ずいぶん更新を滞らせてしまいまして申し訳ありませんでした。言い訳がましいのですがなかなか腰を落ち着けてブログを書こうと思える環境ではなかったので、ハイ。
今回は久々に映画レビューなんかでご機嫌を伺おうと思い、用意したのはなんと“仮面貴族”ミル・マスカラスの最新作『MIL MASCARAS VS THE AZTEC MUMMY』(07)です。まだ映画作ってたんですね、マスカラス。
ここ数ヶ月の間にとある街で吸血事件が多発していた。有名レスラーであり政府のエージェントであるマスカラスは早速地元警官と調査に乗り出す。事件は古代アステカ遺跡を中心にして起こっており、その遺跡の中には古代アステカ王朝を再興させようと企むカルト集団の手によってによって蘇った邪悪なパワーを持つ古代の吸血鬼がいた。マスカラスの行動に気付いた吸血鬼は彼を亡き者にしようと次々と配下の吸血鬼を送り込むが次々と失敗、ついに吸血鬼はマスカラスの友人である科学者の娘を人質に取って遺跡に誘い込む。果たしてマスカラスの運命は…?
これまで数多くのルチャ映画を観てきたが、この作品は映画としてよく出来ている!というのが素直な感想。超自然的なパワーを持つ敵に腕力で挑み勝っちゃうのはいつものパターンだが、ヒーロー映画としてみればこれ以上痛快なモノもないだろう。さすがはアメリカ映画というべきか、どんなチンケな題材でも「映画」として成立させてしまう手腕には感服だ。
この作品を観て思ったのは「製作者、相当ルチャ映画好きなんだろうな」という事。アステカミイラ、女吸血鬼、と聞けばルチャ映画のお約束。彼らを扱った作品がどれほどあることか。この作品でもマスカラスは、ちゃんと対戦相手に偽装したミイラと闘い、色仕掛けを武器に襲い掛かる女吸血鬼たちと闘った。そして『ROBOT VS THE AZTEC MUMMY』(57)や『THE SHIP OF MONSTERS』(59)(これはルチャ映画じゃないけど)のロボットをイメージさせるデザインの人型ロボットまでも登場となればもうこれは完璧に「ルチャ映画マニア」以外の何者でもない。
過去のルチャ映画では問題点だったアクションシーンも今作ではバッチリ改善されていた。
かつてはスピード感もなくただ黙々と殴り合っていただけの殺陣もレスラーらしい技(ヘッドシザースやクローズラインなど)がキチンと織り込まれ、パワフルかつスピーディーな物となっていて格段の進化を遂げていたのだ。これも編集や受け手のスタントマンの技量によるものであろう。
ルチャ映画といえば当然ルチャドールが付き物。この作品ではイホ・デル・サントがマスカラスのパートナーとして試合シーンのみ登場する。かつては親父さんの映画に子分役で出演していたのに今では立場が逆…時代の流れを感じますなぁ。
他にもブルー・デモンJrやドスカラス、ニュートロンなどの著名ルチャドールやこの映画限定のインチキ覆面レスラーたちがが顔を見せており、最後の対ミイラ軍団のシーンで華を添えています。みんなマスカラスの一声で集まったんでしょうね。
この作品にはかつてのNWA世界ヘビー級王者であるハーリー・レイスが、マスカラス&サントの試合の解説者という心憎い役で特別出演をしている。マスカラスのオファーなんでしょうか?思い出しますね、レイスVSマスカラスのNWA戦。
というわけで、この『MIL MASCARAS VS.THE AZTEC MUMMY』、近年稀にみる傑作でした…ってそれはルチャ映画ファンからの視点でしょうに。
