115513?cx_part=topstory
【1月27日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は25日、自身が昨年の選挙戦で公約に掲げていたメキシコ国境での「壁建設」の実現に向けた大統領令に署名した。
本記事では不法移民、麻薬、犯罪者の締め出しが目標とうたっているこの巨大プロジェクトの実現可能性についてみていく。
■壁建設の費用
正確な額は不明だが、莫大な金額となる。
非営利の人権団体「ワシントン・オフィス・オン・ラテン・アメリカ(Washington Office on Latin America)」が引用した米税関・国境取締局(CBP)の見積もりによると、全長約3200キロにおよぶ米・メキシコ国境の一部、約1050キロの区間にはすでに壁が設置され、人や車両の往来を阻んでいる。しかしあと665キロ分の壁を建設するだけでも114億ドル(約1兆3000億円)もの費用がかかるという。
トランプ氏自身も費用について言葉を濁し、40億ドル(約4600億円)から約100億ドル(約1兆1400億円)と見積もってきた。しかし建築家や技師によるとそんな額では収まらず、はるかに多くの費用がかかるという。
エマージングテクノロジーメディア「MITテクノロジーレビュー(MIT Technology Review)」が昨年10月にリリースした「Bad Math Props up Trump's Border Wall(トランプ氏の国境の壁を支えるまずい計算)」と題した記事の見積もりによると、鋼鉄とコンクリートからなる壁を約1600キロにわたって設置するには270億ドル(約3兆900億円)から400億ドル(約4兆5800億円)の費用がかかるという。
同記事には「米・メキシコ国境に壁を設置することが賢明かどうか、誰が費用を負担するかといった問題はさておき、トランプ氏が主張してきたような金額で壁を設置することは到底不可能」と書かれている。
■壁建設の財源
ショーン・スパイサー(Sean Spicer)米大統領報道官は26日、トランプ大統領が、対メキシコ国境での壁建設の資金源として、メキシコからの輸入品に20%の関税を課すことを計画していると明らかにした。
また、トランプ氏の大統領令はジョン・ケリー(John Kelly)国土安全保障省長官に、「フェデラルファンドを確認し、法が許す範囲において全額を南部国境沿いの物理的な壁の計画、設計、建設に割り当てる」よう命じている。「今年度と来年度の予算教書の準備など、壁の建設に必要な長期資金調達について計画立案する」ようにも命じている。
トランプ氏は壁建設の費用はメキシコに支払わせると繰り返し主張してきたが、メキシコは壁建設の費用や米国立て替え分の支払いをきっぱりと拒否している。
■トランプ氏の壁とはどのようなものか
トランプ氏の大統領令はこの壁を「切れ目のない物理的な壁、もしくは類似の頑丈で切れ目がなく通り抜けることのできない物理的障壁」と定義している。
ひところトランプ氏が求めていた組み立て式の鉄筋コンクリート板は重い素材で、輸送に大きな難点があった。この材料を使うには現地までの道路を舗装し、コンクリートを打つための多数の現場を設置し、何年にもわたって大勢の労働者を雇わなければならない。
壁には安定性を確保し、トンネルを掘る気をそぐだけの十分な深さを持つ基礎も必要になる。
■壁建設のその他の障害
米テキサス(Texas)州とメキシコの自然的国境となっているリオグランデ(Rio Grande)川を例にとってみると、法は洪水管理を妨げたり、資源の共有を妨害したりするものの建築を禁じている。条約によって米、メキシコのどちらの国も川の流れを変えることを禁じられている。
さらに国境沿いの土地の大半が私有地なので、壁の建設には煩雑な法的手続き、政治的反動、相当な額にのぼる土地収用費用といった問題もついてまわる。
■壁建設計画に対する米国人の反応
米国人はこの壁によって真っ二つに分断されているようだ。米政治サイト「ポリティコ(Politico)」と米調査会社「モーニング・コンサルト(Morning Consult)」が25日に公表した合同世論調査によると、壁建設に有権者の47%が賛成、45%が反対している。
壁建設は無意味だと批判する人もいる。特筆すべきは米国に密輸されている麻薬のほとんどが合法的な入国地点から入ってきており、砂漠を通って入ってきているわけではない点だ。
壁建設の目標が不法移民を締め出すことだとしても、ワシントン・オフィス・オン・ラテン・アメリカによると、不法移民の流入数はすでに1970年代水準にまで下がっている。(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3115513?cx_part=topstory
【1月27日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は25日、自身が昨年の選挙戦で公約に掲げていたメキシコ国境での「壁建設」の実現に向けた大統領令に署名した。
本記事では不法移民、麻薬、犯罪者の締め出しが目標とうたっているこの巨大プロジェクトの実現可能性についてみていく。
■壁建設の費用
正確な額は不明だが、莫大な金額となる。
非営利の人権団体「ワシントン・オフィス・オン・ラテン・アメリカ(Washington Office on Latin America)」が引用した米税関・国境取締局(CBP)の見積もりによると、全長約3200キロにおよぶ米・メキシコ国境の一部、約1050キロの区間にはすでに壁が設置され、人や車両の往来を阻んでいる。しかしあと665キロ分の壁を建設するだけでも114億ドル(約1兆3000億円)もの費用がかかるという。
トランプ氏自身も費用について言葉を濁し、40億ドル(約4600億円)から約100億ドル(約1兆1400億円)と見積もってきた。しかし建築家や技師によるとそんな額では収まらず、はるかに多くの費用がかかるという。
