多摩川で稚アユの遡上が見られます。
中流域や上流域での稚アユの放流についての報道があったが、本日、多摩川の中流域にあるさらし場で稚アユの遡上が見られた。コサギの数が20羽を超え、中サギ、大サギ、アオサギが混じる。しばらくぶりの勢ぞろいであった。どういうわけか、この時期活発にエサ取りを行うコアジサシの姿が見られない。早朝には数羽見ることができたが次第に数が減り、全く見ない状況が続いた。知り合いのカメラマンとの話では、今年は雛の誕生を見ることができないかもしれないということであった。
コサギのエサ取りを見ていると中には効率的に遡上の稚アユを上手に捕る個体がいる。稚アユは15cmの段差が登れずにたまり場で回遊していて、そこをコサギが陣取り、手あたり次第捕るのである。体長は5cmぐらいに成長した稚アユであるが、数を多く捉えれば満腹になる。
これも自然のサイクルであり、産卵する上流域にたどる前には相当数野鳥の餌になってしまう。野鳥ばかりではなく、投網の解禁はまだ早いが、釣り客も影響しないとは思うが、カワウや亀なども餌としているので個体数の減少は放流しても追いつかないと思われる。水質がきれいになったとの話もあるが、生物の保護をどこまで行うかなど総合的な判断が必要と思われるが、人間の意図どおりに個体数を確保できるか甚だ疑問である。
かつて流域に隣接する工場といえば、環境規制が緩やかであったため、多摩川へ工場排水を放流していた。時計工場であったジェコー、日本板硝子、玉川製紙工場 鬼頭製作所、多摩川精機、帝国科学工場等は住宅地に変わり、その影響もあるが、河川敷が整備され、一見きれいに整備されても、樹木の伐採、道路のアスファルト化、農地の宅地化等自然の破壊は進んでいて、都市部に人口集中するのは制限できず、かえって、地方の自然が復活することになる。そうはいっても過疎化が続けば、自治体の税収も減り、手が入らない山野や高齢化で働き手を無くした放棄地が増えている。このバランスは難しい課題となっているが、どちらに転んでも、河川管理は洪水による破壊を避けながら、自然といかに共存させるのか悩ましい話でもある。
過去には戻れない宿命を持つ河川管理であり、ゲリラ豪雨の発生や、堤防の老朽化が常総市で起こった堤防決壊につながり洪水によって地域が水没し、多くの家屋が流された。多摩川の宿河原堰も60数年前に決壊したこともある。対岸の狛江では新築の住宅が数軒流された。再び起こらないように祈るばかりであるが、環境も変化し続けている。