HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

補足:その他のアルゼンチン・プロレス番組について

2007年09月26日 | アルゼンチンプロレス
 ここでは『TITANES EN EL RING』以降のアルゼンチンにおけるプロレス番組について紹介したいと思う。もう少しガマンしてね。


 LUCHA FUERTE
 
 TITANES EN EL RINGに登場していたルーベン・ペウセーレをエース格でスタートさせた番組で、オープニングでチアガールたちが踊ったり、入場前に選手のプロモ映像が流れたりと新しい演出が見受けられるが、歌付きのテーマ曲や超現実的なキャラクターたちが登場するなど基本的にはTITANES~の路線を引き継いだ後続番組。1987~90年まで放映された。


 RANBO Y SUS TITANES
 
 タイトルどうりランボー(あの映画のパクリっスよ)なるキャラクターが主役で、舞台(あるいはスタジオ)に収容所内の闘技場をイメージした八角形のリングを設置しそこで雌雄を決するというもので、他のプロレス番組との差別化を図ったのかもしれない。ここでは今まで登場していた超現実的なキャラクターは少なく、地に足が着いた設定のキャラクターたちが活躍する(警官とか東洋系ギャングとか)。レスリング面でも中軽量級の選手がムーンサルトアタックを見せるなどかなり進歩している。90~91年に放映。


 GUERRERO DEL RING
 
 試合映像しか観てないので全体像は分からないが、スタジオマッチを流すだけのオーソドックスな手堅い作りで、これまたTITANES~(後期)にも出場していたギタノ・イワノフという選手がベビーフェイス軍のリーダーとして登場している。放映時期は不明だがかなり最近の番組らしく、場外へトペ・コンヒーロを放ったりと技術的にはルチャリブレ色が強い。ちなみにアルゼンチンではプロレスの呼称はキャッチといい、ヨーロッパと同じ。


 LUCHA TOTAL
 
 まるで対戦格闘ゲームのような雰囲気の新感覚プロレス番組。もうこの辺になると明らかにWWEの影響を被っていて、正義の白忍者、特殊部隊員、街の悪ガキなど突拍子もないキャラクターはすっかり影を潜めている(忍者が許せれるのであれば)。普通の試合形式の他にスポーツチャンバラで使うようなウレタン製の武器を持って戦う試合形式もあり、バラエティに富んでいる。各選手の可動式フィギアや忍者の武器などキャラクター商品が当時発売されていてこれまたWWEっぽい。


 100%LUCHA
 
 現在アルゼンチンで放映しているプロレス番組はこの100%LUCHAひとつである。WWE的今風キャラクターは相変わらずだが、怪奇派キャラクターも多数登場しておりTITANES~から続くアルゼンチンプロレス番組の伝統を引き継いでいる感があり今後の展開に期待が持てる(とはいっても実物をなかなか観る事ができないのだが)。


 以上、3回に渡って連載したアルゼンチンプロレス事情(そんなに専門的な内容ではないが)、皆様いかがだったでしょうか?世界にはいろんなスタイルのプロレスがあるんだなぁって私はとても勉強になりました、自分で書いていて。

『TITANES EN EL RING』 怪人図鑑

2007年09月19日 | アルゼンチンプロレス

 もう少し『TITANES EN EL RING』の話題にお付き合い願いたい。

 この番組が開始された当初は上の写真のように各国の代表選手が(当然フェイクあり)チャンピオンシップを懸けて行われる世界選抜戦のようなものだったらしく、最初から奇天烈なキャラクターたちが跋扈する夢のワンダーランドではなかったみたいだ。

 だが70年代に入ると番組のカラーが突如としてガラッと一変する。視聴率低下が原因かどうかはしらないが、ともかく我々がイメージする『TITANES EN EL RING』であるカラフルで、まるでSF・ホラー映画に登場するようなキャラクターたちが登場しだし、アルゼンチンの子供たちを魅了する。


 さぁ、ここで『TITANES EN EL RING』怪人図鑑の始まりはじまりぃ~。


 まず最初は、番組中最も人気のあった怪奇キャラの決定版ラ・モミア(ミイラ男)。殴る・絞めるといった単調なファイトスタイルに関わらず、メインやセミといった上のほうの試合に登場する。番組の最後まで登場した息の長いキャラクターだ(モチロン中身は変わっているが)。


 モミアのライバルであるモミア・ネグロ(黒ミイラ)。生前(?)はボクサーだったらしく、手にはグローブがはめられている。


 悪役軍団の総大将的な存在のディアボロ(悪魔)。容姿を見て判るように結構コミカルな面も持ち合わせており、子供たちの人気も高かったことだろう。


 ここまでは実際に試合する姿を見たことのあるキャラクターたち。次からは「本当に試合してたの?!」というキャラクターの登場だ。


 左はオンブレ・ベヘタル(野菜男)、右はエル・アンドロイデ(合成怪人)。もうここまでくると50年代SF映画に登場する怪物みたい!こういうのが実は嬉しかったりするんですが。


