一番
"ぽたり 土の上に 小さな音が転がり落ちた はてな 何が落ちた”
二番
"ぽたり また聞こえる 雨戸を開けて よくよく見れば あ は は 椿の花”
何気なくふと思い出した遠い昔のこと
昭和21年頃 たしか敗戦の翌年だったと思う
道北のS町に 女学校が出来 私は一年生に転入した
間もなく 空襲に遭い一人ぽっちになられたという音楽の女先生が赴任していらした
ピアノも音楽室もない仮校舎だったが
先生は校舎に寝泊まりしながら 教えて下さった
オルガンを弾き 綺麗な声で初めに教えていただいたのが上記の歌である
題名も覚えていないが メロディだけはハッキリ 口ずさむことができる
よく 東京の良き時代の生活ぶりや 戦中の苦労などを語ってくださったが
波乱万丈のドラマのようなお話だった
生徒にも慕われていたが いつの間にかお辞めになり姿を消してしまった
後で 教師の資格がない 偽の先生だったこと
過去もほとんど作り話だったらしいと知ったが
面白かったお話と "ぽたり”の歌が今でも心に残っている
皆が生きることに必死だった時代 先生も必死に生きていたのだと思う
その頃は椿の花も見たこともなく 雨戸も知らなかった