優美は36歳、今や出身校の講師を勤め、ファッション界で注目を集め始めた若手の気鋭だ。
2人の出会いは、あるファッション雑誌がヨーロッパの生活全般に関る雑貨の輸入を行う若手経
営者と、新しいファッションで注目を集め始めた優美の、誌上対談をセットした時からだった。
あやと志乃は共に優美の服飾文化学校の後輩で、師と生徒という関係である。
2人は優美に新しい店の企画に参加するよう、声をかけられたのだ。
あやにとっても志乃にとっても、優美は憧れの大先輩であり師だった。特にあやは服飾の学校を
出てから4年、なかなか思いにかなった職場を得られず、都内の小さな店を転々としてきた。
これも修業と腹をくくって、それなりに熱意を持ってやってきたが、さすがに24歳の声を聞く
と、焦りとも苛立ちとも分らぬ気持ちが、胸の奥に淀み始めていた。
ここらで、現状を打ち破るような、何かが欲しかった。優美からの誘いは、そんな気持ちに強く
響いた。
「これだ、これこそ待っていたものだ」
彼女は二つ返事で受け入れた。
桐山という男については良く分らなかったが、背が高く整ったはっきりとした目鼻立ちは男とし
ては整い過ぎていて、その前に立ちその鳶色の眼で見られると落ち着かなく不安を感じた。
最初会った時から、そのいかにも育ちの良さそうな風貌とは裏腹に、どこか堅気ではない派手さ
に危いものを感じた。
しかし一方では、海外貿易などという別世界で活躍する人とは、こんなものなのだろうと、妙に
納得させられるものがあった。
それと同時に、常にそのファッション性において、時代を先取りした、意表を突くきらめきを見せる優美とは、波長が合うのだろうとも思っていた。
2人の出会いは、あるファッション雑誌がヨーロッパの生活全般に関る雑貨の輸入を行う若手経
営者と、新しいファッションで注目を集め始めた優美の、誌上対談をセットした時からだった。
あやと志乃は共に優美の服飾文化学校の後輩で、師と生徒という関係である。
2人は優美に新しい店の企画に参加するよう、声をかけられたのだ。
あやにとっても志乃にとっても、優美は憧れの大先輩であり師だった。特にあやは服飾の学校を
出てから4年、なかなか思いにかなった職場を得られず、都内の小さな店を転々としてきた。
これも修業と腹をくくって、それなりに熱意を持ってやってきたが、さすがに24歳の声を聞く
と、焦りとも苛立ちとも分らぬ気持ちが、胸の奥に淀み始めていた。
ここらで、現状を打ち破るような、何かが欲しかった。優美からの誘いは、そんな気持ちに強く
響いた。
「これだ、これこそ待っていたものだ」
彼女は二つ返事で受け入れた。
桐山という男については良く分らなかったが、背が高く整ったはっきりとした目鼻立ちは男とし
ては整い過ぎていて、その前に立ちその鳶色の眼で見られると落ち着かなく不安を感じた。
最初会った時から、そのいかにも育ちの良さそうな風貌とは裏腹に、どこか堅気ではない派手さ
に危いものを感じた。
しかし一方では、海外貿易などという別世界で活躍する人とは、こんなものなのだろうと、妙に
納得させられるものがあった。
それと同時に、常にそのファッション性において、時代を先取りした、意表を突くきらめきを見せる優美とは、波長が合うのだろうとも思っていた。