『チョコレート・ファイター』(08)で世界中に衝撃を与えた新星マーシャルアーツ・アクトレス、
ジージャ・ヤーニンの最新作
『Raging Phoenix』(09)をようやく鑑賞することができた。
童顔で小柄ながら危険度の高いアクションを披露して人気を勝ち得た彼女の主演第2作目というので期待は大きかった。楽しみにしている反面、不安も大きいのもまた事実。
前作と同じようなキャラクターだったらどうしよう?そんな不安も映画が始まったら一気に吹っ飛んでしまった。
内容はジージャとダンシング・マーシャルアーツ(TRICKZというのだそうだ)の使い手である訳ありの男と共に、女性を拉致して強制的に売春させる闇組織と対決する、というもので、開巻当初はジージャは酒におぼれる自堕落な女性であったが、男に格闘術を仕込まれるにつれとんでもないポテンシャルを発揮するという設定になっている。
とにかく今回のジージャは最高である。前作では自閉症という設定上感情を表に出すことができなかったが、
泣き、笑い、おどけ、怒り、恐れおののく…といったリアルな人間的感情が表現されていて、観客に感情移入させやすくなっているのだ。それ故闇組織の女ボスや用心棒たちとの対決は壮絶である。
この女ボスも久々に《強くて悪い》キャラで、ラスト近くに登場し、ステージを変え何度もジージャ(と仲間の男)に戦いを挑んでくるという力の入れよう。最近の映画では悪党の出し方に問題がある作品が多々ある中、今作の女ボスはお見事でした。
アクションでは今回はHIP-HOP系のダンススタイルにマーシャルアーツ的動作を加えたTRICKZをベースに《パンナー印》の肘・膝を使ったムエタイ要素を入れた斬新なもの(っていうか最近のタイ・アクション映画ってこんな振り付け多いよね?)で、ジージャの身体の柔軟さを生かした見事なものになっている。
今回もアクション監督は我等がパンナー・リットクライ師匠なので、高所でのバランス芸や落下(下は砂浜だけど痛そう)、格闘時にはモロに顔面を蹴られるといった師匠のやりたい放題な演出で可哀想にも思えてくる。これを観て、かつて香港でムーン・リーやシベール・フー、シンシア・ラズロックといった格闘系アクトレスが80年代末期~90年代初頭にかけて命を張って演じていた数多くの女性アクション映画を思い出してしまうのは私だけではないはず?やはりパンナー師匠は80年代香港アクション映画(成家班や洪家班系スタイル)の正統継承者なのだ。
最後に一言。ジージャにはもう、
普通のマーシャルアーツ・スタイルの格闘アクションでいいんじゃないか?と思う。確かに肘・膝を使ったアクションはパンナー師匠の、そしてタイらしさを表現する《記号》なのかもしれないけど、十分堪能しましたから次回は違った振り付けや動作で我々を驚かしてください。そしてジージャの次作はツンデレ系のコメディー・アクションものが観たいです、以上。