主人公・ジュヨン(演:オ・ジョンセ)は、大病を患っている息子ギュワンのために、仕事と看病の繰り返しの忙しい毎日を送っていた。ある日ギュワンが心の拠にしていた特撮ヒーロー番組『サンダーマン』が低視聴率が原因で突如打ち切られてしまい、ギュワンは失意のあまり無気力になってしまう。嘆き悲しむの息子の為に何ができるか?考えたジュヨンは友人たちや撮影スタッフ達の協力を得て、自らがサンダーマンになって息子の為だけに番組を作ろうとする。だが、以前撮影所に侵入し盗みを働こうとしてサンダーマン(のスーツアクター)によってブタ箱行きとなった泥棒コンビが復讐の機会を狙っていた……
ポスター画像や予告編を最初見たときは、台湾映画『變身』(2013)のようにヒーロー役者の悲喜劇なのかな?と思いましたが、実際は父と子の絆を描いた、泣かせ要素の強いコメディでありました。私なんてスーパーヒーローに難病を抱えた親子物ときたら、無条件に涙が溢れ出てしまいます、もうボロボロ。
私がこの映画で好きな場面はラスト近く、トラブルに巻き込まれてしまった息子から見る世界がファンタジー(『サンダーマン』の世界)になっている所ですね。彼の脳内に映しだされるのはしょぼいヒーロースーツを着た父親なんかじゃなくて、スーパーヒーローであるサンダーマンそのものという、男の子であれば誰もが一度は夢見たシチュエーションでしょう。どんなに特殊能力やカッコいい容姿を持っていなくとも、一番の、そして身近なヒーローとは《父親》なのである、と言わんばかりのこの場面にまたまた号泣なのでした、嗚呼。
監督のキム・ボンハンはこれが商業映画デビュー作との事で、製作当初は『サンダーマン』という直球なタイトルだったそうです。
ヒーローは憧れの対象である。ヒーローは尊敬の対象である。そして……自分自身もそのヒーローになる事が出来る!
ホン・ギルドンの末裔である冴えない少年が、ギャング団によって博物館から盗まれた古文書を偶然手にしてしまった所、何かの拍子で本の中から封印されていた本家ホン・ギルドンが出現する。古文書の不備で武功を失い、自分の時代へ戻れなくなったギルドンは、少年一家と現代韓国で生活をすることになる。一方で未来から、歴史を変えるために派遣されたアンドロイドが、少年の友だちである少女・ソヨンを執拗につけ狙う。ギルドン、ギャング団、ターミネーターによる三つ巴の戦いの結果は如何に……?
この映画は《過去》のホン・ギルドンと《未来》のターミネーターが時空を超えて現代(1993年の韓国)で対決する、という一発ネタだけで作られており、観客が年少者限定の児童映画というジャンルと相まって、細かい説明は一切なし(言葉がわからないのもあるけれど)。見たままの印象としては古文書からドーンってホン・ギルドンが現れて、雷と共に未来からターミネーターがやってきて、特に深い意味もなく女の子がターゲットになっていて、最後にギルドンがターミネーターと闘う……という感じだ。うん、これだったら子供にだってわかるワイ。
ただ、ラストのアクションが(ギルドンのワイヤーアクション)が何だか雑で、もうちょっとカット割りを考えるとか方法があっただろうに、と思わずにはいられなかった。せっかく合成処理で光線技出せるのにもったいない!あとこれも大事なことなんだけど、光線ビシバシの対決シーンでギルドンとターミネーターが、同じフレームに収まるカットがないんですよ。パワーを無くして普通の人になってしまったギルトンとの絡みはいっぱいあったのに……いくら上映時間が1時間に満たなくてもこれはないでしょ?せっかく博物館から古文書を盗み出したギャング団だって、ギルドンとターミネーターの強さを見せるためだけの存在になってしまって情けない。あ、これは韓国児童映画の定石通りなんだけれども。
今回はその中から前後編合わせて2時間以上もある大作(ランニングタイムだけは)『ヨングとブッシュマン』(1992)を紹介。
【あらすじ】狂気の科学者コジュブ博士が、世界征服のために作り出した妖怪が偶然にもヨングの母に憑依してしまう。自分の力では手に負えないヨングは山に住む導師の元で教えを乞い、妖怪退治の秘術を習得して母に憑りついた妖怪を倒すことに成功したが、他にも博士が作り上げた妖怪たちが存在する事を知ったヨングは、さらに厳しい修行を重ね、ついには変身能力まで身に付けて数々の妖怪たちと闘いを繰り広げるのだった……