エマージングテクノロジーメディア「MITテクノロジーレビュー(MIT Technology Review)」が昨年10月にリリースした「Bad Math Props up Trump's Border Wall(トランプ氏の国境の壁を支えるまずい計算)」と題した記事の見積もりによると、鋼鉄とコンクリートからなる壁を約1600キロにわたって設置するには270億ドル(約3兆900億円)から400億ドル(約4兆5800億円)の費用がかかるという。
同記事には「米・メキシコ国境に壁を設置することが賢明かどうか、誰が費用を負担するかといった問題はさておき、トランプ氏が主張してきたような金額で壁を設置することは到底不可能」と書かれている。
■壁建設の財源
ショーン・スパイサー(Sean Spicer)米大統領報道官は26日、トランプ大統領が、対メキシコ国境での壁建設の資金源として、メキシコからの輸入品に20%の関税を課すことを計画していると明らかにした。
また、トランプ氏の大統領令はジョン・ケリー(John Kelly)国土安全保障省長官に、「フェデラルファンドを確認し、法が許す範囲において全額を南部国境沿いの物理的な壁の計画、設計、建設に割り当てる」よう命じている。「今年度と来年度の予算教書の準備など、壁の建設に必要な長期資金調達について計画立案する」ようにも命じている。
トランプ氏は壁建設の費用はメキシコに支払わせると繰り返し主張してきたが、メキシコは壁建設の費用や米国立て替え分の支払いをきっぱりと拒否している。
■トランプ氏の壁とはどのようなものか
トランプ氏の大統領令はこの壁を「切れ目のない物理的な壁、もしくは類似の頑丈で切れ目がなく通り抜けることのできない物理的障壁」と定義している。
ひところトランプ氏が求めていた組み立て式の鉄筋コンクリート板は重い素材で、輸送に大きな難点があった。この材料を使うには現地までの道路を舗装し、コンクリートを打つための多数の現場を設置し、何年にもわたって大勢の労働者を雇わなければならない。
壁には安定性を確保し、トンネルを掘る気をそぐだけの十分な深さを持つ基礎も必要になる。
■壁建設のその他の障害
米テキサス(Texas)州とメキシコの自然的国境となっているリオグランデ(Rio Grande)川を例にとってみると、法は洪水管理を妨げたり、資源の共有を妨害したりするものの建築を禁じている。条約によって米、メキシコのどちらの国も川の流れを変えることを禁じられている。
さらに国境沿いの土地の大半が私有地なので、壁の建設には煩雑な法的手続き、政治的反動、相当な額にのぼる土地収用費用といった問題もついてまわる。
■壁建設計画に対する米国人の反応
米国人はこの壁によって真っ二つに分断されているようだ。米政治サイト「ポリティコ(Politico)」と米調査会社「モーニング・コンサルト(Morning Consult)」が25日に公表した合同世論調査によると、壁建設に有権者の47%が賛成、45%が反対している。
壁建設は無意味だと批判する人もいる。特筆すべきは米国に密輸されている麻薬のほとんどが合法的な入国地点から入ってきており、砂漠を通って入ってきているわけではない点だ。
壁建設の目標が不法移民を締め出すことだとしても、ワシントン・オフィス・オン・ラテン・アメリカによると、不法移民の流入数はすでに1970年代水準にまで下がっている。(c)AFP
壁の主目的は「防犯」だが、世界からは「壁を作るな」の声
イラン大統領、トランプ米大統領に対し「今は壁をつくる時ではない」
2017年01月28日 21:08 発信地:テヘラン/イラン
http://www.afpbb.com/articles/-/3115807
【1月28日 AFP】イランのハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領は28日、米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領を批判し、「今は国と国の間に壁をつくる時ではない」と述べた。
ロウハ二大統領はイランの首都テヘラン(Tehran)で開かれた観光業界の会議で、米新政権について「彼らはベルリンの壁(Berlin Wall)がもう何年も前に崩壊したことを忘れている。たとえ国と国の間に壁があったとしても、それは取り払わなければならない」と述べた。
ロウハ二大統領の発言は、トランプ米大統領がメキシコ国境沿いに壁を建設しようとしていることや、イランを含むイスラム教国7か国からの旅行者らに対し新たに厳しい入国制限を導入する方針を示したことを受けたもの。ロウハ二大統領は、トランプ大統領が打ち出したビザ発給停止については直接触れなかったが、2015年に欧米など6か国と核問題の包括解決に向けた枠組みに合意して以降、イランは外国人旅行者に「門戸を開いている」と語った。
トランプ氏はイラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン国籍の移民や旅行者に対し、ビザの発給を最低90日間停止する方針を示している。またこれらの国が、米国へ入国しようとしている個人に関する広範な情報を提供しなかった場合には、ビザ発給停止の期間を延長する可能性も示唆している。米国には100万人を超えるイラン人が住んでおり、多くの家族がこうした事態を深く懸念している。(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3115807
【1月28日 AFP】イランのハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領は28日、米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領を批判し、「今は国と国の間に壁をつくる時ではない」と述べた。
