しかし、岩手県の民謡として、一ノ関(旧仙台藩)が発祥の地のようである。めでたいときに歌われてきたが、元を正せば、伊達政宗の凱旋を願う出陣歌のようである。「さぁさぁ謡え!」といったからではないと思うが、真偽のほどはよく分からない。古語でさんさという意味は歌謡のはやし言葉である。「ささ」が「さんさ」になったようで、「栄えよ」という意の呪術的な褒め言葉に使われていたと古語辞典にはある。
また、さんさ時雨は男女の情愛を謡ったことが祝い唄となったようで、結婚式などにも披露されている。さんさの意味も栄えよという意味が込められているのかも知れない。
さんさ踊りについては、前稿で私見を述べさせて貰ったが、盆踊りとしての位置づけは謡われている歌詞にその意味が含まれていると考えられる。「♪盆の16日正月から待ちた待ちた16日今夜ばかり♪」古くはもっと素朴な節回しであり、テンポも現在よりユッタリとしていたことであろう。
時期的には旧暦の盂蘭盆会前に東北の三大祭りと歩調を合わせており、先祖に対し哀悼の意が含まれていたのであろう。イベント化し、観光の一環となっている今を、遡及する気はさらさらないが、何故か場違いな太鼓のリズムといい、華やかに踊る姿が、無味に感じるのは思い過ごしであろうか、踊りの輪に入り、櫓を中心にして、盆踊りの雰囲気に溶け込んでいくことが出来ない思いは拭えない。(このシリーズ最終回です)