2013年一発目は、ベトナム製武侠大作『天命英雄/Blood Letter』(2012)を紹介。
(たぶん)ベトナムで製作された初の武侠映画で、現地の人気時代小説を映像化したものだという。物語は、王家の権力争いによって、反逆者の汚名を着せられ処刑された阮家の生き残りである元武が、一族の復讐と名誉回復を果たすためにひとり王家に立ち向かい、奮戦するというもの。
歴史的事件(ル·チービエン虐殺:ブログを書くにあたって初めて知りました)を物語のスパイスとして用い、美しく雄大な自然や豪華絢爛なセット、そして武侠アクション(忍者もでるよ)と見せ場満載で、これはまさに《超大作》の雰囲気をもった逸品でしょう。ただ出てくる主要人物がみんな若く、イケメン・美人ぞろいなんで、なんとなく韓国テレビ時代劇の香りがしないでもないけど、まぁご愛嬌ということで。
『トム・ヤム・クン!』や『The Rebel』『Clash』で格闘アクション映画好きには名の知れたジョニー・トライ・グエンが本作においてアクション監督(武術指導?)を務めており、本場香港・中国製武侠映画にも劣らないアクションを作り出している。ただ観ていてちょっと気になったのがワイヤーの使い方で、軽功で跳ぶ際にキャラクラー(俳優)の飛行姿勢があまりよろしくなく、「吊られてる」感がすごく目に付くのだ。70~80年代の武侠片なら「しょうがない」で済ませられるのだが21世紀の現在では「もうちょっと何とかならないか?」と思ってしまう。そう考えると、こういった演出のノウハウを持っている香港のアクション監督ってすごいよね、と改めて思い知らされる。
【総評】珍作だと思って観賞したのだが、思いのほかクオリティが高くてイッキ見してしまいました。数ヶ月後には新作DVDの棚に並んでたりして……(最近そういう作品が多いような気がする。配給会社も動画サイトとかでチェックしてるのか?)
約二月ぶりの更新になります。更新頻度が少なくて申し訳ございません…
友人たちから頂いたりした映画DVDはすげー溜まっているんだけど、仕事+自宅から仕事場までの往復で疲れちゃって(自転車で約50分)イマイチ「観ようっ!」という気力が起きなくて数がこなせません。ついこの間知り合いからバックアップ(又の名を複製という)を頼まれたウォンビン主演の『アジョシ』(2010)をHDDに取り込む際に観賞したぐらい。
そんな中、ツイッターでフォローしている方のツイートでチリ・スーパーヒーロー映画『MIRAGEMAN』(2007)の事を知り、ゲテモノ映画好きの私としてはどうしても観たくてYOUTUBEで落ちてないか探してみたんですよ。そしたら…ありました(笑)2年前からアップロードされているようで、よく消されずに残っていたなーなんて変な感動を憶えました。
『MIRAGEMAN』は南米・チリ初(?)のマーシャルアーツ映画としてその筋の人の記憶に新しい『KILTRO』(2006)のマルコ・ザロールが主演を務めたスーパーヒーロー映画ですが、持っている能力は鍛え上げた肉体と修練で身に付けた格闘技のみという、おおよそスーパーヒーローと呼ぶには程遠い設定です。
幼い時に惨劇に見舞われ(字幕なしの観賞なので細かい事は一切判らず)その影響で精神を病み長い病院生活を送っている弟を持つ主人公は、人一倍悪事を憎んでいる。ある日トレーニング中街中で強盗事件を目撃した彼は一味の被っていたマスクで顔を隠し強盗一味を撃退する。その後「謎の正義のマスク男」がTVやネットで話題になるや自分の成すべきことを悟った主人公は自前のコスチュームに身を包み日々サンティアゴの街へ悪党退治へ繰り出すようになるが…という話で、彼はただ《強い》というスキル以外は何も持っておらず、バットマンのように大金持ちなワケでもなくスーパーナチュラルなパワーを秘めているワケでもないごく普通の人間だ。コスチュームも非常に地味で、自作の青い全身タイツにジャンバーにズボンという、凄く変態チックな格好をしていて一般的イメージの《スーパーヒーロー》というものをワカッている人からすれば貧弱の極みなのであるが、いかに相手が武器を持っていようと(自己満足的ではあるが)自分の命を顧みない英雄的行動はまさにヒーローそのものであろう。結局は世の中の野次馬根性(と彼のスケベ根性)でその正体が割られ窮地に立たされた主人公が悲劇的な最後を遂げることになってしまうのがリアリティありありで面白い。
●これがミラージュマンの容姿だっ!