何故にタイトルに“ブッシュマン”?どうも劇中に登場する妖怪の呼称がブッシュマンというらしい。多分『ブッシュマン/キョンシーアフリカへ行く(非洲和尚)』(1991)の影響ではないかと思われる。あっちには本物のニカウさんが出演してたけど、こちらは身体を真っ黒に塗った韓国人俳優が「ワカチコ!ワカチコ!」と叫んだり火を噴いたりと、もうブッシュマンでも何でもなくなっている!他にも忍者姿の日本ブッシュマンだの、ただのバカにしかみえない韓人ブッシュマン、巻き舌でアメリカ人ぶるのが可笑しいアメリカンブッシュマンなど、観てるこちら側も「もう、勝手にしろよ」と諦めの境地に達してくる。
ヨングの変身形態もチョイスの基準がよくわからない。最初の対決では猪八戒姿、アメリカンブッシュマンほか連合軍(アフリカンブッシュマン除き全員一撃で消滅)や最終決戦では伝統芸能の仮面を被った姿、そして本筋とは全然関係ないギャング段&人造キョンシー(ヨングの友達を改造)との闘いでは黄金バット(劇中ではスケルトン戦士と呼称。『ヨングと黄金バット』を製作したため使えなかったらしい)と、もうごっちゃごちゃ。でもアクションシーンだけ見ればスタントダブルの効果もありすごくカッコよく撮られている。忍者との対戦なんてまるで『妖刀・斬首剣』みたいで(あそこまで洗練されてないけど)面白かった。
ただ、“ヨング”映画としてみた場合、ちょっと違和感を感じる。というのも、ヨングって基本「ええおっさんが幼稚な事やって笑わせる」キャラクターじゃない?この作品には出だしこそ“いつもの”ヨングではあるが、修行していくうちに人間として“成長”してしまい、笑わせはするけどバカをしなくなり結局ヒーローとして完結してしまうのだ。“ヨング”というキャラクターを完全に把握していない韓国以外の観客(つまり我々の事)はヨング=格闘ヒーローと認識してしまうではないか。他のヨング映画では、主役のクセにロクに活躍もしなかったりする、だらしないパターンが多いのに……監督、『ウレメ』シリーズや『スーパーホンギルトン』と間違えてはいませんか?
【あらすじ】静かな漁村であるウルチン里はここ数十年来、不可思議な事件が多発していた。その謎を解くために韓国中から最高の占い師・除霊師たちが集められた。退魔師であるパク先生、工学博士出身の占い師ソキョン、霊視能力者シミン、事物を通じて過去を見るサイコメトラーであるスンヒ、未来を見る小学生占い師ウォルグァン、そして,事件を取材するために彼らとともにする特ダネ専門記者チャニョンまで。彼らが向き合うことになった途方もない呪い、そして、村の人々が隠している秘密……彼ら退魔チーム(+1)は誰も解決できないウルチン里の謎を解くことができるだろうか……?
設定だけ見ているといかにもなホラー・ミステリー風味だが、隠し味にコメディ色を加えているので、さほどビビらずに観賞することができました。きちんと鑑賞した事はないけど超常現象ミステリーという括りでいえば日本のテレビドラマ『TRICK/トリック』に近いんじゃないでしょうか?雰囲気が。私はこういった“キャラが立っている者たちが一つになって共通の目的に立ち向かう”ジャンル映画がすごく好きで、こういった点でもかなり採点が甘くなっちゃいます。Webによれば、タイに団体旅行へ行った韓国の占い師たちを乗せた大型バスが、以前に数千人が事故死したという心霊スポットに入った瞬間に、団体で霊が憑依したという実話をベースに映画が製作されたという事で、このエピソードは映画の最初の方できちっと映像化されています。
現地韓国では、同時期にイ・ビョンホン主演の『王になった男』の公開と重なったため、興行収入の方は芳しくなかったそうですが、特異なホラー・コメディという事で覚えてもらっても損はないと思いますし、いずれどこかのメーカーが日本語吹替版でDVD出すんじゃないか?って気もします。もしそうなったら是非もう一度観てみたいものです。目指せ!TUTAYAの新作コーナーの棚っ!!
本年最初の映画レビューでは、クラシック韓国ホラー映画『深夜に、突然』(1981)を紹介っ!