でもこれぐらいのクオリティーなら日本でもDVDレンタルされていても不思議じゃないと思いますけどね。ただこれを観て「マスカラスの映画、面白いじゃん」と思われても困りますけど。他の作品はこれよりもっとヒドいものばかりですから。過去の作品を何十本も観た後にこの作品を観れば良さがきっとわかりますって。
この間、1991年に開催された第58回アニベリサリオ(創立記念大会)のTV映像がまるまるアップされていてちょっと興奮した。CMLLでは毎年、創立記念日である9月21日の前後週に創立記念大会として総本山アレナ・メヒコでビックマッチが開催される事はルチャファンならば周知の事実であろう。
WWEの『レッスルマニア』のごとく(当然アニベリサリオのほうが歴史は古いが)すべての抗争・遺恨の決着戦がこの大会に行われるのでメイン級のカードのほとんどははタイトル戦やマスカラ戦、カベジェラ戦が占めていてただでさえ熱いメヒコの観客の興奮も高まりっぱなしだ。
収録されている試合はNWAライトヘビー級タイトルマッチのマスカラ・サグラーダVSピラタ・モルガン戦、アニバル、リスマルク、ラヨ・デ・ハリスコJr組VSウニベルソ・ドスミル、マスカラ・アニョ・ドスミル、ニトロン組の6人タッグマッチ、メインがコナンVSペーロ・アグアヨVSシエン・カラスの3wayカベジェラ(髪切り)戦(厳密には3人で行うバトルロイヤルみたいな感じで負け残ったものが髪を切られるというルール)といったラインアップだ。
どの試合も遺恨・因縁絡みのマッチメイクで、たしかこの後にアニバルはM・A・ドスミルにマスクを取られているし、メイン戦なんか三人共々仇敵同士という凄さ。しかし試合内容はどうかと聞かれれば「これは!」というほどのものではない。豪華なカードではあるけども。
ではこの映像の何に価値があるのか!?それはルチャ史における重要な分岐点だからである。
ルチャ史をちょっとでもかじった事のある方ならピンと来ると思うがこの大会の翌年(92年)、EMLLの企画室長だったアントニオ・ペーニャがごっそりとスター選手を引き連れ独立、AAAを旗揚げしたのだ。この映像に登場する選手の大半がもう翌年にはEMLLマットには上がっていないのである。
89年にメキシコシティでのTV放映が解禁となるとEMLLは、フランシスコ・フローレス氏亡き後徐々に力が落ちてきた敵対団体・UWAに大差を付けるために、UWAで活躍する若くて才能ある選手を引き抜き、TV時代に合わせたカラフルで個性的なキャラクターを与え続々と登場させる(現在活躍中のウルティモ・ドラゴンもそのひとり)と同時に、各地のプロモーターたちと協力しタイトル管理組織CMLL(これが現在の呼称となっている)を設立したりとルチャ業界では独走状態であった。その集大成ともいえるのがこの91年度のアニベリサリオだったといえよう。
YOUTUBEのおかげで次々と“お宝映像”が公開されることを切に希望する。そんなわけで海外のマニアの方、ひとつ宜しくお願いします(笑)。
ランセには前回紹介したアームホイップ式の他に、相手のリストを掴んで投げ飛ばすフィンガーホイップ式の二通りがある。
普通にやると何だか地味な技であるがそこはルチャリブレ、むんずと相手のリストをグリップすると、コーナーからロープ上段に駆け上がり腕を大きく広げて視覚的に派手に投げ飛ばし、投げられるほうも大きな弧を描いてマットに叩きつけられるのだ。
●SATO(現・ディック東郷)のフィンガーホイップ。基本に忠実である。
80年代に入るとフィンガーホイップに変化が訪れた。“アカプルコの青い翼”リスマルクがロープ上段で尻でバウンドし、その反動でより大きな放物線を描いて相手を投げ飛ばすという、“ブエロ・アクロバティコ(空中アクロバット)”を開発する。革新的ですらあるこの技は、空中殺法開発に勤しむルチャドールたちに基本技でも見せ方によっては新しい技へと生まれ変われるという事を再認識させたことであろう。
