平成28年7月1日
NHKスペシャル驚異の宇宙人体~遺伝子・DNA~、命を刻む時計の秘密、老化と死の設計図。このテーマで、林講師の最終回であった。人間の生誕から死まで、バックで活躍する遺伝子、その世界を知ることができ、生命の不思議さが偶然ではないルールによって展開していることへの理解ができるようになったと感じた。細胞レベルでの現在分かっていることを、アニメーションを使った撮影は、ご苦労されたかと思うが、こうして解説付きで、お話を聞くとより深くこのテーマの意義を感じることができた。
誰しも、偶然にこの世に生を受け、人間として死に至るまでの細胞や遺伝子のミクロレベルから、現象を考えることができたのは大変勉強になった。しかし、理論的な裏付けのもとで、作られて動画は、現実とは異なり、誇張され、本当のところは疑わしいこともあるが、論理的な展開はそう間違ってはいないのであろう。
生命の不思議さは、未だ解明できていない免疫機能や、細胞死、老化現象、遺伝子組み換え、永遠の生命の可能性、死後の世界等、むしろ人間が踏み込んではならない世界もあり、簡単に結論を導くことは不可能に近く、むしろしてはいけないことなのかもしれない。今回のテーマはそこをネグッて、ドラマ仕立ての様相もあるが、未知な分野であることには変わりはない。
今後、科学技術の進展によって、遺伝子組み換えが人体へも及ぶことが可能となれば、または、IPS細胞等、再生技術が可能となれば、120年という寿命、60回の細胞再生が、120回となり、200歳ぐらいまでの生存が可能となる可能性もないわけではない。
今回の重要なポイントは、人間が長い歴史の中で、勝ち取った、または選択したことは、生まれ変わるサイクルを選択したのであり、その結果、死という現象が細胞レベルで組み込まれているということにある。それを避けることはできない。その代わりに得たのは、世代の交代時に、少しずつではあるが、環境に適合した人間を新たに創出するという営みである。このことは自分の意思とは必ずしも同じではないが、遺伝による肉体改造が行われているのであり、通常の生物は子育てが終わればすぐに死を迎えるが、人間は、子の成長を長い期間見守る能力を獲得している。
しかし、暴飲暴食等による体内変化は死期を早めることはわかっていて、それを避ければ寿命が延びることはできても、現時点では、死を回避できない現実があるのも事実である。