HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

大梵林(ボリウッド)映画祭 ~序章~『Om Shanti Om』

2008年07月24日 | インド映画

 未だ「インド映画は泥臭い」
「ハリウッドや日本と比べ映画後進国」
だと思っている一般映画ファンの固定概念を覆そうと密かに思っているHIMAGINE電影房が送る夏の一大イベント(あくまでもモニター上ですが)《大梵林映画祭》!!あっ、梵林 っていうのはねハリウッドが漢字表記で聖林と書かれるように(実際HOLLYWOODは柊の木という意味らしいのだが)、ボリウッドを勝手に漢字で当て字にしたものなのだ、全然一般的ではないが。


 この集中連載では主に70~80年代の《古き良き》ボリウッド製娯楽映画を紹介しようと思っているのだが、今回はわざわざ《序章》と銘打って2007年に製作された話題作『Om Shanti Om』を扱いたいと思う。何故か?それはこの作品の舞台がヒンディー映画黄金時代の70年代だったからだ。

 1977年のヒンディー映画界。一介のジュニア・アーティスト(エキストラ)のオーム・プラカーシュ(演:シャールク・カーン)は明日のスーパースターを目指して撮影所に足を運ぶ毎日。そんな彼の心の恋人はスター女優のシャンティー。巨大ボードビルに描かれた彼女を前に一人芝居を演じては悦に浸っていた。

               

 そんなある日、シャンティーが出演する作品にエキストラで参加したオームは撮影中の事故で炎に囲まれてしまった彼女を命がけで助けたことから二人の関係は急接近していくのだが、実は彼女は大物プロデューサー・ムケーシュと極秘結婚しており彼の子まで身ごもっていたのだ。ムケーシュは大手スポンサーの娘との結婚話も進行中でありシャンティーの存在を疎ましく感じた彼は深夜、シャンティーを映画セットに招き火を放って彼女を殺すことに決めた。

              

 燃えさかるスタジオ、シャンティーの絶望的な悲鳴。そこにちょうど居合わせたオームは彼女を救う為単身炎の中に飛び込むのだが、願いは叶わず大爆音とともにオームは撮影所の外まで吹き飛ばされ、ちょうど通りがかった映画スター・カプールの車に跳ねられてしまう。大急ぎで運ばれた大病院の集中治療室での治療の甲斐もなくオームは息絶えてしまうが、別の病室ではカプールの妻がちょうど新しい生命を授かったところであった…

              

 それから30年後、カプール家の一人息子として生を受け今やスター街道驀進中のオーム・カプールはあの日同じ病院で死んだ同名のオームとそっくりの顔となっていた。本日の撮影はクライマックスのダンス・シーン、お抱えの美人ダンサーズと共にノリノリで撮影していたのだが、特殊効果の炎が彼の顔をかすめた時、何か得も知れぬ感覚が体を走った。

               

 あれは一体なんだったのだろう?不思議な感覚に突き動かされるかのようにオームはあの大惨事のあった古い映画スタジオに足を運んでいた。そしてあの日シャンティーが殺されたセット跡にくると前世の記憶が一気に蘇ってきた。そう、オーム・カプールは同時刻にこの世を去ったオーム・プラカーシュの生まれ変わりだったのだ。そんなある日、ハリウッドで映画制作を行ったりして今や大物プロデューサーとなっていたムケーシュが30年ぶりにインドに帰ってくるというニュースが飛び込んできた。オームはあの日の復讐とシャンティーの弔い合戦のために行動に出た…

               


 現在ではハリウッド調の大作や、ミュージカル・シーンなしの作品、1ジャンルの作品も頻繁に製作されているヒンディー映画。私自身もここ昨今の欧米並みに洗練されたテイストの作品を追っかけていたが、
やはりインド映画はこうでなくっちゃ!
と再認識した次第だ。3時間の夢を見る為に庶民は汗水流して働き、わずかな収入を映画のチケットに換えているんだもの、いろいろ見せ場があったほうが楽しいじゃない?恋愛あり、感動あり、ダンスあり、アクションありとこの作品もインド娯楽映画の定石を踏まえていて夢見心地のまま上映時間はあっという間に過ぎていく。これぞ娯楽映画の醍醐味である。