【あらすじ】
著名な昆虫学者の妻である主人公は、大きな家に住み子宝に恵まれ何不自由ない暮らしを送っていた。だがある日この家に夫が連れてきた、シャーマンの家系で育った身寄りのない美少女が現れた事によって生活は一変する。自分よりも若く魅力あふれた彼女に夫を奪われてしまうのではないか?との妄想を募らせ、次第に情緒不安定となっていく主人公は、遂に事故を装い少女を殺害してしまう。そして夫が外出して自分一人となった嵐の夜、奇妙な音をたてて何かが迫ってくるのに主人公は気付き怯える。それは殺された少女の宝物である巫女人形が、彼女の怨霊とリンクして動き出したのだ…!
大まかなあらすじやらいろいろ調べようと、ハングルでタイトルを入力してネット検索してみたのだが、ほとんどこの映画に引っかからないくらい本国・韓国でも語られることのない《幻の映画》である(以前はネット配信で観賞できたそうだが)。あまり韓国人の間でも語られないのは観る機会があまりなかったか、トンでもなく俗物すぎたかのどちらかだな、きっと。
被害者の怨念が乗り移った人形が、加害者を恐怖の坩堝に陥れるという古典的な怪談話を、モダンホラー風にリニューアルするという、よくあるローカルホラー映画であるがこの作品、所々に挿入される巫女人形のカットや、旦那の職業が一般的ではない職種である《昆虫学者》という、いかにも怪奇映画的なアイテムを思わせぶりに配置しながらも(結局職種は劇中にはほとんど生かされていない)、全体的には主人公と小悪魔的少女との心理戦(主人公が勝手に、どツボにハマっているだけのような気がするが…)を描いた官能サスペンスでまとめられており、前半では旦那とのベッドシーンや少女のはち切れんばかりの裸体、そして不必要とも思える露出の高い(当時の倫理感では)衣装で観客たちに(男性限定!)至福の一時を味あわせてくれる。そしてクライマックス、暗く誰もいない屋敷の中で殺された少女の幻覚(幽霊?)&人間大の巫女人形との戦いは、今観れば爆笑モノだがそれでも観る者をスクリーンから離させないこの映像の力強さ、そしてラストの四の五の言わない幕引きの潔さ!これこそがプログラムピクチャーの醍醐味、職人監督の腕の見せ所である。
現在の《韓流》などと称される洗練された韓国映画からは想像出来ない、まだ暗く泥臭かった、私が高校生時分レンタルビデオ等でチマチマと観ていた80年代の韓国映画がズバリここにあった。
その面白さにハマってなかなか抜け出せない韓国児童映画の世界。今回は《ヨング》シリーズでその筋の方々に知られるシム・ヒョンネ大哥の主演作『スーパーホン・ギルトン』(88)をご紹介。
良家の御曹司であるギルトンは勉強もせずに厳しい親の目を盗んで遊んでばかりいたが、ついに父親の逆鱗に触れ家を追い出されてしまう。あてもなく旅をするギルトンは途中、白雲導師なる武芸の達人に出会い、彼の元、厳しい修行を行い、ついに距離や時間を超える技を会得し免許皆伝となる。超人的な武芸を身に付けたギルトンは途中出会った仲間たちと共に、村を荒らしまわる山賊一味や高麗の地図や美女たちを奪わんとする中国人武芸家たちと対決する…
韓国アニメ映画のパイオニア、キム・チョンギ監督(『ロボットテッコンV』他)と、《ヨング》シリーズで有名なシム・ヒョンネが『宇宙から来たウレメ』シリーズに続いて製作した実写映画である。実はヒョンネ大哥、この時点では自らの当たり役である《ヨング》シリーズをまだ開始していないのだが(第一作『ヨングとテンチリ』は89年作)、既に年平均3本も主演する売れっ子であった。この映画が公開された年だけでも以前紹介した『スパークマン』や『ウレメ』シリーズ第5弾の2本が劇場で流されている事を思うと、ヒョンネ大哥の韓国での人気(子供限定)の高さにビックリである。
近年のTVドラマ版『快刀ホンギルドン』や、マニア御用達の北朝鮮版『洪吉童』を例に持ち出さなくとも、ホンギルトン映画の売りは何といっても武芸アクションである。
この作品も例外でなく、アニメ合成を駆使した幻術シーンと共に拳脚や刀・槍を用いた格闘シーンが多数用意されており、特に中国人武芸集団との戦いではクンフー映画でおなじみの扇子やヌンチャク、そして民俗音楽で使用するシンバルまでもが登場し、チープなワイヤー・ワークと相まってまるで武侠映画の様である。ヒョンネ大哥も、本格的なテコンドー・アクションはダブルの方に任せ、「笑いが本職」とばかりに蘇化子じーさんの扮装をして酔拳の真似事をして楽しませてくれる。
児童映画という、観客が限定されたこのジャンルは暴力表現や性描写などが厳しく制限され、予算もギリギリという見方によっては八方塞のような状況だが、その一方何を扱ってもいいというフレキシブルな面も持ち合わせており、大監督を志す若手監督の登竜門的存在となっている。明日をめざし未来の大監督や俳優たちは、予算が無い代わりに肉体と頭脳をフルに駆使し、面白い作品(=次回も仕事がもらえるような結果を出す作品)作りに励んでいたのだ。
ヒョンネ大哥もそんな児童映画の厳しい環境に揉まれながら、次第に自分の作品の製作や監督を兼任するようになり、遂には自らの映画制作会社《ヨングアート》を設立し、海外セールスまでされた超大作怪獣映画『D-WARS』を生み出すまでになったのだ。一般観客にバカにされ、興行的失敗を繰り返しながらも己の道(ヨング道?)を邁進するこの姿、すごいよヒョンネ大哥!
