大韓航空機にて1
韓国という国が好きなわけではないのだが、僕は大韓航空機は好きである。もちろん、メンバーになっている。
チェックインしたのは11時半過ぎ。さっそく例のスカイパスを見て、うち込まれたマイル数を確認した。
やれやれ、これで帰れる。明日の朝はソウルだ。窮屈な座席で6時間近く辛抱しなくてはならない旅。だが、これは格安チケットだから、辛抱しなくてはならない。当然のことだ。
安堵感も手伝って、疲労が押し寄せてきた。しかし、今から自分の座席に着くまでが、ひと仕事である。いつものことだが、今日も自分の席に着くまでは、安心できない。僕は頭の中でそんなことを考えていた。
日本人に比べると、どうも、韓国人は乗り降りのマナーが悪いようだ。いよいよ飛行機に乗るという段になると、並んでいても平気で、列に割り込むし、後がつかえていても、立ち止まって通せんぼ状態を作る。
後ろの人は、イライラしながら彼が前に進むのを待っているが、それでも平気である。
これがなければ、大韓航空はもっと快適なんだがなぁ。安いから仕方がないが。僕は我慢がまんと自分に言い聞かせた。
座席に向かって、乗客が我れ先にと殺到しだすと、僕も負けずに、行儀もエチケットもあるもんかとばかりに、強引にヒトをかきわけて座席番号の方へ進んだ。
いつものように、チケットの半ぴらに書かれた座席表を見て、ホステスが指示した方へ重い荷物を持って、人をかきわけながら進んだ。
探していた番号をやっと見つけて、やれやれと思ったのも束の間、アルファベットの記号が違う。 あれ、??違うじゃんか。
入り口では確かに、23番と案内された。が、来てみれば記号が違う。
中に入ってくる人の列に逆らって、僕はその場に立ち止まってしまった。案内をしているスチュワーデスに、座席表を示しながら、イライラして、座席が違うじゃないかと声を荒げだ。そしたら、
「それは2階です。入り口の方に戻って2階に、おあがりください」という。
何? 人を押しのけてまで、ここまでやってきたのに。逆方向すなわち人の流れに逆らって、入り口に行きなさいだと。何たることだ。
僕ははいってくる乗客にぶっつかって、露骨に嫌な顔をされながら、入口へと人をかきわけて進んだ。
おかしい。確かに2階はビジネスクラスで、エコノミーではないはずだと思ったが、今まで2階などに、上ったことがないので、ひょっとしたら2階にも、エコノミー席があるのかもしれないと思い、2階に上ったものの、エコノミークラスの座席は見当たらなかった。
やっぱり思ったとおりだった。やれやれ、また間違ったか。何度間違って案内すれば気がすむんだ。
僕は乗務員だったら誰でも良い。捕まえて、声をあげてしっかり案内せいと怒りたくなった。重い荷物を持ったまま。また下に送りなければならないと思っただけでもいやになる。
幅がゆったりした座席には、フットレストも付いている。座席の広さも、エコノミークラスのそれに比べて1倍半は、ゆうにある。体を伸ばすと、床屋の椅子のように、楽な姿勢で寝る体勢だってとれる。数えてみると、30数座席。
ダメもとで、僕は近くにいた、らスチュワーデスを捕まえて、僕の座席はどこかと、とぼけてきいた。
「1番後ろの窓側です。どうぞお掛けください」と彼女は案内した。
「いや、違います。僕の席はエコノミーですよ。」
僕は内心、お前さんまた嘘をつくのか、と反発した。
「本日はこの座席で結構です。お掛けください」。
「本当ですか。重ねていうが、僕の席はエコノミーで、この座席ではないはずです」が、
「いいえ、今日は特別サービスなんです。遠慮なくお座りください」。
一体これはどういう風の吹き回しだ。僕は信じられない。そう思ったが、黙ってしまった。だが、いわれたままに指定の座席に腰をおろした。
一生に一度くらいは、ビジネスクラスやファーストクラスに乗ってみたいと思っていたが、僕の予定では、いよいよこれで海外旅行もおしまいだという、最後の日にでも、乗ってみるつもりでいた。ところが、思いがけなくも、今日、今着席して味わうことができることになったのだ。
このことで、僕の心の中はがらりと変わった。気分が良くなったのである。イライラと、とげとげしい気持ちは、霧散した。
あははー、なんと単純な奴なんだ。この俺れは。
僕は自分の軽さに苦笑した。
