大分の名物料理といえばふぐ料理であろう。ふぐセリ(袋セリ)で有名な南風泊(はやどまり)市場がある下関もふぐ料理は有名であるが、大分でもふぐ料理が食べられる。割烹で供される高額の料理として滅多にありつけないが、意外と大分・別府がふぐの消費地であることは知られていない。既に店は閉じられているが、宴会といえば市内の都町にあった共楽亭と春日亭であった。どちらもふぐ料理が出されたが、ひれ酒を飲み、ふぐ料理に舌鼓を打ったものである。共楽亭は150年続いた老舗割烹であった。このような老舗が姿を消してしまうのは、大変残念なことである。
一方、春日亭はバリトン歌手で有名であった立川澄人の生まれ育った家と聞いていたが、彼の姉と称する方が、自宅近所の精肉店を開いていた。殆ど話をすることもなかったが、どのような生き様であったのか興味をそそるところである。すでに他界していると思われるが精肉店はもう無い。
ふぐで思い出したが、S職員に連れて行って貰った都町のバーで「女大学」というおもしろいところがあった。
ホステスにふぐに似た子がおり、直ぐに膨れていた。この大学には卒業はないと店のママさんが言っていたが、出席が悪いと落第があり、補講のためにまた通うといった愉快な店であった。在職中は結局卒業できず、女大学は卒業がないので、この道を極めることは難しいと一人合点をし、まあ良しとした。数年前に近くに行ってみたが、路地裏の小さな店は既に形もなく、大きなビルが建っていた。
速見郡日出町(ひじまち)に的山荘(てきざんそう)という城下カレイのコース料理を楽しめる老舗の日本料理店があり、海水と真水が混じる杵築城の下の海で捕れるカレイを使っている。刺身、焼き物、吸い物、唐揚げ、煮物と全ての料理にカレイが使われている。ここで造られた的山という日本酒を飲みながら別府湾が一望できる閑静な場所での食事は格別のものであった。
店の案内では、高崎山を築山に見立て別府湾に浮かんでいるような借景を楽しみ、日本庭園としていた。元は杵築市の山香にあった馬上金山で財をなした成清博愛が建てた愛妾の別邸であった。的山とは山を当てるという意味があり、博愛の雅号でもあった。最近、玉川高島屋に日本料理店が開店し、的山という店名が付いているのでおそらくこの的山荘と関係があるのであろう。 一度行ってみたいが、年金生活の身故、贅沢が出来るかどうか懐との相談である。