 左がサトゥルノ2021(土星怪人)、右はコスモス(宇宙人)。番組を掻き回す役目だったに違いない。だって試合できる格好じゃないもん。


 とまぁ、簡単ではありますが私のお気に入り怪人たちを紹介してみました。もちろんこれら怪奇キャラクターに対抗する正義超人…じゃなかった正統派レスラーたちもいるわけでして、私なんかは「これこそオレの求めていた理想郷だ!」と思いましたもん。今の大技ラッシュのプロレスに飽きたプロレスファンたちにはぜひ一度観てもらいたいですな。これをプロレスと認めるかどうかはそれぞれですが…

こんなプロレスがあったなんて… 『TITANES EN EL RING』

2007年09月17日 | アルゼンチンプロレス

 プロレス興行が行われている国には、必ずその創世記には国民の期待を背負ったカリスマ的英雄が存在する。日本ならばその地位にあるのが力道山だし、メキシコならエル・サントであろう。彼らはその活動をリング上のみならずコミックスや映画など他メディアにまで進出し自らの名声をますます高めていった…

 つい最近だが、YOU TUBEにて面白い動画を鑑賞した。それは古いアルゼンチンのプロレス番組で、ヒーロー番組やバラエティ番組に登場するような容姿のキャラクターたちがリング上で闘っている動画だった。

「何これ?面白いじゃない!!」

 この手の作り物っぽいプロレスが好きな私としてはもう凄く興味が惹かれたわけで、もう他の映像はないか?と探しまくってほぼ1日中そのアルゼンチン産の不思議なプロレス番組を見続けていたんですわ。
 そのうち、この番組のタイトルが『TITANES EN EL RING』だという事、ちょくちょく登場する金髪に黒髭の巨体のレスラーがこの番組の主役であるマルティン・カラダジアンなる人物という事が分かった。
 一体、『TITANES EN EL RING』とはいかなる番組か…?



 アルゼンチンの有名レスラー兼俳優であるマルティン・カラダジアン(Martin Karadagian)は1922年アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。グレコローマン・レスリングを幼い頃に始め、38年にはタイトルホルダーになったほどの強者。 彼は1962年に自身の企画であるスタジオ公開プロレス番組『TITANES EN EL RING』(リング上の巨人)を立ち上げる。あのWWF(現・WWE)が80年代に“ファミリー・エンターティメント”としてキャラクター重視路線を始める約20年前にアルゼンチンに同様のプロレス形態があったことは驚きである。

キャラクターたちも現在のAAAやホーガン政権時のWWFに引けを取らない。名前だけを羅列すると、カバジェロ・ロホ(赤い紳士)やラ・モミア(ミイラ男)、ディアボロ(悪魔)、エル・アンドロイデ(アンドロイド)、ジンギス・カン(蒙古王)、ヒッピー・ジミー(ヒッピー野郎)、エル・オンブレ・ベヘタル(野菜男)等々…どう、実に多彩でしょ?

                                
                 
さまざまなキャラクターたち(イロモノたちも多いが)の頂点に立っているのが“エル・カンペオン”ことカラダジアン。彼が挑戦してくる悪役レスラーたちをエルボー・スマッシュでなぎ倒していく姿はまさしく“アルゼンチンのホーガン”だ。当時の子供たちは彼の活躍ぶりに一喜一憂した事だろう。
 だが、現在の我々の目で試合をみると『TITANES~』における彼のファイトぶりは、殆どが殴ったり蹴ったりの単調なものでとてもレスリングをやっていたなんて思えない(初期は普通のレスリングスタイルだったようだが)。彼は相手の攻撃をセール(受け)し続けることによって観客の注目を集め、最後に倍返しするという王道スタイル(よく言えばだが)で、そのせいかドロップキックやフライング・ヘッドシザースを簡単に出せる若い選手は番組前半に登場し、カラダジアンら重鎮らはメインに出てくる事が多い。

しかし、30年近く戦い続けたカラダジアンの体調に陰りが見え出し番組の人気も下落。ついに1988年、26年もの間アルゼンチンの子供たちを魅了した『TITANES EN EL RING』は番組に終止符を打つ事となり、その3年後カラダジアンは糖尿病の合併症により69歳でこの世を去ることになる。

 20世紀も終わりを告げ、新世紀に入った2001年、『TITANES~』は突如復活する(単発では放映していたようだが)。以前のキャラクターも多少残しつつ(中身のレスラーはもちろん違うが)新たなキャラクターも登場させ“栄光よもう一度!”とばかりにスタートしたが、“本物”であるWWEやメキシコAAAのTV中継や後続のプロレス番組の台頭により2007年、長きにわたってアルゼンチン・プロレスの代名詞であった当団体は活動を停止してしまう。
 団体こそなくなってしまったが、『TITANES EN EL RING』の名はアルゼンチンの当時熱狂した世代の人たちの間ではノスタルジーと共に語られる存在なのだ。

 少しでも興味を持たれた方は一度YOU TUBEで覗いてみてはいかがでしょう?どの動画をとっても、今まで観てきたプロレスとは明らかに違う新しい“何か”を得られるはずだから…