なぞなぞのような問題です
強くて、めでたい言葉です
突然ですが
「勝男武士」って読めますか?
この漢字、人によってはすんなり読めるし、
一方で、ハマる人は必要以上に難しく考えてしまいそうです。
「勝男」は「しょうなん」、「武士」は「たけし」…?
いえいえ、もっとシンプルに考えたほうがよいかもしれません。
気になる正解は…?
正解は、「かつおぶし」でした。
鰹節に「勝男武士」と当て字がなされるのは、戦国時代からだとか。
戦に勝てるようにと願いを込めてやりとりされる贈答品に鰹節があり、この字が当てられたようです。
現代でも結納で贈られる品の目録には「勝男武士」と書かれます。
強くて、めでたい文字づらですよね。
鰹節=勝男武士
鰹節に「勝男武士」の漢字をあてて「かつおぶし」と読む一種の文字遊びは、戦国時代からあったようです。鰹の賞味が、まず公家階級から始まり、ついでこの食習慣を戦国大名がとりいれたといわれます。そのころになって「勝男武士」という書き方も……と考えるのが妥当でしょう。戦国武士の縁起かつぎ「勝男武士」という書き方は、縁起かつぎの表われでもあったのです。日本鰹節協会発行『鰹節』には要旨つぎのような見解が記述されています。戦国武士たちは、常に生死の関頭に立たされているだけに、真剣になって縁起をかついだものである。出陣とか凱旋にあたって、「打ちあわび・搗ち栗(かちぐり)・昆布」を飾った儀式にも、敵に「打ち・勝ち・喜ぶ」という祈りがこめられていた。 打ちあわびは「のし(熨斗)あわび」で、貝のあわびの肉を薄く伸ばしたものであり、搗ち栗は勝栗とも書いて栗の実を乾かし渋皮を取ったもので、二つとも祝儀用に使います。鎌倉武士の北条氏綱が戦いの引き出物に鰹節をいつも使った縁起かつぎも伝えられています。とにかく鰹を勝男と書くことで、勝利する武士でありたい悲願を心理的に、ちょっぴり……というところでしょう。しかし、この裏に陣中食として鰹節が携帯便利、栄養豊富という実用性が、はるかに重みを持っていた、というのではないでしょうか。 譬(たと)えの「武士と鰹節」古くから言いならわされている譬えから「武士と鰹節」に関係のものを拾ってみますと――*武士の模範=節義固く私欲を削って主君に仕える武士を鰹節に譬える。鰹節は固く削って食用にすることから。 「良きさぶらいというは、弓馬の道を極め、義をみがき、信を先として、私欲の心を削り……ひとに鰹節とも言わる」と江戸時代初期の『仮名草子』にある。 *鈍武士(なまくらぶし)=なまくら刀を帯びた武士は、意気地のない武士、腰抜けざむらいである。「生武士(なまりぶし)」とも言う。これは鰹の「生節(なまりぶし)」に由来する。江戸時代の国語辞書『俚言集覧』に「竹の節か木の節か鰹節でもあるまい」と手きびしくでている。前の模範の方は「かまくら武士」だろうか、そうすると「なまくら武士」は一字違い、いつどこの武士でしょうか。 *参考書=宮下章著『鰹節』鈴木業三編『続故事ことわざ辞典』(東京堂出版) 小学館『日本国語大辞典』 |