●元祖、リスマルクのブエロ・アクロバティコ。80年代当時は衝撃的だった事だろう。
しばらくはこのリスマルク式が幅を利かせていたが、90年代に突入するとミステル・アギラが尻バウンドの後にひねりを加えた空中回転を付け加え、その結果技の無重力性が増し、さらに視覚的に派手になっていった。
現在のブエロ・アクロバティコはひねり回転を加えたミステル・アギラ式が主流で、空中殺法が売りのテクニコ(正統派)が盛んにこの技を繰り出し観客たちを非現実の世界へと誘っている。
●ミステル・アギラのブエロ・アクロバティコ。より高く、より派手へと進化する。
●レイ・コメタのブエロ・アクロバティコ。上で空中回転するのではなく、前方回転して尻バウンドに入る変化式。
ことルチャに関して週刊ゴングはその内容の濃さが抜群で、最新情報は勿論のことルチャ史や技術面などを学ばせてもらった。そして私が現在持っている知識のほとんどは週刊ゴングからといっても過言ではないだろう。
今回から数回に渡って(多分)やっていく超初級ルチャリブレ講座は専門外の方にルチャの楽しみ方をレクチャーするのが目的だが(偉そうで申し訳ない)自分の為の復習の意味もあるので、ルチャマニアの方には歯がゆい部分もあろうと思うがどうかご勘弁下さい。
ルチャリブレの試合を組み立てる際に最も重要な技といえば「投げ技」が挙げられる。とは言っても一発でフォールを奪うことの出来るスープレックス系の技ではなくアームホイップなどに代表される相手を投げ飛ばす「投げ技」である。
ルチャ用語ではこの一連のムーヴを「ランセ(Lance)」といい、スペイン語で投網を意味する。
ルチャのホイップ技はとにかく多種多様の入り方があり、ルチャドールたちは場面によってその投げ方を変化させる。
たとえば試合の序盤戦ではオーソドックスなアームホイップを互いに打ち合い相手の力量を計ったりし、試合の流れを変えたいときには独特の入り方や回転を加えたホイップ技を出すのだ。決して主役級の技ではないのだが、なくてはならないとても基本的かつ重要な技である。
1990年代に入るとランセの技術に劇的な変化が訪れた。投げる角度や技の入り方に多少の変化はそれまでにはあったが、なんとトップロープから飛びプランチャ系の技に入ると見せかけて相手をホイップするのだ。飛び技とランセの融合である。飛び技とランセの融合技の進化はさらに続き、21世紀に入ると今度は場外の相手へトぺやトルニージョ(旋回式プランチャ)と見せかけてのランセが登場した。大層難易度が高い技に思えるのだが、要はランセの基本がしっかりできていれば、どんな技の掛け合わせも可能、という事であろう。
ミスティコのような身体の小さな選手が使うのならばまだ理解できるのだが、エレ・ア・パークのような大柄な選手までもがこの技術を披露するので驚くばかりである。
伝統的かつ革新的な技術をもつルチャリブレ。満場の観客たちを驚かせるためにルチャドールたちは日々研究と鍛錬をこれからも続けていくに違いない。
●ランセの基本形。ルチャの序盤戦では必ず登場。
●ニンジャ・デ・フィエゴ(ケンドー)とイホ・デル・サントのランセ。試合展開を変えるときにはオリジナリティあふれる投げ方・入り方のランセが登場する。
●90年代に入り登場した飛び技とランセの融合技。TV映えする派手な技を求める時代が要求した技といえる。
●そして融合技はついに場外へと進化した…!いったいこの先どうなるのだろうか?