 私自身インド映画は見ている割にはあまり詳しくないのだが、この作品には70~80年代のヒンディー映画のオマージュやそれを元にしたクスグリが入っているとの事。わかる人が観れば「あぁ~!」と思うらしいのだが、残念ながら全然判らんかった。『Sholay』のボードビルがあった所ぐらいかなぁ?判ったのは。

 監督であるファラー・カーンはこれが劇場第2作目。彼女(なんと女性だったのだ!)は以前は映画のコレオグラファーをしていたそうで、なるほどダンスシーンがとても美しく、時にはカッコよく撮られている。
 インド映画界におけるコレオグラファーの地位はとても高く、ダンスシーン全体(ダンス自体はもちろん、カット割や進行など)の責任を受け持つのだそうだ。香港映画でいうところの《武術指導》とよく似ている。それだからこそコアなファンがクンフー映画を観るときにユエン・ウーピンやチン・シウトンといった名前で映画を選ぶようにインドではコレオグラファーの名で映画を選ぶことがあるそうだ。

 ヒンディー映画だけではなく、世の中の《映画》という存在を愛している人たちであればこの『Om Shanti Om』、絶対観てほしい一作である。ちなみにこのタイトルの意味は「幸せでありますように」との事である。
えぇ、十分に幸福感を味あわさせて頂きましたとも!!


懐か新しいという感覚 『スピード・レーサー』

2008年07月23日 | その他の映画、テレビ

 近くのシネコンがメンズデーで1000円という料金だったので、この際に観たいものを観ておこうと思い、ウォシャウスキー兄弟の最新作『スピード・レーサー』(08)を選んだ。


 もはや語りつくされた事だが、この作品は日本のアニメ『マッハGOGOGO』が原作となっている。吉田竜夫アメリカン・コミック調の作風が違和感なく外国人キャストに移植されている。アニメに似た顔のキャストを選んでいたそうなのだがこのソックリぶりは驚きと同時に「よくそこまでしてくれた!」と感動を与えてくれる。

 映画のほとんどがCGで描かれていて本当に実写映画として成立するのかという心配事が映画を観る前にあった。キャストだけ人間使うんだったらいっそのことオール・アニメーションにしちゃった方が良くなかろうか?と。観た結果はそのスタイルには未だ違和感は残るものの、オール・セットで製作したらこれ以上予算掛かるんだろうなぁと納得し
「ま、これはこれで良しとしましょう」
という結論が出た。大作映画の短期間製作・コスト削減にはこのスタイルが今後映画制作のスタンダートになるのであろうか?

 この映画で感心したのは映画全体を覆う極彩色である。普段の生活では絶対目にすることの無いであろう人工的なカラーリングはちょうどアメリカのキャンディや風船ガムの人工着色料のカラーを思い起こさせる。これは
「この映画はリアルではなく夢にあふれたファンタジーですよ」
と我々に画面から訴えかけているようだ。これが日本だと変にリアル志向に走ってしまい原作や映画自体の世界観を台無しにしてしまう事が殆どだ。同じタツノコプロアニメが原作の『CASSHERN』を思い出してもらえば分かるだろう。

 次にこれが一番大事なことなのだが、ウォシャウスキー兄弟が原作アニメに多大なリスペクトを込めこの作品を制作しているって事だ。他の国の人はどう思うかわからないけど日本人の我々としては
「大事に、そして丁寧に製作してくれて有難う」
と感謝しなければならないだろう。そして、偉大なクリエーター・吉田竜夫がこの国で生まれた事も。エンドロールで《原作:吉田竜夫 『マッハGOGOGO』より》の文字が出たとき本気でそう思った。


 他の国ではこの映画の主題歌で、サビの部分は英語の主題歌(つまり『スピード・レーサー』)が流れる中、わが国だけあの『マッハGOGOGO』が流れる配慮に感謝!