ロウハ二大統領はイランの首都テヘラン(Tehran)で開かれた観光業界の会議で、米新政権について「彼らはベルリンの壁(Berlin Wall)がもう何年も前に崩壊したことを忘れている。たとえ国と国の間に壁があったとしても、それは取り払わなければならない」と述べた。
ロウハ二大統領の発言は、トランプ米大統領がメキシコ国境沿いに壁を建設しようとしていることや、イランを含むイスラム教国7か国からの旅行者らに対し新たに厳しい入国制限を導入する方針を示したことを受けたもの。ロウハ二大統領は、トランプ大統領が打ち出したビザ発給停止については直接触れなかったが、2015年に欧米など6か国と核問題の包括解決に向けた枠組みに合意して以降、イランは外国人旅行者に「門戸を開いている」と語った。
トランプ氏はイラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン国籍の移民や旅行者に対し、ビザの発給を最低90日間停止する方針を示している。またこれらの国が、米国へ入国しようとしている個人に関する広範な情報を提供しなかった場合には、ビザ発給停止の期間を延長する可能性も示唆している。米国には100万人を超えるイラン人が住んでおり、多くの家族がこうした事態を深く懸念している。(c)AFP
トランプ氏に「壁造るな」 分断の歴史持つベルリン市長呼び掛け
2017年01月28日 16:51 発信地:ベルリン/ドイツ
http://www.afpbb.com/articles/-/3115798
【1月28日 AFP】かつて壁によって長らく街が分断されていたドイツの首都ベルリン(Berlin)の市長が27日、メキシコとの国境に巨大な壁を建設しようとしている米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領に対し「壁を造ってはならない」との助言を送った。
トランプ氏は今週、大統領選での公約通り、全長約3200キロに及ぶメキシコとの国境に設置する壁の設計と建設を開始するよう高官らに指示した。
これに対して、東西冷戦(Cold War)時代の1961〜1989年まで「ベルリンの壁(Berlin Wall)」によって分断された歴史を持つ同市のミヒャエル・ミュラー(Michael Mueller)市長は、「1つの国が新たな壁を築こうと計画しているのを傍観することはできない」との考えを声明で発表。
社会民主党(SPD)のミュラー市長は冷戦時代の欧州の「鉄のカーテン(Iron Curtain)」による分断にも触れ、「私たちベルリン市民ほど、大陸全体が鉄条網とコンクリート(の壁)で分断されることでどれだけの苦しみがもたらされるかを知っている者はいない」と主張し、21世紀に入った今、「私たちが自由を得たことについて多大な恩がある米国の人々に私たちの歴史的経験が無視されるのであれば、それを受け入れることなど到底できない」と述べている。
さらに同市長は朝鮮半島やキプロス島の分断を例に挙げ、「こうした孤立と排除の誤った道をたどるべきではない」とトランプ氏に呼び掛け、1987年にベルリンの壁付近で当時の米大統領ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)氏がソ連大統領だったミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)氏に対して「この壁を取り壊せ!」と要請する有名な演説を行ったことを引き合いに出し、「親愛なる大統領、この壁を造ってはならない!」とメッセージを送っている。(c)AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3115798
【1月28日 AFP】かつて壁によって長らく街が分断されていたドイツの首都ベルリン(Berlin)の市長が27日、メキシコとの国境に巨大な壁を建設しようとしている米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領に対し「壁を造ってはならない」との助言を送った。
トランプ氏は今週、大統領選での公約通り、全長約3200キロに及ぶメキシコとの国境に設置する壁の設計と建設を開始するよう高官らに指示した。
これに対して、東西冷戦(Cold War)時代の1961〜1989年まで「ベルリンの壁(Berlin Wall)」によって分断された歴史を持つ同市のミヒャエル・ミュラー(Michael Mueller)市長は、「1つの国が新たな壁を築こうと計画しているのを傍観することはできない」との考えを声明で発表。
社会民主党(SPD)のミュラー市長は冷戦時代の欧州の「鉄のカーテン(Iron Curtain)」による分断にも触れ、「私たちベルリン市民ほど、大陸全体が鉄条網とコンクリート(の壁)で分断されることでどれだけの苦しみがもたらされるかを知っている者はいない」と主張し、21世紀に入った今、「私たちが自由を得たことについて多大な恩がある米国の人々に私たちの歴史的経験が無視されるのであれば、それを受け入れることなど到底できない」と述べている。
さらに同市長は朝鮮半島やキプロス島の分断を例に挙げ、「こうした孤立と排除の誤った道をたどるべきではない」とトランプ氏に呼び掛け、1987年にベルリンの壁付近で当時の米大統領ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)氏がソ連大統領だったミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)氏に対して「この壁を取り壊せ!」と要請する有名な演説を行ったことを引き合いに出し、「親愛なる大統領、この壁を造ってはならない!」とメッセージを送っている。(c)AFP