と、タイトルに書いても、プロレス(ルチャリブレ界隈)に詳しくない御仁には何のことやらサッパリだと思うので整理するとですね…
メキシコCMLLにおいてダントツの人気を誇っていたカナダ出身の女子レスラー(この場合、ルチャドーラと言ったほうが適切かな?)、ダーク・エンジェルことサラ・ストックがこの度アメリカのメジャー団体(一応)であるTNAと契約を結んだ…という事です。
ここのところTNAは女子部門に力を入れており、日本でも活躍していたオーサム・コング(アメージング・コングの名で全女の末期に出てましたよね)を招いて女子部門の中心に据えWWEの女子部門とは異なる世界を築き上げていて、WWEが泥酔客相手の泥レスチックな“色っぽさ”、“華やかさ”をテーマにしているとすれば、TNAはアスリート思考の日本流の女子プロレスを打ち出しているのだ。個人的にはどちらも大好きですが。
ただ、現状としてはオーサム・コング一人勝ちの状態が続いているのでTNAとしては新たなタレントがほしい。アスリート的なレスリングも出来、米国内では無名ながら国際的知名度も高く、(多分ここがポイント)そこそこ美形なダーク・エンジェルに白羽の矢が立ったのも当然といえる。彼女も更なるステップアップ(当然ギャラアップも)を望みアメリカでやっていきたいと考えていたのだろう。TNAと彼女の思惑が一致して今回の件に到ったというわけだ。
ここ近年、米メジャー団体って南米系の市場を狙っていろいろなスペル・エストレージャに接近していますね、ミスティコとかドス・カラスJrなどCMLL系選手ばかり。たいてい土壇場で立ち消えになっちゃいますけどね。レイ・ミステリオのWWEでの成功以来、団体のほうは市場開拓の駒として、選手は金銭面や国際的知名度を狙って双方接近するのだけど、言葉の問題やスタイルの問題などで合意に達するのは難しいようだ。長いアメリカン・プロレスの歴史でメキシカン・レスラーで成功したのは結局ミル・マスカラスとレイ・ミステリオだけなのだ。
日本人選手だってそうでしょ?あれだけ《ポスト・ミステリオ》の本命馬だったウルティモ・ドラゴンも長く定着できなかったし、鈴木健想もそう。そうやって考えると10年以上在籍しているフナキってすごいなぁ。
ダーク・エンジェルの場合はカナダ人で英語も話せるし、スター性も感じられるので期待大だ。ちょっと体が固そうだけど一通りのルチャムーブはできるしスープレックスも大丈夫なので、本来なら日本向けの人材なのだが老舗・全日本女子は今は無く(90年代末の女子プロ全盛期なら間違いなくレギュラー外人でしょう!)、数多くの小団体が乱立している現在、定期的に彼女を呼べる所はないのでしょうがない。アメリカでメキシコでいたとき以上に彼女がビックになる事を期待しましょう!
メキシコの老舗団体・CMLLが産み出した21世紀型スペル・エストレージャ、ミスティコが先日行われた新日本・東京ドーム大会のオープニング・マッチを華やかに彩ったのだ。対戦カードは田口隆祐、プリンス・デヴィットとトリオを組み、相手はメキシコでもタイトルを廻って激しい闘いを繰り広げているアベルノと邪道&外道である。
内容はミスティコの一人舞台で、仲間である田口、デヴィットの個性が完全に消されていた。同じチームにベビーフェイスの大物が一人いると大変だ。まだ田口は独特のヘアスタイルという“個性”がある分まだ救いがあるが、見た目普通のデヴィットは可哀想。終盤に見せた鉄柵越えの急角度トペ・コンヒーロは彼の精一杯の“抵抗”なのかもしれない。
そして彼独自の持ち技(雑誌や動画サイトでおなじみの技)も名刺代わりにドンドン見せてくれて、うがった見方をすればミスティコを日本でも認知させる為のPR的色合いが強い試合である。だから対戦相手はミスティコの動きを十二分に引き出してくれるアベルノ、そしてどんなスタイルにも対応できる“プロレス職人”の邪道&外道で正解なのだ。こういうときヒールって得だよね。ただし、いつもの定番の攻防(対アベルノ)だけでなく、違った面も見たいのでもっと邪道&外道とは絡んでほしかったと正直思う。
何だかんだいってもミスティコのすばらしいムーブの数々を目撃できたのだから新日本には感謝をしなければならない。以前ビザの不手際で来日が流れてしまっただけに尚更だ。IWGPジュニア王座を奪取したタイガーマスクに対戦表明をしたりと日本における地盤固めも行っているようだし、当分は彼からは目が離せない。ただ、新日本が間違ったマッチメークをしなければね(笑)。
相手の力を利用してモルタル(空中回転)を切る。
スワンダイブからのティヘラ(ヘッドシザース・ホイップ)。投げた後に着地するのが凄い!