         
 

これが聴きたかった! 『火山高』韓国版主題歌

2008年07月15日 | 韓国映画

 これこれ!この絶叫系メタルサウンドの主題歌だよ。

 『火山高』覚えている?映画雑誌から火が着き、ついには日本でも劇場公開された韓国製ファンタジー学園アクション・コメディ映画を。ただ、日本公開は紹介されてからずいぶん経っていたのでみんなも興味は薄れていたと思ったけど。タイミング悪すぎ。
 こういうのはさっさと公開しちゃったモン勝ちでしょ?私も韓国盤ビデオ買おうかと真剣に思ってた。結局は香港盤VCDを購入しちゃった。

 久々に『火山高』の映像をYOUTUBEで観たんだけど、面白いよね。全篇通して観てると結構ツラいものがあるけど、場面場面は今観てもすごくいい。
 「学園マトリックス」
なんて一部で言われてたけど、「パクリ」とか言われるのあえて判っていながら実行するだけエラいって。

 あっ、テレビで観ただけだけど日本語吹替版も結構好きです。声優陣がやたら豪華で。
 アニメ臭が鼻について一般客にソッポ向かれたのかなぁ?
  
    

中間報告 ~無事保護された中古ビデオ~ 其の九

2008年07月14日 | 中古ビデオ

 あと、もうちょっと!第九弾です。


  ●モンティパイソン 人生狂騒曲 (イギリス/83)
 イギリスのコメディ集団・モンティパイソンのフルメンバーが揃った最後の作品。人の生き死にをネタにしているので笑っていいものかどうか迷う所。かなり毒気がある作品。

  ●ヤングマスター (香港/80)
 ジャッキー・チェンがGH移籍後初めて製作したクンフー・コメディ映画。自身がこれで(クンフー映画製作は)最後と宣言したとおり、自らが主演してきたクンフー映画の集大成的な作品であり、と同時にジャッキー式アクション映画の始発点がこれである。

  ●夕陽のガンマン (イタリア/65)
 S・レオーネのマカロニ・ウエスタン第二作目。本場の西部劇に追いつけ追い越せとばかりにディテールにこだわり尽くしたマカロニのみならず西部劇全体からしてもマスターピースの一つであろう。雨の中を歩いてくるイーストウッドの姿にヤられた!

  ●許されざる者(吹替版) (アメリカ/92)
 こちらはイーストウッドの“最後の”西部劇。重苦しくて爽快感など微塵もないが、こういう映画って何かしら賞取れそうだと思った。実際アカデミー賞取ったけど。

  ●妖術秘伝 鬼打鬼 (香港/81)
 サモ・ハン製作の中華ホラーシリーズ第一作。東洋独特のジメっとしたホラー・テイストとクンフーが見事にマッチしていい感じ。サモ・ハン・ホラー映画の中ではこいつが一番好きだし、一番完成度が高いと思う。

  ●ラスト・ヒーロー・イン・チャイナ 烈火風雲 (香港/93)
 ジェット・リーがツイ・ハーク製作『黄飛鴻』シリーズと決別してすぐに製作されたパロディ版黄飛鴻モノ。こういうとこがいかにも香港らしい。パロディとはいっても出来は最上級。だって監督にバリー・ウォン、武術指導はユェン・ウーピンだもん。 

 ●リターン・トゥ・ジャスティス (アメリカ/89)
 マカロニテイストの現代アクション映画。ジャケットからは想像つかなかったんだけどなぁ…

 ●龍の忍者 (香港/82)
  真田広之の海外進出第一作。後年「バカ映画」として注目されることになるが、これを劇場で観ていたときにはそんな事思わなかった。たしかに前半の復讐劇と後半のコメディ調とのギャップはヘンだけど。OPの主題歌と忍者の特訓シーンがいつ観てもカッコいいっ!


