ザ・リバティ4月号では、「カープはなぜ広島に必要か」と題し、地元広島の作家・迫勝則氏に「2019年度決算まで黒字を45年間続けた」カープの堅実経営についてインタビューを行いました。

 

設立直後の財政難で、球団身売りか、解散かの危機には市民が「たる募金」を行って助けたカープ。その後、「親会社の支援なしに黒字」という他に類を見ない堅実経営を続け、事業を存続させてきました。

 

コロナ禍で2020年度、21年度は赤字を計上したものの、2022年度決算では3年ぶりに黒字を計上。要因としては、入場料が前年比22億円増、グッズ売り上げが同5億円増となったことや、米大リーグに移籍した鈴木誠也選手の譲渡金17億3500万円が挙げられています(3月23日付中国新聞電子版)。

 

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迫氏は5月30日発売の新刊『逆境の美学──新井カープ"まさか"の日本一へ!』を上梓。広島生まれ・広島育ちの新井新監督への期待や鼓舞に乗せて、広島のファンとチーム(監督)の間に漂う空気を描き出しました。新井監督をはじめ、文中に紹介されている歴代監督にまつわるさまざまなエピソードからは、「被爆地の復興シンボル」ともなったカープの歴史を知ることができ、球団と町の人々の絆が浮かび上がります。

 

本記事では、迫氏のインタビュー番外編を紹介いたします。「市民のために、この球団を存続させなければならない」という至上命題を持つ、カープが堅実経営を続ける背景とは。本誌4月号記事「カープはなぜ広島に必要か──時代を超えて存続し続ける鍵は『使命感』──」と合わせてご覧ください。

 

 

作家

迫 勝則

迫勝則
プロフィール(さこ・かつのり) 1946年、広島市生まれ。山口大学経済学部卒。2001年マツダ(株)退社後、広島国際学院大学で教鞭をとる。14年間、広島テレビや中国放送でコメンテーターを務める。現在も執筆、講演などを続ける。『カープを蘇らせた男』『森下に惚れる 日本で一番美しい投手』など著書多数。

 

──原爆投下から立ち上がる広島で「市民球団」として立ち上がったカープには、それを維持しようとずっと努力されてきたという、「宿命」があると伺っています。

 

迫勝則氏(以下、迫): カープは、最初は地元企業の集団で立ち上げた球団なのですけれども、マツダが世界の企業になっていく中で松田家がオーナーになりました。現オーナーの祖父にあたる松田恒次(つねじ)さん(マツダ3代目社長)が、本当にカープに情熱を傾けられた。初代の広島市民球場をつくる時にも貢献されています。

 

そして、松田家は「我々は被爆から立ち上がってきた広島の球団なんだ」と心底思っていて、現オーナーの松田元オーナーと話していても、彼が本気でそう思っていると感じます。そこは何より強いですね。今年も「なるほどな」と思ったのは、球団の赤字が2年続いてきた中で、寄付をされたことです。

 

昨年、鈴木誠也選手がポスティング制度でアメリカの球団に移籍したので譲渡金が入りましたが、その一部の5億7千万円を寄付したのです。赤字から早く脱却するには、譲渡金で補填したいはずなのですけれども、オーナーは「鈴木誠也が育ったのは皆のおかげだ。寄付するのが当然だ」とメディアで言っているのです。

 

寄付先は、キャンプ地の沖縄や宮崎県日南市の他に、女子野球の活動に力を入れている三次市と廿日市です。野球が広く普及するということはカープにとってもいいことである、という循環の考えですね。これはなかなかできないことです。

 

 

広島を励ましたカープ、カープを応援する広島