まずは,上級者向けの問題から始めてみましょうか。
次の①~③を日本語に訳してみてください。
①정부의 경제 정책은 말짱 도루묵이었다.
②열심히 공부했지만 시험 결과는 말짱 도루묵이었다.
③기다리던 운동회가 비로 취소돼 말짱 도루묵이 되었다.
どうですか。今日はこの中に出てくる도루묵にまつわる語源の話をしましょう。最後まで読むとヒントが見つかります。
李朝時代の1636年,中国・清の軍が朝鮮に侵略した병자호란〈丙子胡乱〉のとき,清の軍隊に囲まれた時の王である인조〈仁祖〉は,ソウルの南にある南漢山城に避難して毎日を過ごすことになりました。
ある日の朝食に家来が不思議な魚を差し上げると,王様は「ムッチャうまい魚だな,この魚の名前は何かな?」とお聞きになりました。聞かれた臣下は,当時その魚が묵と呼ばれていたので「ムクと言います」と答えました。
王様は「ムクねえ,あまりいい名前じゃないなぁ。こんなにうまくて形もいい魚をムクとはね。きょうからこれを은어〈銀魚〉と呼びなさい」と臣下に命令しました。銀白色の腹を持つ魚だったのでそう名付けられたのです。このようにして王様の意によって묵という名前の魚は,違う名前に変えられてしまいました。
やがて清の国との和解によって丙子胡乱は終わり,再びお城に帰ってきて国事を司るようになった王様は,ある日,急に避難地の南漢山城で食べたその魚の味を思い出したのです。そして例の은어を出すようにと命令したのです。しかし王様の命で食卓に出されたその은어が避難地で食べたその味と全然違う味だったのです。
こういうことは,よくあることで,昔食べた味というのは,そのころの環境などに左右されて,美化されやすいのです。この王様の宮廷の豪華な食事に慣れた舌は,避難先の貧しい食卓の中で食べた味を忘れさせてしまったのです。
「これが,本当にその은어という魚だな」「はい,間違いございません」「前に은어と言った,その魚に違いないかな」「はい,確かにそうでございます」「しかし,どうして,こんなにまずいのかな。前に山城で食べたあの味とは全然違う」……と言うようなやりとりがあったのだと思います。
王様は「それにしても은어という名前は,味から見ても適当ではない。元の묵という名前に戻しなさい」とまたまた命じました。こうしてこの魚は「元のムク」と言う意味の도로묵と呼ばれるようになりました。今では도루묵という名前で標準語になっています。この도루묵は,秋田特産の「しょっつる」という魚醤油の原料にもなっているハタハタです。全長約25センチで,背は黄褐色で黒褐色の斑紋があり,腹は銀白色をしています。昔は大衆魚でしたが,最近は漁獲高が減っています。
MEMO
・말짱 도루묵이다;無駄骨だ
・말짱 도루묵이 되다;元の木阿弥になる,水の泡になる,無駄骨を折る
[類]도로 아미타불,헛수고하다,헛고생하다,물거품이 되다
答え
①政府の経済政策は,水泡に帰した。
②一生懸命に勉強したが,試験の結果はだめだった。
③待ちに待った運動会が雨で中止になり,水泡に帰した。
돌고래(イルカ)」や「돌붕어(石鯰)」などのように,「돌(石)」が「石」の意味ではなく,「돌(石)」の性質から生まれた「ありふれていて質が落ちる」という比喩的な意味を持つこともあります。この場合の「돌-」は接頭辞化したものです。
「돌고래」は「참고래(本クジラ)」に比べて体格が小さく取るに足らず,「돌붕어」は「참붕어(本鯰)」に比べて醜くて上品でないため,「ありふれていて質が落ちる」という意味の接頭辞「돌-」を組み合わせて命名することができます。
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