つづく
韓国という国が好きなわけではないのだが、僕は大韓航空機は好きである。もちろん、メンバーになっている。
チェックインしたのは11時半過ぎ。さっそく例のスカイパスを見て、うち込まれたマイル数を確認した。
やれやれ、これで帰れる。明日の朝はソウルだ。窮屈な座席で6時間近く辛抱しなくてはならない旅。だが、これは格安チケットだから、辛抱しなくてはならない。当然のことだ。
安堵感も手伝って、疲労が押し寄せてきた。しかし、今から自分の座席に着くまでが、ひと仕事である。いつものことだが、今日も自分の席に着くまでは、安心できない。僕は頭の中でそんなことを考えていた。
日本人に比べると、どうも、韓国人は乗り降りのマナーが悪いようだ。いよいよ飛行機に乗るという段になると、並んでいても平気で、列に割り込むし、後がつかえていても、立ち止まって通せんぼ状態を作る。
後ろの人は、イライラしながら彼が前に進むのを待っているが、それでも平気である。
これがなければ、大韓航空はもっと快適なんだがなぁ。安いから仕方がないが。僕は我慢がまんと自分に言い聞かせた。
座席に向かって、乗客が我れ先にと殺到しだすと、僕も負けずに、行儀もエチケットもあるもんかとばかりに、強引にヒトをかきわけて座席番号の方へ進んだ。
いつものように、チケットの半ぴらに書かれた座席表を見て、ホステスが指示した方へ重い荷物を持って、人をかきわけながら進んだ。
探していた番号をやっと見つけて、やれやれと思ったのも束の間、アルファベットの記号が違う。 あれ、??違うじゃんか。
入り口では確かに、23番と案内された。が、来てみれば記号が違う。
中に入ってくる人の列に逆らって、僕はその場に立ち止まってしまった。案内をしているスチュワーデスに、座席表を示しながら、イライラして、座席が違うじゃないかと声を荒げだ。そしたら、
「それは2階です。入り口の方に戻って2階に、おあがりください」という。
何? 人を押しのけてまで、ここまでやってきたのに。逆方向すなわち人の流れに逆らって、入り口に行きなさいだと。何たることだ。
僕ははいってくる乗客にぶっつかって、露骨に嫌な顔をされながら、入口へと人をかきわけて進んだ。
おかしい。確かに2階はビジネスクラスで、エコノミーではないはずだと思ったが、今まで2階などに、上ったことがないので、ひょっとしたら2階にも、エコノミー席があるのかもしれないと思い、2階に上ったものの、エコノミークラスの座席は見当たらなかった。
やっぱり思ったとおりだった。やれやれ、また間違ったか。何度間違って案内すれば気がすむんだ。
僕は乗務員だったら誰でも良い。捕まえて、声をあげてしっかり案内せいと怒りたくなった。重い荷物を持ったまま。また下に送りなければならないと思っただけでもいやになる。
幅がゆったりした座席には、フットレストも付いている。座席の広さも、エコノミークラスのそれに比べて1倍半は、ゆうにある。体を伸ばすと、床屋の椅子のように、楽な姿勢で寝る体勢だってとれる。数えてみると、30数座席。
ダメもとで、僕は近くにいた、らスチュワーデスを捕まえて、僕の座席はどこかと、とぼけてきいた。
「1番後ろの窓側です。どうぞお掛けください」と彼女は案内した。
「いや、違います。僕の席はエコノミーですよ。」
僕は内心、お前さんまた嘘をつくのか、と反発した。
「本日はこの座席で結構です。お掛けください」。
「本当ですか。重ねていうが、僕の席はエコノミーで、この座席ではないはずです」が、
「いいえ、今日は特別サービスなんです。遠慮なくお座りください」。
一体これはどういう風の吹き回しだ。僕は信じられない。そう思ったが、黙ってしまった。だが、いわれたままに指定の座席に腰をおろした。
一生に一度くらいは、ビジネスクラスやファーストクラスに乗ってみたいと思っていたが、僕の予定では、いよいよこれで海外旅行もおしまいだという、最後の日にでも、乗ってみるつもりでいた。ところが、思いがけなくも、今日、今着席して味わうことができることになったのだ。
このことで、僕の心の中はがらりと変わった。気分が良くなったのである。イライラと、とげとげしい気持ちは、霧散した。
あははー、なんと単純な奴なんだ。この俺れは。
僕は自分の軽さに苦笑した。
つづく