●格好はアレだけど、格闘アクションは一級品
●美人タレントとの一夜限りの情事が思わぬ展開に…
海千山千の格闘ヒーロー映画だと思ってナメてかかると「やられたっ!」と思う事必至、な一作です。決して傑作のカテゴリーには入らないけど。
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●彼がゾベック。残念なことに72年にヘリコプター事故で急逝してしまった
著名な科学者3名を乗せた飛行機が爆発炎上する事件が起きた。警察署長と懇意であるゾベックは事件の調査に協力する。得意の催眠術で当日担当したキャビンアテンダントから真相を聞きだすと、3人の科学者の一人・ドルーソ教授だけが途中で飛行機を降りていたことが判明する。
彼が怪しいと睨んだ警察署長は合同葬儀の際に出席していた怪しい男を追跡、古城を利用したアジトを発見するがドルーソ教授の手下に捕らえられてしまい、またゾベックも彼の恋人と共に教授の元へ連行されてしまう。ドルーソ教授は人体を改造して食人鬼を作り出し、世界征服に利用しようと考えていたのだった。ゾベックは果たして悪魔のドルーソ教授と食人鬼軍団にどう立ち向かうのか、そして警察署長と恋人の運命は如何に…?
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●悪役ドルーソ教授と彼が作り出した食人鬼。地下牢のセットなんかはさすが、と思わせる
エスケープ・アーティスト(奇術師とも違うので、そう表記する)が主演するアクション映画なので、普段のメキシコ製アクション映画(ルチャ映画)と違うのかな?と思っていたら、まんま同じでした(笑)。試合シーンがそのままエスケープ芸の場面に転化されているだけで、マッドサイエンティストやあまり役に立たない手下、それにコメディリリーフにお色気担当(過剰な期待は禁物だぞ)の恋人までキャラクター配置もぜ~んぶ一緒!ファミリーで楽しめるエンターテインメントがラテン文化の基本なので、しよょうがないといえばそれまでなのだが。
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●人体改造途中のおねえさん。こういうチープなエフェクトって大好きです
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●果たして彼女の運命は…?セーター越しの乳が何ともイヤラしい
ざっと観の感想としては『仮面ライダー』ですね、これは。ドルーソ教授と食人鬼軍団はそのままショッカーと怪人軍団でゾベックがもちろん仮面ライダー(本郷猛)。分かりやすいほどの勧善懲悪で細かい事はわからなくても十分に未字幕でも楽しめました。アクション映画だから、じゃなきゃ困るでしょ?
ただ、ひとつイケてないものがありまして…それはゾベックの格闘シーンだ!実にモッサリしてるんですな、これが。東洋の秘術を身に付けた、らしいのですが、スピード感のないチョップやキックが哀愁を誘います。でも組み技で使用されるルチャ・テクニック(吊り天井固めとか)は結構サマになっているので、さすがメヒコ!(何が?)と思っちゃいました。
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●ゾベックのタパティア。他にもアンヘリート(リバース・ロメロスペシャル)やベアハッグとかも使用。
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●ゾベック対食人鬼のタイマン勝負、勝つのはどっちだ…?!
最近は極めてまっとうな作品ばかりを観ていたが(あくまでも個人的見解)、久々にトンでもない作品を鑑賞する機会を得た。製作国がトルコ、内容がマーシャルアーツと聞けばもう内容は保障済みだ。面白いか、ブッ壊れているかのどちらかである。「面白い」ってのも一般の基準には当てはまらないからなぁ…
まぁ、ともかくそんなわけで今回はめったに観る事のできないトルコ製マーシャルアーツ映画『Ac Kartallar』(84)の紹介だっ!
