HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
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女子プロレス小説書くなら、コレ読んどけっ! 最終回

2010年09月28日 | 女子プロレス
 さて《読書の秋》記念特集(えっ?)である、女子プロレス小説執筆推進課題図書紹介コーナーもいよいよ最終回。ずいぶん短いなぁと思うでしょ?イヤ、本当にコレというのがないんだよねぇ…プロレス小説自体もなんだけど。


『レッスルエンジェルス』(梅木うめ吉・著 コアマガジン 1995年)

                      

 
やっぱコレが決定版でしょ。同名PCゲームを題材としたメディアミックス小説でありながら、肝である女子プロレスの世界がしっかりと書き込まれており、プロレスファンから見ても十分に納得のいく出来だった。

 ゲームの登場人物の一人である菊池理宇(きくち りう)をストーリーの中心に添え、先輩選手との師弟関係や、同期との出世レース、そして団体内での軍団抗争を経て彼女がジュニアの世界チャンピオンになるまでを、これでもか!と詰め込んだ腹満杯の内容だ。

 こういうゲーム小説を書く場合、大概主人公というのはオリジナルに則ったものがほとんどであるが、この作品は人気が高いが主人公ではない菊池が主人公となった事で、『レッスル~』の世界観、主要キャラクターを(あくまでも)客観的に描写できていてまずまず成功しているし、軸である《女子プロレス》からこれっぽっちもズレていないというのもまた良い。これがもしマイティ祐希子とビューティー市ヶ谷を中心に描いていたら、小説もまた違ったものになっていただろう。


 もしどこかで読む機会があれば、「ゲーム小説だから…」と食わず嫌いをしないで是非一読していただきたい一冊である。

女子プロレス小説書くなら、コレ読んどけっ! 其の弐

2010年09月23日 | 女子プロレス

 今回は前の記事で紹介した『慟哭のリング』だけでなく、様々な女子プロレスを題材にした小説やマンガに多大なる影響を与えた《歴史的名著》を紹介!


『プロレス少女伝説』(井田真木子・著 かのう書房 1990年)

                      


 女子プロレスが多団体時代を迎え、客層もローティーン少女たちからコアな男性プロレスファンたちへと変革した、90年代を彩ったいわゆる《女子プロレスブーム》が始まらんとする以前に発表されたルポタージュで、この(執筆された)時点では全日本女子には《大スター》と呼べる選手は皆無で、ヒールのトップであるブル中野がたった一人で団体を支え、その後の対抗戦で一躍スターとなった北斗晶などはまだ格的には彼女に比べ二枚も三枚も低かった時代だ。

 そんな《冬の時代》に、一般スポーツファンからは認知されていない《女子プロレス》という題材で、作品中で扱う選手も、柔道出身で先輩選手とのシュートマッチで名を上げた神取忍、中日混血の天田麗文、日本の女子プロレス団体に《参戦》ではなく《所属》したアメリカ人レスラー、《メドゥーサ》ことデブラ・ミッシェリーという、華やかなスター選手ばかりを見ていたらまず目に付く事はない選手を採り上げて、特殊な生活環境下で育ち、それぞれの《理由》でプロレスラーという《特殊》な職業に就いた女性たちを見事に描いたヒューマンドキュメンタリーだ。

 冒頭に書いたように、このルポタージュは後に発表される女子プロレスを題材とした創作物に多大なる影響を与えた。『慟哭のリング』の主人公・紅華は紛れもなく天田麗文その人だし(かなりドラマチックに脚色されてはいるが)、神取忍に至っては彼女が団体対抗戦により一般知名度が高くなる前に描かれた長短ある女子プロレスマンガに登場するライバル像(男勝りでセメントがめちゃめちゃ強い)にエピソードを含めかなりパクられている。それだけ彼女が当時の女子プロレスに於いて異質の存在だったか、そしてこの本で《最強幻想》を抱かせるほどに《魅力的》に描かれていたかという事だ。
 
 ワタクシもこの本を読んで《神取忍・女子プロ最強》という幻想を抱いていた一人なので、団体対抗戦に於ける対・北斗晶戦以外その真価を見せられないまま今もプロレスを続けている神取に「なんだかなぁ…」という気持ちを持たずにはいられない。せめてシングルで長与千種と対戦していてくれればなぁ…

 (書影は1993年に文春文庫から発売された時のもの)


女子プロレス小説書くなら、コレ読んどけっ! 其の壱

2010年09月22日 | 女子プロレス

 mixiにてワタクシが参加しているコミュニティー『レッスルエンジェルスLM(ラブミッション)』に於いて現在公開中のSSを読んでいて、「これなら俺(または私)でもやれるんじゃないか!」と思った方はいませんか?でも多少《小説を書く》という行為を経験された方でも、この『レッスルエンジェルス』の基本である《女子プロレス》を題材にして物語を一本作り上げるのはヤッパリ大変だと思います、いや実際大変ですっ!

 そこで不肖ワタクシめが「コレ読んどけば話作るのに大丈夫だろう」というプロレス関係の書籍を紹介しましょう。ただひとつ注意点がありまして…殆どが絶版なんですよ。「どうしても読みたいっ!」と思われたヒトは再販を待つか、図書館や古本屋、またはオークションを利用して読んでみて下さい。


 『慟哭のリング』(葉青・著 読売新聞社 1998年)

                       

 中国残留日本人の母を持つ主人公・紅華が母の母国・日本に渡り、女子プロレスに入門、そして様々なライバルたちと戦いの末に日本女子プロレス界の頂点へとたどり着くまでを描いた、タダでさえ数少ない《女子プロレス小説》の中に於いて最高傑作だと個人的は思います。

 主人公である紅華(リングネーム:紅龍華)の「選ばれし者の恍惚と不安」がキチンと描かれている、という点がとても良く、ヘタすればアニメ・ゲーム的(今でいえばライトノベル風)になりがちなキャラクターを上手いこと《一般小説》のキャラクターとして留まらせている。また対するライバルたちも、それぞれ重い背景を持ったキャラ設定(プロモーターを父に持つ在日韓国人少女やボートピープル出身の隻腕ベトナム人少女など)がされていて、《痛快スポーツヒロイン》小説を期待するとちょっと「えっ?」と驚いてしまう。

 《女子プロレス》という題材とキャラクターたちを、マンガ的・アニメ的描写で逃げる事なく、堂々と《差別者》の成長物語として描ききった所にこの作品の《価値》があるのです。


 小説のラスト、ママとなった紅華が幼い自分の子供の声援を受けてリングに立つ場面が未だに忘れられなくて、「いつか自分もこんな場面やりたい(書きたい)なぁ」なんて思いながら『レッスル~』の二次創作小説をイソイソと書いている。したがってこの『慟哭のリング』こそが未だに自分の中では《女子プロレス小説》におけるイチバンのバイブルなのですヨ。