日本のファンが待ちに待った、ミスティコの必殺技・ミスティカ(旋回式脇固め)。これを見れた東京ドームの観客は幸福者だ !!
ボストンを本拠地に活動する団体なのだが、怪獣&日本プロレスオタクのスタッフが運営してるだけあって、日本怪獣風のコスチュームを着たレスラーたちがミニチュアを敷き詰めたリングでそれこそ往年の特撮番組みたいに戦うというもので、日本でもDVDが販売されているので耳にしたことがあるかもしれない。間違っても週刊プロレスなんかでは扱ってもらえないが。
その怪獣ビッグバトルがこれまた日本プロレス&ルチャ風のファイトスタイルでその筋の人たちに支持されている団体CHIKARAプロが開催したトリオチームのトーナメント・イベント『KING OF TRIO'08』に出場した。他の顔ぶれは皆レスラーって感じの風貌だが(インディー団体ばかりなので身体のほうは?のヒトもいるが) 怪獣ビッグバトルチームは思いっきり違和感ありまくりで、そのギャップがかえって面白い。
CHIKARAプロはルード(悪役)のウルトラマンティス・ブラック、ハイドラ、クロスボーンが出場。巨体のクロスボーンやボス面したウルトラマンティスはいいとして、肉襦袢みたいなボディスーツを着たハイドラはちょっといただけない。肝心の怪獣ビッグバトル側はナマコみたいなウニボウズ、触手がいっぱいのD・W・サイクロトプスⅢ、見た目ポケモンに出てきそうなコール・ミー・ケヴィンが出場した。そして入場の際には怪獣ビッグバトル側のリングアナがセレモニーを行うなどして団体対抗戦の雰囲気をかもし出している。でも、この面子で団体の優劣を決めるのって何かおかしくないか?
試合結果はちゃんと普段からプロレスをしているCHIKARAプロが文句無しの圧勝なのだが、この試合の見所は勝ち負けなどではなくて怪獣ビッグバトル側が自分たちのスタイルを貫き通せるかにあったので(個人的見解)、その点では文句なかったと思う。ウニボウズの毒針を触って痛がるハイドラやクロスボーン、サイクロトプスの触手旋回アタックで吹き飛ばされるCHIKARAのレスラーたち…あぁ、みんないい人たちだなぁ。
ルチャ映画は数多くあれど、一度はお見受けしたいと思っていた作品が今回紹介する作品『La Llave Mortal(必殺技)』(90)だ。昔、週刊ゴングでウルティモ・ドラゴンになる前の浅井嘉浩がチョイ役で出演したという事でチラッと紹介されていたので年季の入ったルチャマニアは覚えている方もいらっしゃるだろう。
厳密に言えば全編通して観たわけではない。毎度お世話になっているYOUTUBEでオイシイ部分と、見せ場のルチャドール対空手家の軍団対抗戦がアップされてたのでそれを観賞したという事なのだが。
話はメキシコ空手界の大物が、コミッショナーを通じてルチャドールに対戦表明し、一旦はルチャ側に拒否されるものの空手家の妨害などにより業を煮やしたルチャリブレ界の大物マスカラスが5対5の軍団対抗戦を提案、これにより無観客の体育館の中ルチャと空手、互いのメンツを賭けた死闘が開始された…というもの。犯罪組織や怪人・怪物と闘うことの多いルチャ映画に比べてすごいマットウな内容である。マスカラス自身が製作を手がける作品にはこういったルチャ自体を扱う内容の物があるようだ。日本でも劇場公開された『ミル・マスカラス/愛と宿命のルチャ』(88)もそうだし。
この作品のすごいのは有名ルチャドールたちがこぞって出演している事。ドス・カラスやブラック・シャドーJrやブルー・デモンJr、試合には出てないがブラックマンなどの姿も拝見できた。一方の空手家軍団の出演者も本職の俳優&空手家なんて一人もいなく、東洋キャラで人気があったカト・クン・リーを大将に、クン・フーや日本人ルチャドールのパイオニア・グラン浜田や冒頭に書いた浅井まで何だか意味なく豪華である。
マスカラスの頼みじゃきっと断れなかったんでしょうね(笑)。
肝心のルチャ対空手軍団対抗戦だが、デモンJr vs 浅井、クン・フー vs シャドーJr、女子同士の2試合に続きドス vs グラン浜田、そして大将戦のマスカラス vs カトとルチャ好きなら卒倒しそうな好カード揃い。女子選手の名前が分からないのがちょっと残念だが、とにかく試合内容はこうである!