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遠方からトルコにやってきた空手界の大物が何者かに殺されるという事件が起こった。門下生である刑事と弟子、そして彼が手塩にかけて育てていた主人公である最強の空手使いの3人が事件の調査に向かう。襲い掛かる刺客、次々と関係者が殺されていく状況のなか、ついに黒幕を突き止める。それは主人公の恋人の父親だった。ヘロイン密売をめぐって殺された空手界の大物とトラブルになり制裁のために配下の者を使い彼を殺害したのだ。すべての事情を知った主人公と刑事は怒りに燃え彼の大邸宅へと歩を進める…
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今までトルコの東洋武術を扱った映画の中では比較的まともで(空手とクンフーの勘違いは目をつむるとして)、普通に違和感なく観られたというのが素直な感想。中には目眩を起こしそうな勘違い描写があるものもあるからね。この作品は深追いせずにマーシャルアーツのみに絞ったのがよかったのかもしれない。
ただ、主人公の造形はすごい。ブルース・リーですよ、あなた。ここまでやりますか?ドラゴン・リーやブルース・レといったブルースプロイテーション映画(BLUCEPLOITATION:ブルース・リーのソックリさん主演映画群の事を欧米ではこうジャンル付けしている)の波がイスタンブールまでやってきたって感じ。
所作もモノマネ映画と同じく猫背でチョコマカ走ったり、相手に指を突きつけたりと画面を観ながら「そうそう」と頷いちゃいました。逆にここまでやってくれると清々しい気分になっちゃうのは何故なんでしょうか?ただ、84年製作という事なので彼のアクションにジャッキー・チェンの影響も多々見受けられる。
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『怒りの鉄拳』や『燃えよドラゴン』を思わせるようなシチュエーションもあり、リー信者なら「おおっ」と喜んで観てくれる事間違いなし!…あっ、怒り狂うかもしれないか。
ただ、この映画の残念な点をひとつ。敵の一人にハゲで髭を生やした強そうな男が登場して冒頭の空手界の大物を始め、事件の関係者を次々と殺害したりしてキャラが立っているのに、いざ主人公との対決ではあっさりと負けてしまい、最後は刑事によって倒されてしまう(これも結構時間が短かった)という不甲斐なさ。もうちょっと『死亡遊戯』のジャバールくらいに強い設定にすればマーシャルアーツ映画として盛り上がったのに…
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白昼堂々とウラン輸送車が謎の集団によって襲われ強奪されるという事件が発生した。犯人は財力と怪しげな手下を持つマッドサイエンティストで、透明人間製作に異常な執念を持っていて、ウランはその装置の動力源なのであった。
ある日強靭な肉体を持つ被験者としてサーカスの空中ブランコ乗りを誘拐したが、同僚であるカラダヒアンによって阻止される。怒ったマッドサイエンティストは同じサーカスのカーニバルレスラーを誘拐、見事透明人間製造に成功する。マッドサイエンティストは邪魔なカラダヒアンをその透明人間に始末させようとする…
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カラダヒアンはサーカスで働く元カーニバルレスラー役。以前、試合中の事故で対戦相手を殺してしまった為に闘うことに躊躇してしまうという、中々キャラクターに厚みがあったり、格闘場面もダブル・リストロックやトゥホールドなどいかにも“レスリングやってます”な感じの動きが見られて、この辺がメキシコ産ルチャ映画とは違う。
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ただ、他の国と映画文法が違うのか時々「?」な場面があり、真面目に観ていると「余計だなぁ」と感じる。
例えばギャグシーンで悪役のマッドサイエンティストの頭上に物が落ちてくるシーンだが、3~4個でやめとけば良いのにそれ以上に落ちてきてギャグとしてのリズム感が台無しになっている。
もっというと、なぜ何度も失敗を繰り返してまで透明人間を製作しようとするのかが語られてないし、普通の映画だと自分自身が被験者になるのにわざわざ余所から連れてくるのかが分からない。透明人間にするのはいいけど特に犯罪を起こすわけでもなくいきなりカラダヒアンと対決で、一体何したいんでしょう?
こういう肝心な所がいい加減なのはルチャ映画と同じで、中南米娯楽映画では共通なんでしょうかねぇ…?