科学者のコン博士は、彼のその天才的な頭脳を、悪事に利用しようと考えているギャング団との追跡中に、偶然巻き添えをくって殺されてしまった青年を哀れに思い研究中であった人造人間《ターミネーター》として蘇らせようとする。だが、最終調整を目前に博士は自宅に乗り込んできたギャング団によって拉致されてしまう。
拉致直前に博士に取材を申し込んでいた女性雑誌記者は自宅から博士が消えてしまったのを不審に思い警察に連絡、そして派遣された警察署イチのダメ刑事とで捜査を開始する。その頃街中を黒ずくめの恰好をした男が徘徊していた。《ターミネーター》が動き出したのだ…!果たしてコン博士は無事に見つかるのか?そして《ターミネーター》の動向は如何に?!
●あらゆる問題の張本人・コン博士。韓国では珍しい、家庭用ゲーム機のユーザーである
●これが《ターミネーター》。別名・黒い舘ひろし
92年っていうと、本家・キャメロン監督の『ターミネーター2』の後か?どうりで《ターミネーター》の雰囲気がそれっぽかったわけだ。それにしてもキャラクターをまんまパクるとはたいした度胸である。同時期の香港・台湾系のアクション映画や子供向け映画などにもターミネーターもどきは出現しているが、ここまで露骨なのは見たことがない。この時期の韓国には知的所有権という概念は存在したのだろうか?観客がハナッから少ない(上映期間も)児童映画だからやれたんでしょうね、きっと。
この映画の登場人物は、キーマンである《ターミネーター》や美人雑誌記者を除いてどういうわけか《バカ》ばかりである。コン博士や、事件を追うダメ刑事はもちろんの事、ギャング団の幹部までもが揃いも揃ってコレなのだ。言語障害寸前の台詞回しや幼稚園児なみの低脳ギャグが次から次へと繰り出され、観てるこっちはブチ切れ寸前である。
「いい大人なんだからさぁ、ちゃんとやれよ!」
と文句のひとつでも言いたくはなりますわな、そりゃ。当時の韓国の子供たちはこれを観てどういう感想だったのかを聞いてみたい気分だ。
●事件を追うダメ刑事。普段のバカさ加減と、銃撃シーンの容赦なさは驚くぞ~、きっと
ただ、アクションはハンパじゃない(この前もそういったが)。一見バカのダメ刑事だが銃撃シーンになると何の躊躇もなくギャングを撃ち殺しまくるし、ギャング団も《ターミネーター》相手にバズーカや爆弾などでボンスカ火の玉打ち上げるはで子供向け映画とは思えないほどハードである。なんかこの製作者、硬軟の使い所を間違えてるんじゃないか?
バカな登場人物が繰り広げるゆる~いドラマと、明らかにやりすぎなアクションが混在する《韓国児童映画》、今後も要チェック!なのである。
●ユルユルの低脳ギャグの合間に訪れる、ハードなアクションシーンは衝撃的である
今回は久々の韓国映画でまだまだ謎の多い未開拓ジャンルである「児童映画」の一本『三重星』(91)を紹介。ちなみに読みは、「さむじゅんそん」である。
この児童映画というジャンルは最近では韓国本国でもDVDリリースされて再評価の兆しがみられるが、まだまだ鑑賞できる作品数は少なく、過去にビデオでリリースされたものを(もちろん韓国での話)探して観るしかないのが現状である。こういう時って同ジャンルのファンによる横の繋がりが身に染みてありがたく感じるものだ。
さて本編の内容はというと、学校行事で山にキャンプに来ていた女の子プラス男の子二人の仲良しトリオが、洞窟内で悪い宇宙人ジョアンナ一味に追われている善良な宇宙人・コンペイと出会い、ある事件で瀕死状態となった女の子に自らの持つスーパーパワーを注入、すると仲良しトリオが気持ちを合わせるとスーパーヒーローに変身できる能力を身に付ける。そしてコンペイの持つスーパーパワーを狙い(与えちゃって無いけど)次々と襲い掛かるジョアンナ一味と対決するというもの。
●これが仲良しトリオ。中央の女の子、結構カワイイと思いませんか?
