追い出し部屋
会社にとって「戦力外」といえる社員を集め、自己都合退職に追い込むための部署――名だたる大企業に、「キャリア開発室」、「人材強化センター」などのもっともらしい名前をつけた「追い出し部屋」が実在することが、続々と明らかになっている。
「追い出し部屋」もさまざまで、雑用や他部署の応援ばかりで仕事をほとんど与えないところもあれば、逆に達成不可能なノルマを与えるところもあるようだ。しかし、有形無形の圧力で社員を追い込む手法は共通している。
存在を否定され、精神はズタボロ。あまりにも酷い仕打ちと言えるが、表向きはれっきとした「仕事」という建前だ。精神的にきついといっても、正規の辞令で異動し、会社の命令に従った「業務」をするという点では、他の部署と変わりはない。もし「追い出し部屋」への異動を命じられた場合、その社員は違法だとして会社を訴えられるだろうか。板倉由実弁護士に聞いた。
●会社の「配転命令権」の濫用にあたる場合もある
「まず、会社の『配転(異動)命令権』は、当然に認められるわけではありません」
と板倉弁護士は言う。必ずしも会社に言われるまま「追い出し部屋」異動に従わなければならないわけではないのだ。
「『労働契約』で職種や勤務地が限定されている場合は、会社は、契約外の職種や勤務地へ配転を命ずる権利はありません。しかし、実際は、就業規則などで会社に幅広い『配転命令権』が定められていることが多いでしょう。とはいえ、会社は『配転命令権』を濫用することはできません」
このように板倉弁護士は説明する。
では、人事異動が、配転命令権の「濫用」になるのはどういう場合なのか?
「判例では、その異動が業務上の必要性のない場合や、他の不当な動機・目的をもってなされた場合、労働者に通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせる場合は、『配転命令権の濫用』として無効になるとしています」
●「追い出し部屋」への異動を命じた会社に、裁判所は賠償を命じた
最近も、この「追い出し部屋」問題で、裁判になって会社が負けた例があるという。
「オリンパス社員の訴えに対し、東京高裁が2011年8月に出した判決ですね。会社は、上司らの不適切な行為をコンプライアンス室に内部通報した40代後半の営業職の社員を、経験や能力とかけ離れた高度な専門知識が必要な技術部門に配転させた上、達成困難な高い業務目標を設定させました。
この社員が目標を達成できなかったことを理由に評価を下げて、さらに、別の部門へ2回目、3回目の異動を命じました。3回目は新入社員レベルの勉強以外に仕事がない状況に追い込み、『○○くん改善計画』と題した文章を配るなどのパワハラも続けました。東京高裁は3回の異動すべてを人事権の濫用であり無効と断じ、さらに一連のパワハラ行為についても、会社と上司に対する賠償を命じました」
このような判例は、「追い出し部屋」で苦しんでいる社員にとって参考になるかもしれない。さらに、追い出し部屋への異動は「その経緯や『部屋』での業務内容などによっては、人事権の濫用として無効となるのみならず、人格的評価をおとしめる不法行為として損害賠償が認められる場合がある」と板倉弁護士は言う。「追い出し部屋」に異動されたら、泣き寝入りせずに裁判で戦ってみるのも一手だろう。
最後に僕が一言
会社は利益追及という使命のほかに人を養うという社会的な責任がある。追い出し部屋なるものは、企業の社会的責任という面からその存在が問われなくてはならない。追い出し部屋というような姑息な手段ではなくて正面から退職を迫ればいい。やめざるをえないような状況に放り込んで自主退職に追い込もうとするところが、僕の正義感では納得出来ない所である。過去にオリンパスでこうしたことが裁判沙汰になったように記憶しているが、追い出した側(経営者)は犯罪者ではなかったか、社長は粉飾決算をして実刑を食らった犯罪者だ。その犯罪者が追い出し部屋に労働者を放り込んだとすれば、話は逆である。追い出し部屋に放り込まれなくてはならないのは経営者である社長だ。
