1959年に創刊されて以後60年の長きにわたって、香港人のアイデンティティーともいうべき《新派武侠小説》の発信源としてファンに愛されていた週刊誌、それが『武侠世界』です。
本ブログでも2009年に当時の号の挿絵を紹介した事がありますが、最近米サイトの【Internet archive】に1980年代の『武侠世界』がたくさんアップされていましたので、当時の挿絵から香港武侠小説の熱気を是非とも感じ取ってください。
〇『武侠世界』 第24年第8期 (1982年2月) 号
金庸や古龍の武侠小説出版ラッシュは、もはや過去の出来事となってしまいました。新古本でも徳間書店からでていた金庸作品はたまに見かけるものの、小学館や他の出版社から刊行されていた古龍作品なんて、ヤフオクでもあまり見かける事がありません。ブームが過ぎた…と言えばそれまでですが、出版権を持っていた徳間が金庸作品を推していただけでブームにすらなっていない。それでも香港映画ファンには「〇〇の原作」という事で結構読まれていたと思います。
結局は中国史好き、もしくは香港映画ファンの中だけで「終わって」しまった武侠小説ですが、今でも中華圏では旧作や新作の出版が盛んで、書籍だけでなく電子媒体でも読めるくらい浸透しています。題名だけ見ていてもわくわくするような漢字の羅列が読書意欲をそそりますが、悲しいかな中国語が読めません (ぴえん) 。だけど文字が読めないのであれば、小説に付く挿絵はどうでしょうか?しかし武侠小説のソフトカバーをめくっても絵が付いているものはほんの少しです。そこでインターネットで武侠小説、武侠小説誌の検索をした結果かなりの数が集まったので、ここで紹介させてもらおうと思います。
まず最初は、第二次大戦前のいわゆる《旧派武侠小説》に属する平江不肖生 (1890-1957) 作『江湖小俠傳』(1925) の挿絵です。リアルとは無縁な素朴な画筆が、当時の武侠小説の雰囲気が伝わりますね。
現在ではすっかり忘れられていますが、19世紀のイギリス・ヴィクトリア朝に青少年たちを熱狂させ、また震え上がらせた連続小説本が存在しました。その内容の「安っぽさ」ゆえに、その小説たちはペニー・ドレッドフルと呼ばれていました。これがパルプマガジンからペーパーバックへと連なる、幻想怪奇娯楽小説本の源流であります。
ワンショット(一話完結もの)はほとんどなく、大概は連載で購買者や貸本読者の人気が高ければ長期連載、なければ数話で打ち切りとなり、長い期間読者を引き留めておくために物語の統合性は二の次、とにかくスリリングな場面を作って次週も読んでもらうように仕向けました。それゆえにペニー・ドレッドフルの多くはスリル&ロマンス、胸躍る冒険やお涙頂戴の悲劇、超自然的な事件や人物など、考えうるだけのエッセンスをこれでもか!とばかりに散りばめられていました。しかし産業革命による大量生産で、書籍や雑誌が中低流層の人々にも安価で入手できるようになると、いつしか下世話で安っぽいペニー・ドレッドフルは下火になりその「役目」を終えたのでした。
ローズ・モーティマー、またはバレエ少女の復讐 表紙
バレエ少女の夢
ローズ・モーティマー、犯罪者である父親以外の親はなし―― は生業として舞台を選んだ。劇場支配人との面接を待っている間、彼女は眠りにつき、自分の将来の姿を夢見る
アベル・ブースがローズ・モーティマーを捕まえた
レルノ伯爵に連れ去られたローズ
鬼婆とその犠牲者
助けて!助けて!」怯えるバレエ少女は悲鳴をあげた
楽屋での殺人
森の中での運命の決闘
殺人鬼の襲撃
逮 捕
死体で発見される
真夜中の外出
犯 罪
誘 拐
墓穴を堀る
クララと荒くれ者たち
サーカスでの異様な光景
喪失者
放蕩者の死
毒殺事件
本物の悲劇
掃いて捨てるほどの犠牲者
嫁を売る
死体泥棒たち
司祭殺人事件
ローズは呉服屋を驚かせる