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携帯値下げ大競争、楽天が選ぶ道
証券部 秦野貫
証券部 秦野貫
楽天の低価格を武器とする携帯電話の事業環境が厳しさを増している。
NTTドコモが低価格路線に動き出し、楽天と料金面で並ぶ新プランを始める。
4月に主要キャリアとして新規参入した楽天の携帯事業は、投資先行で当面赤字が続き、
競争激化から顧客獲得が遅れれば黒字化が遠のく。楽天が取り得る料金戦略とそのハードルを探る。
「ドコモの新プランを受けて対抗策を検討しているのではないか」。
「ドコモの新プランを受けて対抗策を検討しているのではないか」。
12月4日、こんな観測がメディア関係者の間で駆け巡った。
同日、楽天が7日に予定していた新型製品の記者説明会を中止するとしたためだ。
楽天は関連を認めていないが、突如現れた「楽天キラー」(シティグループ証券の鶴尾充伸氏)
への対策が求められるのは必至だ。
楽天は「月額2980円でデータ使い放題」という安さとワンプランの分かりやすさを打ち出している。
契約数300万件まで初年度無料などとするキャンペーンを展開中だ。
ただ11月で160万件と、8月時点で「年内300万件が見えた」(三木谷浩史会長兼社長)としていたペースは鈍化している。
基地局整備に2029年3月までの10年間で8000億円を投じる計画としており、当面は赤字だ。
20年12月期は携帯事業で2000億円規模の営業赤字を計上する可能性がある。
ドコモは3日、データ容量20ギガバイトの月額2980円プランを21年3月から始めると発表した。
容量上限はあるが安定したドコモの通信網を低価格で利用できる。
菅義偉政権が携帯料金の引き下げを求めるなか応じた格好で、
大手3キャリアのドコモ以外ではKDDIやソフトバンクも低価格プランを検討しているもようだ。
一段の競争激化が見込まれるなか、楽天が取り得る対抗策はどんなものか。
通信業界関係者やアナリストなどへの取材を踏まえると、黒字化に向けたシナリオは主に3つ想定される。
それぞれのシナリオの実現度について、ハードルの高低を必要な契約数の試算を通じ展望してみる。
総務省に提出した事業計画などによると、
楽天は23年ごろに700万~800万件程度で黒字化すると見通しているもよう。
売上高は年間2500億~2900億円程度の計算となり、費用も同等になる。
この構図が大きく変わらない25年ごろまでを想定して必要な契約数を試算した。
シナリオ1 現行プラン値下げ
ワンプランの分かりやすさを堅持しつつ割安さも打ち出し続けるために、現行プランの値下げに踏み切る。ただ1契約あたりの月間平均収入(ARPU)は値下げに連動して減るため、従来想定よりも多くの顧客を集めなければならない。黒字化には500円引き下げの月額2480円なら900万件程度、1000円引き下げの月額1980円なら1100万件程度が必要になる。シナリオ2 データ低容量の割安プラン追加ワンプランの分かりやすさを犠牲にしてデータ低容量の割安プランを追加する。従来型の携帯(ガラケー)利用者などデータ容量を求めない層を狙う。ドコモの21年3月期の契約数見通しでガラケーは2割程度。楽天が月額1980円のデータ低容量プランを設け、2割の顧客がこれを利用したとすると、両プラン合計800万件程度で黒字化できそうだ。シナリオ3 現行プラン維持で実質的値引き策現行プランを維持しながらも、初年度無料キャンペーンの対象者数を拡大したりポイント還元を強化したりして、実質的な値引き効果を打ち出す。必要な契約数は変わらず700万~800万件程度だ。ただ料金の割安さが打ち出しづらくなるため、契約獲得ペースは一段と鈍りかねない。
なるべく早く黒字化に必要な契約数を集める観点からすると、「大手より割安」の看板を失わずに契約数が比較的少なくて済むシナリオ2を選択する可能性が高い。
もっとも専門家の間でもシナリオはまだ絞られていない。IT(情報技術)系の調査分析に強いMM総研の横田英明氏はシナリオ1やシナリオ2に関わらず「ドコモ新プランの安さのインパクトは強い。安さが売りの楽天は価格では負けられない」と話す。シティグループ証券の鶴尾氏は「同じ1000ポイントの付与でも、楽天経済圏で多様な使い道がある楽天のポイントは他社より価値が高く差をつけられる」としてシナリオ3を有望視する。
市場は楽天の携帯電話事業が業績全体にどれだけ重荷となり続けるのかを懸念している。株価はドコモの新プラン発表を受けて1割近く下げた。これまで消費者の間では料金面への評価が高い一方、通信品質への懸念も存在してきた。ドコモの新プランを受けた料金面の対応だけでなく、通信環境の改善も進めて競争力を高めていく必要がある。