会社にとって「戦力外」といえる社員を集め、自己都合退職に追い込むための部署――名だたる大企業に、「キャリア開発室」、「人材強化センター」などのもっともらしい名前をつけた「追い出し部屋」が実在することが、続々と明らかになっている。
「追い出し部屋」もさまざまで、雑用や他部署の応援ばかりで仕事をほとんど与えないところもあれば、逆に達成不可能なノルマを与えるところもあるようだ。しかし、有形無形の圧力で社員を追い込む手法は共通している。
存在を否定され、精神はズタボロ。あまりにも酷い仕打ちと言えるが、表向きはれっきとした「仕事」という建前だ。精神的にきついといっても、正規の辞令で異動し、会社の命令に従った「業務」をするという点では、他の部署と変わりはない。もし「追い出し部屋」への異動を命じられた場合、その社員は違法だとして会社を訴えられるだろうか。板倉由実弁護士に聞いた。
●会社の「配転命令権」の濫用にあたる場合もある
「まず、会社の『配転(異動)命令権』は、当然に認められるわけではありません」
と板倉弁護士は言う。必ずしも会社に言われるまま「追い出し部屋」異動に従わなければならないわけではないのだ。
「『労働契約』で職種や勤務地が限定されている場合は、会社は、契約外の職種や勤務地へ配転を命ずる権利はありません。しかし、実際は、就業規則などで会社に幅広い『配転命令権』が定められていることが多いでしょう。とはいえ、会社は『配転命令権』を濫用することはできません」
このように板倉弁護士は説明する。
では、人事異動が、配転命令権の「濫用」になるのはどういう場合なのか?
「判例では、その異動が業務上の必要性のない場合や、他の不当な動機・目的をもってなされた場合、労働者に通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせる場合は、『配転命令権の濫用』として無効になるとしています」
●「追い出し部屋」への異動を命じた会社に、裁判所は賠償を命じた
最近も、この「追い出し部屋」問題で、裁判になって会社が負けた例があるという。
「オリンパス社員の訴えに対し、東京高裁が2011年8月に出した判決ですね。会社は、上司らの不適切な行為をコンプライアンス室に内部通報した40代後半の営業職の社員を、経験や能力とかけ離れた高度な専門知識が必要な技術部門に配転させた上、達成困難な高い業務目標を設定させました。
この社員が目標を達成できなかったことを理由に評価を下げて、さらに、別の部門へ2回目、3回目の異動を命じました。3回目は新入社員レベルの勉強以外に仕事がない状況に追い込み、『○○くん改善計画』と題した文章を配るなどのパワハラも続けました。東京高裁は3回の異動すべてを人事権の濫用であり無効と断じ、さらに一連のパワハラ行為についても、会社と上司に対する賠償を命じました」
このような判例は、「追い出し部屋」で苦しんでいる社員にとって参考になるかもしれない。さらに、追い出し部屋への異動は「その経緯や『部屋』での業務内容などによっては、人事権の濫用として無効となるのみならず、人格的評価をおとしめる不法行為として損害賠償が認められる場合がある」と板倉弁護士は言う。「追い出し部屋」に異動されたら、泣き寝入りせずに裁判で戦ってみるのも一手だろう。
最後に僕が一言
会社は利益追及という使命のほかに人を養うという社会的な責任がある。追い出し部屋なるものは、企業の社会的責任という面からその存在が問われなくてはならない。追い出し部屋というような姑息な手段ではなくて正面から退職を迫ればいい。やめざるをえないような状況に放り込んで自主退職に追い込もうとするところが、僕の正義感では納得出来ない所である。過去にオリンパスでこうしたことが裁判沙汰になったように記憶しているが、追い出した側(経営者)は犯罪者ではなかったか、社長は粉飾決算をして実刑を食らった犯罪者だ。その犯罪者が追い出し部屋に労働者を放り込んだとすれば、話は逆である。追い出し部屋に放り込まれなくてはならないのは経営者である社長だ。