ブルー・デモンJr vs 浅井
浅井のキック攻撃に戸惑うものの、カニ挟みでテイクダウンさせての膝固め、ロープに振ると見せかけての脇固めなどサブミッションで次第に圧倒。最後はノーザンライト・スープレックス→プルポ(蛸固め…変形グランド卍固め)でギブアップ。
クン・フー vs ブラック・シャドーJr
最初は若いシャドーがドロップキックやアームホイップなどで攻め立てたが、次第に試合の流れはクン・フーのペースに。リングの角に相手をぶつけるラフ殺法を織り交ぜながらキック攻撃で圧倒、シャドーの首を両足に挟みこんでの首折りで決着。
ドス・カラス vs グラン浜田
この試合は終始ドスが体格差で圧倒するという展開。リフトアップで浜田を軽々と持ち上げたり力の差をアピールするが、浜田もショルダースルーを回転着地してのドロップキックなどいいところを見せる。 しかし流れは変え難く、場外へ落ちた浜田にペスカリート(プランチャ)で痛めつけ、ケブラドーラ・コン・ヒーロ(風車式バックブリーカー)2連発、ブレーンバスターからバックドロップと大技が続き、最後は河津掛けからのグランド卍固めでキッチリギブアップを奪う。
ミル・マスカラス vs カト・クン・リー
テコンドー高手であるカトの独楽のような回し蹴りや、ロープを使ってのキック、得意技のコロ・クエルダス(ロープ渡り)まで披露しマスカラスを攻め込むが、ドスvs浜田戦と同じく体格差が勝負を左右した。 ニードロップの失敗を見計らってマスカラスがラリアート、そしてフライング・クロスチョップと攻撃は続き、場外へのダイビング・ボディアタック!リング内に戻ったカトにサイド・スープレックスで投げつけ、胴絞めフルネルソンで最後まで抵抗したカトを絞め落とす。
浅井のキック技は試合でも使用しているので本格的なのだが、浜田の空手家役はいただけなかった。純正レスリングで試合している浜田なので空手の型が全然板に付いてなく殆ど普段の試合通りの動きだった。 クン・フーの空手技は見よう見まねのインチキなのでアレだが、カトの蹴り技はテコンドー仕込みだけあって蹴りに迫力がある、とは言ってもかなりの年齢なのでそう脚は上がらないけど。
試合を総括するとルチャの試合です、これは。空手家らしかったのは浅井と女子選手だけで、あとは普通に自分の試合をしております。ただ、幾百のルチャ映画と異なるのは相手がルチャドールなので、マスカラスたちいい者役の選手も思い切ってアクションできるという所です。普段ならパンチやドロップキックなど攻撃に制限があるルチャドールのアクションも、この作品ではリング上が舞台なのでロープを使った攻撃や関節技、はたまた危険な投げ技までも見せてくれるのだ。こんな過激な(普段の試合通りの)アクションなんてスタントマン相手では出来ないでしょ?
