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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

海老錠

2016年07月15日 00時00分01秒 | 紹介

 奈良の飛鳥山の池の跡で発見されたという日本最古の鍵は、海老錠とのことで、時代をさかのぼれば7世紀後半、今から1400年も前である。このころには中国から渡来した鍵があるようで、穀物倉庫や、宝物殿などにはすでに錠前がつけられていた。それには理由があったことであるが、推測すれば、誰かから盗難されないように考えて着けられたのであろう。

 

 そこには身分制度があり、貧富の差があったと思われるし、たとえ、貧富の差がなくても、盗難があるとすれば、現代とさほど変わらないのかもしれない。鍵は大変奥深いものがあり、非常に人間的である。つまり、鍵をかける。鍵を開けるなど人間同士の知恵比べがあったということで、開ける側、かける側、それぞれに知恵を駆使するというところがゲーム心を掻き立てる。

 

 海老錠は形が海老に似ているからといえるが、大変合理的な鍵である。本体と施錠する部分、鍵を開ける部分の3つから構成されていて、施錠する部分の原理は、バネ機能をうまく利用しているといえる。バネは、通常開いていて、閉じた形で、穴にさしこむと、穴を通過すれば、バネの力で開くため、差し込んだばねは、差し込んだ穴に合うようにすぼめなければ、穴から抜くことができない。開いたバネをすぼめるために利用するのが、合いかぎである。

 

 今回発見された海老錠は、心棒に二枚の板状のバネが開いた状態で取り付けられていて、開いた状態をすぼめるための治具というか、合鍵になるのであるが、反対方向から差し込んで、開いたバネをすぼめ、穴からばね部分を引き抜く。文章にすれば理解しにくいと思うが、要はばねの力で、狭い穴の部分もばねをすぼめれば通り抜けることができるという単純な原理である。

 

 しかも、正倉院の宝物殿等に利用されていて、この原理は今でも実用可能である。鍵は、2枚のバネをすぼますことができる形状にしておけば使えるので、当時の材料で硬く、容易には切断できない鉄が利用されたのである。舟形の施錠も同様な原理であり、バネをすぼませるものがあれば簡単に解錠できる。これが7世紀後半にはわが国で使われ始めたという歴史には驚く限りである。

 

 鍵に似た機能に知恵の輪がある。これも理屈を知れば簡単に解くことができるが、簡単に解けないところに人をだますカギに通じるところがあり、この世界も大変興味を注がれ、奥が深い世界である。