今日の朝刊第一面に取り上げられた政府は秋の臨時国会に現行法の改正案を提出予定である。そのポイントは非正規と正規社員との賃金格差を設けている企業に対し、熟練度を非正規社員に設けるというものである。
現行法制に無い熟練度は業務に対する習熟度、技能、勤続年数というファクターを考慮することになるが、今まででは一律で決められていた非正規社員の賃金が、制度によってより細分化されるため、非正規の中での格付けが行われることになり、格差が生じ、より年功序列制に近づくという逆転現象が起こり得るのである。そうなれば、本来、目指す格差の解消とは逆行することにならないであろうか心配である。
正規においても従来から熟練度や資格、貢献度等をファクターにすることは、賃金決定のプロセスを複雑化しているることにつながっていた。これを非正規まで拡大すれば、納得がいく相対的な指標作りが、新たな判断基準として作られなければならなくなる。
在職当時、賞与の決定の中に、勤勉手当なるものがあった。組織の末端では中央から各施設ごとの原資が職員数掛ける単価の総額で計算され、一括配分される。職員は年次有給休暇以外に早退・遅刻、欠勤、病欠等で職務に従事できない日もあるため、勤務時間が異なってくる。そこで差額が生じ、差額の処理は、安易とはいわないまでも、貢献度で職員へ配分される。一定期間ごとの貢献度とは何によるかというと、貢献度の指標として、出勤率が関係してくる。職員に納得がいく、納得しないまでも他の具体的な使用は見つからないため、大多数の職員の合意が得られやすい指標が、取り入れられたもので、事務方にも計算しやすとされていた。
今回の同一労働・同一賃金の裏には、賃金に回される金額が一定(パイが変わらない)ならば、正規・非正規に配分する基準をどのように差がないようにするかという問題に発展する。つまり、正規が得ている賃金に手を付けなければならないが、正規の納得は難しいだろう。そこで登場した熟練度なるものが曲者である。前述した、納得性と関係してくる。わざわざ判断指標が複雑化する熟練度を導入したとしても、当然ながら、格差の縮小にはつながらず、寧ろ格差が拡大する。(次回へ続きます)