落葉松亭日記

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サウジ石油施設が空爆さる

2019年09月18日 | 世相
16日、サウジアラビアの世界最大石油処理施設が空爆されたという。
イラン、イラクか、あるいはイエメンか、誰が関与しているのか判っていない。
アメリカはシェールガスが発見され、今や世界最大の産油国で、必要なら備蓄放出とアナウンスし、価格上昇が抑制されたという。
近辺のガソリンは130〜140だが、また値上がりするのだろうか。
サウジ空爆、「イランが中東揺るがしている」=NATO事務総長 2019年09月17日
https://www.bbc.com/japanese/49723741

写真: Image caption ドローン攻撃を受け炎上する、サウジアラビアの石油関連施設

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は16日、サウジアラビアの世界最大の石油処理施設が空爆されたことについて、地域の緊張が高まることを「非常に懸念している」と述べ、イランを責めた。
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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル 第391号(9月18日号)
http://melma.com/backnumber_190875/

*サウジは、もつか?それが問題だ。

 14日、サウジアラビアの石油施設が空爆され、サウジ全体の原油生産量が半減するという事態となった。サウジは世界有数の原油生産国であり、たちまち石油価格は高騰した。しかし本当の問題は石油価格ではなく、サウジの防衛体制がかくも脆弱であった点だ。
 サウジの戦略的価値は、1970年代の石油ショック以来、石油にあると信じられてきたが、米国でシェールオイル技術が開発され、米国が世界一の原油生産国に躍り出た今日、もはやサウジの戦略的価値は石油ではない。
 ビジネスマンであるトランプ大統領の目から見れば、サウジを含む中東の産油国などは、もはや米軍を派遣して保護する戦略的価値を見出せない無用の地に過ぎない。国防長官のマチスや補佐官のボルトンが政権を去ったのも、トランプの冷徹な中東切り捨てへの反発からだったろう。

   サウジに石油が発見されたのは1930年代だが、それ以前から時の大英帝国はアラビア半島に注目していた。その訳はエジプトとアラビア半島の間にあるスエズ運河を保護するためだった。
 大英帝国は、その為に第1次世界大戦後、アラビア半島にサウド家の王国を作った。だからサウド家のアラビア、すなわちサウジアラビアが建国されたのだ。今ではサウド王家など偉そうに呼ぶけれど、当時はアラビア半島に、たむろしていた200以上の部族の一つに過ぎなかった。

 つまり強引に砂漠に造られた人工国家、文字通り砂上の楼閣と呼ぶにふさわしい脆弱さは、昔も今も変わらず、大英帝国の崩壊後は米国が保護し、最新兵器を供与して国軍の育成に努めてきた筈だったが、何と正体不明の敵に攻撃されただけで唯一の産業である石油生産が壊滅的打撃を受ける有様だ。
 このまま、米国が保護の手を緩め続ければ、サウジアラビアはいずれ崩壊するだろう。スエズ運河はテロリストの手に渡り、ヨーロッパとアジアを結ぶ大動脈は切断されることになる。
動物の大動脈が切断されれば、必ず死に至る。ユーラシア大陸も同様の運命が待っていよう。

軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
動画配信中:「戦争の常識」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1494517092
上記動画のテキスト本
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265

動画配信中:「地政学入門」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1475838508
上記動画のテキスト本
「領土の常識」(角川新書)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089

動画配信中:「地図で見る第二次世界大戦」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1441391428
上記動画のテキスト本
文庫「図解大づかみ第二次世界大戦」
http://www.kadokawa.co.jp/product/321502000376/

動画配信中:「現代戦闘機ファイル」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1411697197
上記動画のテキスト本「イラスト図解 戦闘機」
http://www.tg-net.co.jp/item/4528019388.html

動画配信中「よくわかる!ミサイル白書」第1回無料
http://www.nicovideo.jp/watch/1383640409
上記動画のテキスト本「超図解でよくわかる!現代のミサイル」
http://www.tg-net.co.jp/item/486298102X.html?isAZ=true
2017年12月、韓国で韓国語訳が出版。
その他の著書:
「国防の常識」(角川新書)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)