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「今頃になって日本版リリースするな!」
このたび正式に日本語字幕入りのDVDがめでたくリリースすることが発表されたクリスチナ・リンドバーク主演の「They Call Her One Eye~片目と呼ばれた女~」(74)だが、我慢しきれず海外版を購入した御仁はみんな言うでしょうな。私もその一人だったんですが…
『映画秘宝』にその記事が載ったとき、本屋で立ち読みしながら思ったもん。どうせ出すなら『キル・ビル』の便乗でなら良かったのに、と。
実際、この作品の正規版DVDが販売になったのが、『キル・ビルVol.2』公開後なので、やはりこの映画により再評価されたと見るべきだろう。すごいよ!タランティーノさん。
しかし、観賞してみて「日本版、無理じゃなかろか?」と思ったのも事実。というのもこの作品、本番SEXシーンがある(その場面はクリスチナはボディダブルを使っているが)ハードコア・ポルノなのだ。後は本物の死体を使って撮影されたという「片目くり抜き」シーンの衝撃の強さもあり、「ちょっと、ツライかな?」という気がした。
しかし、この映画の売りはそんな本番SEXシーンや、「片目くり抜き」シーンなんかでなく、クリスチナが一人、また一人と自分を辱めた男(と女)を改造ショットガンで復讐を遂行していく姿である。黒いアイパッチ、黒いコートに身を包み、敵と戦う彼女は感動的でもある。顔もロリ顔だし。
最後、何にもない(周りには岩と枯れた草のみ)寒そうな空の下で最後の敵と対峙するのだが、この場面はマカロニ・ウエスタン的で私の一番のお気に入りだ。そうか、別に灼熱の岩山や平原でなくても、十分にウエスタン的世界を構築できるんだな、と感心したものだ。
『キル・ビル』でエル・ドライバーに萌えた方(は、いねぇって)には是非コレクションしてもらいたい1本だ。ちなみに一応18禁なので、観れない年齢の人には酷だよなぁ~。日本版タイトルは
『ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ~血まみれの天使~』
です。なんか英語をカタカナにしただけって気が…
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映画の紹介をしてる場合じゃねェ…というものも、一応読んで下さっている方もいるので(どれだけいるのか分かりませんが)、《映画冒険家》と名乗っている以上キッチリやらせてもらいます。すいませんね、更新の間隔が長くって…(涙)
今回は前々々回に書いた『クレオパトラ・ウォン』の続編(3作目)である『PAY OR DIE』(79)を紹介しようと思う。日本でも『ドラゴンレディ1』というタイトルでリリースされたことがあるので、観た方がいるのかもしれない。非常に少ないと思うけど。
『クレオパトラ・ウォン』がアクション面でグダグダなので多少マイナスの評価だったので今回はどうかな?と危惧していたのだけれど、何が、どうして?!面白いじゃないの、これ!以前観た予告編(『DEVIL'S THREE』の別タイトルだった)の印象通りじゃん。
犯罪王デブリンが、仲間に裏切られて愛娘を誘拐され、多額の身代金を要求される。彼は娘の為、犯罪王としてのプライドを捨て、敵であるインターポールの女エージェント・クレオパトラ・ウォンに救出を依頼する。ウォンはその言葉に嘘はないと知ると、強力な助っ人としてゲイのクンフー使いと、300ポンドの巨漢女占い師を招きチームを結成する。こうして凸凹トリオの笑いと格闘の珍道中が開始された…。
というのが大まかなストーリーで、全編これご都合主義でトントン拍子に話は進んでいき、気が付けばあっという間に映画は終わっているという、いい加減と言っちゃぁいい加減なのだけれど、テンポがいいのでこれはこれでアリかな?という気にさせてくれる。
天下の映画検索サイト・IMDbに載っているレビューではクソミソに書かれていたこの作品(83分間を返せ!とかヒドイのばっか)だが、私自身は十分に楽しめた。英語の台詞を理解してないのもあるのだけれど、主演のマリー・リーのアクションが一番のお目当てだったので、全~然気にならなかった。やっぱ何本もアクションやってりゃ上手くなるもんだな(殺陣師の技量にもよるが)。前作より表情の作り方なんかが数段進歩している。もう、このアクションシーンを観ただけでも十分モトは取れたって感じ。
男たちよ、美女格闘アクション映画(東洋人限定)を観て萌えなさいっっ!!
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今回は、未だ謎の多い映画製作国である朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が1986年に製作した愛国軍事アクション映画『命令027号』を紹介したいと思う。
今日も厳しい訓練に勤しんでいる偵察部隊の隊長の元に、ある日上官から指令が下される。それはこの国に新たに侵攻してきた敵軍の本拠地の発見と攻撃である。これを本隊が行動を開始するまでの3日間で行うのだ。
隊長は敵軍にスパイとして送り込んでいる女兵士と連絡を取りながら襲い掛かる敵を倒し、味方を数名失いながらも本拠地を突き止め、いよいよ総攻撃を開始する。愛する人民と祖国を守るために…!
この作品は国家が「うちの兵士たちはこんな凄い事をやってますよ~」と軽くPR(と年少者たちへの教育?)するために娯楽映画として製作されたんだと思うが、全くこの国とは関係ない第三者の我々としては、
「兵士たちが超人的な活躍をする戦争アクション映画」
にしか映らない。
この映画の最大の見せ場は、正義の偵察部隊員が繰り出すハイテクニックなテコンドー・アクションと、悪役兵士の殺人的受け身(?)である。画面栄えする蹴り技・空中技から、脚で相手の首を絞め、壁に頭を打ち据えるというエグイ実戦的な技まで何でも見せてくれる。
また、殺人的受け身では、蹴られて高所からテーブルに落ちる場面にて、普通のアクション映画であれば安全性の関係上、テーブルは壊れやすい素材で製作し落ちる時は背中から落ちるものだが、そんなものは一切なく、頭から落下し、テーブルは割れていないのだ。…大丈夫か?!