あ~いっぺん全編通して観てみたい。でもきっとここだけが面白いんだろうな…
え~っと、今回も昨年末に某氏から頂いたDVD-Rの中から…
『KARLA CONTRA LOS JAGUARES』(73)はコロンビアのルチャドール、ロス・ハガーレス(英語だとザ・ジャガーズ)を主人公としたメヒコ&コロンビアの合作である。 実際にハガーレスというルチャドールが存在したかどうかは不明だがコロンビアでも実際にルチャは行われており、ルチャリブレはメヒコだけでなく中南米共通の文化であるという事に気付かされる。
内容はというと、女王様きどりの悪女が下僕(笑)の科学者チームの手によって作られた感情を持たないロボット状態の屈強な男たちを使い宝石店や銀行を襲わせて悦に浸っているが、その謎の軍団に関する事件を任された捜査官がこれまた自分の命令どうり動く(まぁ、部下だから…)筋骨隆々の覆面トリオ、ロス・ハガーレスを使って見事解決する…というもの。
中々設定が変わっていて、ボスが女性で(女王様キャラ)世界征服が目的ではなく自分の欲望のために洗脳兵士や科学者をアゴで動かしているという所が良い。女性にとって世界征服なんかどうでも良い事らしい。それよりも宝石やお金のほうが何倍も魅力的のようだ。…地に足が着いてんなぁ。
対する警察の方も、危なっかしいことはすべてハガーレスにお任せで、自分たちは事件を推理するか彼らに指示出しているかどちらかなのでホント役立たねぇ。
というわけでこの作品、ハガーレスのアクションもさることながら悪党のボスである女王様のワガママっぷりに大注目!なのだ。
スージー・アラビア氏の手によるルチャ映画年表をみると、ハガーレスにはもう一本『Los Jaguares contra el Invasor Misterioso(ロス・ハガーレスVS謎の侵略者)』
なる映画があるそうで何だかすごく興味があるんですけど…
●これ、コントじゃないですよ
TV時代に伴ってメキシコ最大のルチャ団体EMLL(現CMLL)はカラフルで斬新なデザインによる新たなキャラクター作りに着手した。その中でも最大の“ヒット商品”となったのは“カリスマ忍者仮面”ことオクタゴンで、当時「大統領の名は知らなくてもオクタゴンは知っている」と言われたほどの国民的人気だった。
このルチャブームに沸く90年代初頭におけるルチャ映画は「TV人気にあやかって劇場へファンを引っ張り込もう!」とばかりに茶の間でおなじみの選手たちが次々と劇場用映画へ引っ張り出された。選手が個人で映画会社と契約していた60年代のルチャ映画黄金期とは違い、団体の放映権を持つTV局が映画会社と協力して製作するというものだった。ちょうど日本でも人気が出てきたアイドル歌手を主役に映画制作していた感じと似ている。
というわけで今回紹介するのはそのオクタゴンと“聖なる白い虎”の異名を持つヘビー級の体格をしたマスカラ・サグラーダが主演を務めた92年製作の『Lucha a
Muerte』という作品。
オクタゴン&Mサグラーダはルチャドールの傍ら秘密捜査官を務めているという設定で、大規模な貴金属窃盗団の悪事をあの手この手を使って一網打尽にしてしまおうという簡単に言えばこんなストーリーで、ルチャ映画らしく話などあって無きものだ。オクタゴンは黒を基調にした配色なのでまだいいとして、Mサグラーダなんかは白地に蛍光色のオンパレードなので捜査官としてはかなり目立つと思うのだが。
この映画の見所はオクタゴンの空手アクション(サグラーダは図体がでかいだけでアクションに特徴がない)、それにこの年にCMLLからスター選手をごっそり引き抜いて旗揚げした新興団体AAAの当時の選手の顔ぶれが見れるといった所かな。特にルチャ好きの私としては旗揚げ当初の顔ぶれなんて雑誌でしか見たことが無いので動く映像を観れるだけでも十分に価値がある映画だと思った。
オクタゴンも劇中で見せるアクションはスタントマン(やられ役)のレベルが向上したのか、かなりリング上で見せるアクションに近いものを披露しているし、肝心の試合シーンも今のオクタゴンでは考えられないほどスピード感ある試合ぶりを見せてくれる。 肩車から脚を引っ掛けて相手を投げるオクタゴン・ホイップという技なんかミゼット選手のオクタゴンシートでしか見た事が無かったので、本人がやるのを見て「あぁ、やれるんだぁ…」と思ったほどだ。これを観るだけでも…(以下省略)