「クローズアップ現代+」が富美加さん問題を特集 すれ違う「辞め方」論争
2017.03.02(liverty web)
厚生労働省の「芸能人も労働者とみなす場合がある」「芸能事務所の指揮命令の下にある芸能人は、労働者。実態を見て判断すべき」との見解であり、芸能事務所の都合第一の「専属契約」は対等ではなくて、隷属契約で人権侵害であるといえる。
《本記事のポイント》
- 富美加さん問題の争点は「芸能人は労働者か」
- 芸能事務所はタレントへの「投資」を回収したい
- そのまま仕事を続けて「電通の女子社員」になってもよかったのか
NHKが1日に放送した「クローズアップ現代+」で、「芸能人が事務所をやめるとき~"契約解除"トラブルの背景を追う~」と題する特集が組まれた。
女優の清水富美加さん(法名・千眼美子)は2月、宗教法人・幸福の科学に出家し、所属していた芸能事務所レプロに契約解除を通知した。一方、レプロ側は「急な契約解除には応じられない」と主張し、両者は平行線をたどっている。
両者の食い違いを生んでいるのは、「芸能人と芸能事務所の契約を、法律上どのように捉えるか」という点だ。番組は、双方の視点を比較検証する内容となっていた。
争点は「芸能人は労働者か」
一般的な会社員は、会社と「雇用契約」を結び、会社の指揮命令の下で「労働者」として働く。労働者は民法上、やむを得ない理由があれば、契約を解除できる。
一方、芸能人と芸能事務所との間で結ばれる契約は、「専属契約」という形になっていることがほとんど。これは、両者が"対等な事業主"同士の業務提携を結んでいるという体裁だ。
この「専属契約」には、上記のような民法上の規定を無視するようなものになっている。そのため事務所は、「急な契約解除には応じられない」としている状況だ。
政府見解も「芸能人は事実上の労働者」?
しかし清水さん側は、芸能事務所との関係は、決して"対等"ではなく、事実上の「雇用契約」だったと訴える。
番組でも、厚生労働省の「芸能人も労働者とみなす場合がある」「芸能事務所の指揮命令の下にある芸能人は、労働者。実態を見て判断すべき」との見解などが紹介された。民放のワイドショーなどでは一方的な清水さん批判が目立っているが、本番組でこうした厚労省見解が紹介されたことは、注目に値する。
「芸能人への投資を回収したい」
一方番組では、「芸能人はいつでも辞めることができる」という見解に意義を唱える立場も紹介された。
出演した芸能事務所社長の太田光代氏は、「(事務所がタレントの)能力を伸ばすためにレッスンをしたり、お金をかけるというと言い方はよくないが、売れる前の努力をする。そこは、(一般的な雇用契約の考え方を)当てはめてもらっても困る」とコメント。
また、レッスンやプロモーションに費やされた「莫大な投資」を回収する前に、タレントが事務所を辞めることに対して、不満を述べる芸能事務所関係者の声も紹介された。
そして番組は、出演者の「散らかしちゃって辞めるのは、どの仕事もそうだが、後に残ったイメージが悪い。双方のコミュニケーションが大切」「辞め方のルール作りが必要」といったコメントで締めくくられた。
清水さんは穏便な「辞め方」を目指していた
ワイドショーなどに比べれば、今回のクローズアップ現代は、中立な番組構成を目指していたと言える。
しかし、「双方の言い分があるが、いずれにせよ穏便な辞め方が望ましい」というトーンに、「清水さんも、辞め方が悪かった」という感想をもった視聴者もいたかもしれない。少し補足が必要だろう。
清水さんは心身共に憔悴した状態で、撮影中の映画はなんとかクランクアップまで耐え、その後に事務所側に契約の解除を求める。その段階では、徐々に仕事を整理しつつも、「2月中の仕事の大半は責任をもってやり遂げよう」と考えていた。
しかしレプロ側は、すでに入っている仕事をすべてやり遂げよと押しつけて来た。その中で、清水さんの状態がさらに悪化し、2月8日以降、不本意にもドクターストップで仕事をすることができなくなったのだ。
そもそも清水さんは、契約解除を求める以前から、仕事内容への不適合で精神的に追い詰められ、マネージャーに何度も「死にたい」と訴えていた。しかし、取り合ってもらえなかったという。
「電通女子社員」のようになってもよかったのか?
こうした事実を考えても、「もっといい辞め方があった」「無責任だ」と言えるだろうか。「死にたい」と漏らしている少女を、「投資を回収しなければ」「専属契約だから」といった理屈でさらに働かせ、電通で自殺をした女子社員のようになってもいいと言うのだろうか。
番組中で紹介された「タレントへの投資を回収する」という見解からも分かるように、一部の芸能事務所には、芸能人を「商品」や「機械」のように捉える発想がちらつく。
この「奴隷的な労働」「人権侵害」の部分にメスを入れなければ、今回のように追い詰められる若い芸能人は、減ることはないだろう。
【関連書籍】
ザ・リバティ2017年4月号では、「清水富美加さん出家の本当の経緯」や「テレビが言えない、芸能人の"奴隷労働"の実態」を紹介している。
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1828
(Amazonページ)
http://amazon.co.jp/o/ASIN/B01MRZGQSO/liberty0b-22/
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