新橋の駅前のニュー新橋ビル4Fのとんかつ屋・明石(あかいし)のカツサンドです。お気に入りのひと品で,頼めばおみやげに包んでくれます。この雑居ビルは下の階は中国人のマッサージ屋さんなどがひしめいているのですが4階は閑散としていて,え,こんな所に店があったの?と思うほどです。きょうは,この「とんかつ」についてです。
1970年代後半の韓国は,ソウルといえども街にはまだ物乞いの少年がたくさんいて,夜になっても街灯もぽつりぽつりとしか灯されず薄暗い街でした。そんな中,友人が와룔동(秘苑の前)にしゃれた경양식〈輕洋食〉の店があるからといって,連れて行ってくれたことがあります。当時はオムライスやトンカツ,ハンバーグ,スパゲッティーなどを一絡げにして경양식〈輕洋食〉と呼んでいて,庶民が食べられる「洋食」といったら,この경양식でした。
さて,ここでいうカタカナ表記のトンカツは,どちらかというと昔の日本でもそうだったように紙のように薄い豚肉に衣をまぶして揚げたものにデミグラスソースをかけたものです。いまでは韓国でも田舎に行かなければこんな風情のあるトンカツは食べられないのではないでしょうか。第一,경양식という言葉自体がなくなってしまったようです。
80年代の初めになりますと,分厚い肉とキャベツ大盛りの「日式とんかつ」の店が登場します。私も留学時代には,まだ珍しかった「日本式のとんかつ」を出してくれると評判だった「明洞とんかつ」に何度も通った覚えがあります。今ではさぼてんが韓国進出を果たしていますね。
さて,この「とんかつ」ですが,韓国人は돈까스,돈까스と言っているようですが,本当は돈가스と表記するのが正しいようです。「明洞とんかつ」の真っ赤な看板も명동돈가스表記されています。
国立国語院の辞書には (←<일>ton[豚]<일>kasu【kasu
国立国語院ではさらに,日本語を排除して돼지고기 너비 튀김,돼지고기 튀김のように言いなさいと言っているのです,それは無理でしょう。