                                 (たぶん)ラストの第十弾へ続く


予告 大ボリウッド映画際(仮)

2008年07月13日 | インド映画
 救済中古ビデオ紹介も終わらぬうちに次回予告っ!
ここ一ヶ月、何年かぶりにインド映画熱が襲い掛かってきまして、しかも今回は70~80年代モノばかりを狂ったように観ております。ここまでくるとどうかしちゃってます、こりゃ。

 というわけで(訳わかんないでしょ?)8月頃か早くて7月後半には古いヒンディー映画を中心とした、仮タイトル『大ボリウッド映画際』をやりたいと思っています。…途中で挫折するかもしれんが。









 動画はボリウッドのマスターピース『Sholay』(75)と、最近製作されたリメイク作(といわれている)『Ramgopal Varma Ki AAG』(08)の同じホーリー祭りのミュージカル場面。何で技術もアップしてるはずのリメイク作がこんなにスケール小さくて、オリジナルのほうが広々としてるんだろう?オリジナルが70mmフィルムだからとかの問題だけじゃないような気がするんだけど?
 もちろん曲も踊りも断然オリジナルが一番だよね。 

彼女の新たな物語 タイ・アニメ 『Nak』

2008年07月07日 | タイ映画

 中古ビデオ紹介もあと少しとなりましたが、ちょっと変更。久々の作品紹介となります。


 今回はタイ初の本格的劇場CGアニメーション映画『Nak』(08)です。なんだ、また日本アニメのパクリか、と思われるかもしれませんが、ところがどっこい!オリジナリティあふれる作画と世界公開も十分に狙えるほどのクオリティの高さをもっているのだ、これが!

 お化け(ピー)と人間がなんとなく共存しているタイの農村。年に一度の村祭りの夜に母親に内緒で遊びに来た姉弟が人間界を征服しようと企む悪霊に襲われ、生贄として弟を誘拐されてしまう。助けを求めお化けの居住区へ迷い込んだ姉は心優しい女性の幽霊であるナークの協力を得ると、彼女の導きによって悪霊たちの本拠地であるバンコックへと向かう。生贄の儀式の時である皆既日食までに彼女たちは弟を救う事が出来るのであろうか…?

               

 タイ人の間では知らぬもののいない妖怪メーナーク・プラカノンを主人公にして、今までの定番ストーリーではなく(産死したナークが幽霊となりながらも愛する夫の帰りを待つ、というもの)全く新しい物語を作り出した。それが成功してるかどうかは最終的な興収が分からないので何ともいえないが、少なくとも元の話を知っている私には十分に楽しめた。
 ま、ファミリー向けなので夫に言い寄ってくる女性たちを驚かしたり、幽霊と分かった夫がナークから逃れようとするといったメーナーク映画では基本中の基本のエピソードはキツイか。悪霊たちと戦う正義の妖怪という『ゲゲゲの鬼太郎』のようなキャラクターには変化したが、強い母性愛の持ち主といった面はそのまま生かされているのでまったくの改悪ではないと思う。

  なぜ世界標準的レベルを持った作品になり得たのだろう?その答えともいえる人物がプロデューサー(共同)として名を連ねていた。『マッハ!』、『トム・ヤム・クン!』そして最近では『チョコレート』の監督として世界のアクション映画ファンにその名は知られているプラチャヤー・ピンケーオが参加していたのだ。なるほど世界レベルというものを知ってるわ、こりゃ。最近の作品では一場面CGアニメーションが挿入されていたが、きっと本格的劇場アニメ映画がやりたかったに違いない。

            

 ともあれ、ナークの八面六臂の大活躍も素敵だが、静かなタイの農村や騒がしいバンコックをマンガ的ではあるが忠実に描いた背景画、ノスタルジーあふれる農村での生活描写など“動”以外の場面も注目なので是非観てもらいたいと思う。

 でも、これ日本公開されるのかな?してほしいな…