●下山する仲良しトリオと宇宙人コンペイ。低脳キャラなのは韓国児童映画ではおなじみの設定だ
感想は?というと素直に面白かった。グダグダなギャグ部分や見てて恥ずかしくなる(と思えるのはやっぱり年取ったからか?)女の子と男の子二人との3P…じゃなかった爽やかな友情シーンを乗り越えるといよいよ待ちに待ってたスーパーヒーローの活躍である。…が、しか~し!これが全然イケてないのだ。ローマ騎士のようなコスチュームに黄金(スパンコール)の顔出しマスク(兜?)という、「有りものでこさえました」という感じのデザインなのだ。
「もう止めようかな…?」と思ったのもつかの間、コイツが動き出したら凄いのなんのって!テコンドー仕込みの鋭いキックは放つは、ワイヤーでグルグル回されるわ、やられ役のスタントマンは香港スピンで吹っ飛ぶはで無駄に凄いのだ。格闘アクション映画好きならここで飯三杯はイケルね。
●悪の宇宙人ジョアンナ。これだけ見ても安っぽいが、マントの下は輪を掛けて安~い感じだぞ
●極悪宇宙人にハイキック!キックの鋭さはハンパないです
確かにこの映画、特撮ヒーロー映画では不可欠なミニチュアや光学合成(オプチカル合成)といったいわゆる《特殊技術》は使われていない、というか予算の都合上使えなかったと言ったほうが正しいだろう。しかし市販の花火を使った変身処理やコマ落しや逆回転などの編集技術などを駆使し、低予算なりの努力は画面からも十分に感じられ、一概に駄作とは呼べないのだ。作品の面白さとは必ずしも予算とは比例しないものなのである(でも一般の人が観たらやっぱり駄作と呼ばれちゃうんだろうな…きっと)。
●さぁ、変身だ!…これを許せるか否かでスーパーヒーロー好きの資質が問われるぞ
●子供達の付き添いのお父さんの為のサービスショットか、これは?
思えば『世界トホホ映画劇場』(大畑晃一・著、小学館・刊)でその存在を知ってから幾年月を経て今、自分が観たかった作品をこうして観ているという事実を思うと、「長かったなぁ」と改めて感じるのである。
こういう時こそ非ハリウッド娯楽映画道を突き進んで良かったなぁ~と感傷に浸る瞬間である。でも、まぁ感傷と作品の出来は別だから、ね。
ヒョンレ演じる主人公がある夜宇宙から落下してきた光る物体を拾うが、実はその物体は、悪政に苦しむ惑星を救うため逃げ出したオーロラ姫一行が、伝説の勇者・スパークマンになれる逸材に変身用エネルギーとして渡すための物質だった。
拾った事でスパークマンになるための力を持った主人公だが、そんな惑星間戦争に巻き込まれるのはゴメンと拒否し続けたが、度重なるオーロラ姫の「おねがい」攻撃(笑)に耐え切れなくなった彼はついにスパークマンになる事を決意する。そして強靭な肉体とパワーを手に入れた主人公はすでに地球へやってきた追っ手の悪党エイリアンたちとの対決が始まった…!
いやぁ、思ったよりも面白かった。だいたい本に書かれていた内容というのが「度重なるワガママ姫のお願いにより耐え切れなくなった主人公がスパークマンに変身する」というものだっただけに、本編はどんなもんだろう?と思っていたのだが、一応主人公もスパークマンとしての使命を果たしていたしアクションもそんなに「トホホ」でもなかった。
光学合成バリバリの変身シーンやエイリアンとの戦闘シーン、宇宙におけるミニチュア宇宙船同士の戦闘、途中で戦闘シーンがアニメ(しかも線画!)になってしまうのが残念だが着ぐるみロボット対戦等など見所は多数あり、日本の特撮ファンが観てもかなりの満足度が得られるのではないか?と思う。
CGなんて映像技術は高価でなかなか使用できなかった頃の作品ゆえ、絶対画面から醸し出される「懐かしさ」は感じられるはずだ。私はこれを観て『宇宙刑事ギャバン』などに代表される東映メタルヒーロー・シリーズに熱中してた頃を思い出した。
監督は別人だけど、ヒョンレ、わかっているね!