天候がめまぐるしく変わる。体調管理が難しい時期でもある。運動にはこまめに水分を取ることが推奨されて久しい。運動によって身体から発散する水分を補給するということは理にかなっていると思われるが、汗や尿となって体外へ排出される水分は、単体の水ばかりではなく、塩分やミネラル等も併せて発散される。運動量に見合う水分量といういい方はそれでよいのかと思うことがある。ただ水を飲むのではなく、バランスが取れる成分を含んだ、例えばポカリスエットなどの摂取を行うべきであろう。
身体が欲する水分量を制限することは、運動とはあまり関係なく、ふだんから我慢を強いられた時代があった。子供の頃から剣道を続けていたが、実際に剣道着から汗が噴出し、剣道着を絞れば汗が多量に出た。しかし、水分を補給せよなどといわれたことはなかった。マラソンにおいても同様で、真夏の炎天下での運動は精神を鍛え、熱中症などという言葉は全くなく、忍耐が足りない、我慢が出来ないといわれ、倒れたとしても、熱射病で片づけられた。「心頭滅却すれば火もまた涼し」などの言い方がされたものであった。
それが最近全く反対のことが推奨されている。今までの運動は水を取ることを禁止までしていたのに、いつからか記憶はないが、水分補給を天気予報士までがいう時代になった。これは青天の霹靂である。
確かに炎天下での朝礼は、何人かが倒れ、保健室に運ばれたことは記憶にある。小中学校が冷房が効く施設ではなかったためか、貧しさの中では炎天下に耐える教育が優先された時代背景があるので、そのことを問題とする気はないが、せっかく水分補給をいうのであれば、身体の不足した水分量を簡単に測定でき、科学的な管理の方向は何故行われていないのか不思議でならない。
一方では、水を飲みすぎ、過水分摂取症(水中毒)がある。大量に水分を摂取するため、血液濃度が低下し、必要な成分、特に、ナトリウムが欠乏し、脳の機能を低下させ、幻聴や、妄想を起こす精神病である。この病気は簡単には治らない一種の水依存症である。この病気の危険性についてももっとはっきりと周知させる必要があろう。
分かっているようで分からない話の一つであるが、安易に水分補給を力説することの前に、現在行われていない、水分補給がもたらすメリット、デメリットについて、科学的な見地からデータを示し、調整方法等の学習する機会を作るべきでは無かろうか。