『レッスルエンジェルス』(梅木うめ吉・著 コアマガジン 1995年)
やっぱコレが決定版でしょ。同名PCゲームを題材としたメディアミックス小説でありながら、肝である女子プロレスの世界がしっかりと書き込まれており、プロレスファンから見ても十分に納得のいく出来だった。
ゲームの登場人物の一人である菊池理宇(きくち りう)をストーリーの中心に添え、先輩選手との師弟関係や、同期との出世レース、そして団体内での軍団抗争を経て彼女がジュニアの世界チャンピオンになるまでを、これでもか!と詰め込んだ腹満杯の内容だ。
こういうゲーム小説を書く場合、大概主人公というのはオリジナルに則ったものがほとんどであるが、この作品は人気が高いが主人公ではない菊池が主人公となった事で、『レッスル~』の世界観、主要キャラクターを(あくまでも)客観的に描写できていてまずまず成功しているし、軸である《女子プロレス》からこれっぽっちもズレていないというのもまた良い。これがもしマイティ祐希子とビューティー市ヶ谷を中心に描いていたら、小説もまた違ったものになっていただろう。
もしどこかで読む機会があれば、「ゲーム小説だから…」と食わず嫌いをしないで是非一読していただきたい一冊である。