以前よりそのジャケット画の奇妙さで一度観たいと思っていた、タイ製『酔拳』パロディ映画(別名・トムヤム酔拳)こと『Thao Huay Lai Liew』をついに紹介できる日が来ようとは…う~ん非ハリウッド娯楽映画収集を諦めないでよかった。
話は、悪道場の師範代に父を殺された主人公が、復讐のため伝説の老武芸者の下に弟子入り、酔拳を会得し敵討ちを見事果たすという典型的なクンフー映画のフォーマットに則っているが、ここでカン違いをしてはいけないのはこの映画はコメディであるという事だ。えっ、『酔拳』だってコメディじゃないかって?あれはアクションがメインでコメディは味付け程度でしょ。このタイ版酔拳は基本がコメディでクンフー・アクションが味付けなんです。
とにかく主人公たち低所得層に住む中華系住民の描写が汚らしい。映画の開巻、いきなりバキュームカーを持ち出しての汚物ネタから始まったり、主人公が好意を持つヒロインがとにかくやかましく、観ていて感情移入しづらく生理的に受け付けないのはどういう事か?バンコクの人は地方出身者を馬鹿にするが(映画の中では)、この映画を観るかぎりでは中華系住民もかなりキライなのかも。
こういった苦行のようなギャグ場面を耐えれば、あとは夢のような楽しいクンフー・アクションの数々が待っている。観て驚いたのは、結構本格的なアクションが演じられているという事。香港映画が時差なしで数多く入ってくる国ゆえ、こういったアクションを真似るのもお手の物ってか。
トムヤム酔拳、っていうくらいだから『酔拳』のパロディシーンもちゃんとあります。お約束の蘇化子じいさんはちゃんと登場するし、山中のあばら家で身の回りのものを使用しての特訓シーンはちゃんと常備されていて文句は言わせない。ただ、やってる事はムチャクチャだけど。そして憎き仇には会得した酔拳でBANG!だ。ちゃんと酔拳映画ではお約束の「将軍令」がバックで流れるというこの徹底ぶり。思い出したけど主人公たちが使う拳法って猴拳なんですね。南方系出身者が多いのかな?タイ華僑って。
とまぁ、『マッハ!』以前のタイ式マーシャル・アーツ映画捜索は始まったばかりで(タイ式西部劇は3~4本観たけど)、圧倒的に鑑賞できる作品が少ないし、マーシャル・アーツ映画かどうかが判別不可なのが現状だ。ついこの間も女の子が蹴り足上げているジャケットのVCDを注文したのだが、こいつがビンゴだったら言うことないんだけどな…。
※補足 この映画の悪拳士役で、香港クンフー映画好きには名が通っている唐偉成(ウィルソン・タン)が出演しているとの情報を「超級龍熱」の龍熱さまよりいただきました。ご教示どうもありがとうございました。
という事は本作の武術指導も兼ねている可能性もありですね。