それと手斧を敵の兵士に投げつけるシーンでは、投げて背中に突き刺さるまでを1ショットで撮影していて
「えっ、マジっすか?!」
と思わずにはいられない。
刺さったあとストップモーションになって、すぐ次の場面に切り変わるんだけど、その間何があったんでしょうか?ホント、独裁政権国家のアクション映画、無茶しよります。
いつもいつもこんな貴重な映画ばかりを観せてくれる会津信吾さん、本当にありがとうございます。考えていただいたコピー、今回のタイトルで使わせていただきました!
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話はいたって単純。世界的な諜報機関のエージェントであるクレオパトラ・ウォン(とその仲間たち)が偽札製造グループを壊滅させるといったもので、まぁ、別に珍しくも何ともないよくある類のものだ。こういう海千山千のスパイ活劇に観客が求めるのは、個性的な主人公か、変わった秘密兵器だ。この映画にはバイクの後方にマシンガンをつけたケッタイな兵器が登場するが、よくあるものなので別に驚きはしなかった。しかしこの映画の主人公はうら若き女性なのである。こうなると話は別だ。
何ともありきたりなマシンガン付きバイクも彼女が操縦すると
「うわっ、カッコええ!」
となり、大勢の悪漢たちを得意のクンフー(だよな、一応)でなぎ倒すと
「やれっ、いけっ、クレオパトラ・ウォン!!」
てな具合になってしまうのだ。《アジア美女に蹴られたい男協会》の会員か、私は?!
さて、何故こんな映画に興味を持ったのかというと、主演のマリー・リーの主演作『Devils 3』(ビデオ邦題『ドラゴンレディ1』)の予告編を輸入ビデオのクンフー映画予告編集で観たからだ。長い髪に、キックを出す際よく上がる脚を見て凄く興味を持ったのだ。そしてどこかのショップのカタログに『クレオパトラ・ウォン』のタイトルを発見、「観たいなぁ~」と思いつつ約5年の月日が経過したのだった。今年に入って再び興味が再燃、《非ハリウッド娯楽映画》の同士(私的には師匠だと思ってますが)である会津信吾さんにメールを送ったところ、コピーをいただけることになったのだ。あぁ、長年夢見てきたこの作品がついに…!
結局、感想としては
「こんなもんだよね」
ではあったが、それでも観れないより観れたほうがいいに決まってる!動くマリー・リーが観られたんだから。
それにしても格闘アクションがシンガポール(フィリピン?)よりも香港へ行ってからのほうが凄くいいのは何故なんでしょう?
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ルチャ映画という呼称を私は使っているが、海外ではサント・ムービーという呼び方もされている。エル・サント主演作が多いのでこの呼び名が付いたのだが、いろんなルチャドールが主役を張っているので、彼らの気を損ねないように(読んでないから損ねないって!)ここではルチャ映画と呼ばせてもらう。
このジャンルの最初の頃はずばりルチャリブレを題材にしたもので、主人公がルチャドールになって富や名声を手に入れたり、逆にギャングたちに目を付けられ破滅的な末路を辿ったりといったスポーツ映画だった。それがそれまで試合シーン要員だった本職のマスクマンたちに子供たちの人気が集まるようになってくると、今度はそのマスクマンが主役のヒーロー映画に変化していくのであった。それが現在《ルチャ映画》と言われる物なのだ。
このヒーロー型ルチャ映画にもいろいろあって、実際のマスクマンが主演するものと、映画オリジナルのマスクマンが主演のものの2タイプがある。プロレスファンが観て(私のことね)興味があるのはやはり本物が出てくるヤツで、メキシコでルチャリブレのテレビ放映が再開される1989年以前の(最初のルチャ・テレビ放映は1952年だそうだ)、写真でしか見たことのない伝説のマスクマンたちの試合が観賞できるのはこのルチャ映画だけなのだ。
作品的には吸血鬼やミイラ男、狼男などのモンスターとか、ゴリラの脳を移植しようとするマッドサイエンティスト、遠い星からやってきた宇宙人などが、主役のマスクマンと闘うといった(もちろんそんな非現実的な敵ばかりじゃないが)どうしようもない物ばかりなのだが、それは頭が固くなった(画面だけ上品なハリウッド映画ばかり観ている)人の考えで、ちょっと子供心に帰って観賞してみたらこれほどワクワクさせられるものはない。ウルトラマン好きだったでしょ?仮面ライダー好きだったでしょ?
現実の人物であるマスクマンたちのもう一つの世界での正義と悪との闘いに、私たち(私とルチャ映画好き)は血湧き肉踊らせるのだ。