イスラエル軍の砲撃によって3人の娘を殺されたガザ出身医師が、それでも共存の可能性を信じ行動するドキュメンタリー映画「私は憎まない」【高間智生氏寄稿】
2024.10.13(liverty web)
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アップリンク吉祥寺ほか 全国順次ロードショー
《本記事のポイント》
- 娘たちを殺された直後に語られた「共存の道を求めるべき」という真実の叫び
- 人間の絶対的な平等性を確証する"魂創造の真実"
- 地球上に広がる「憎しみの連鎖」を断つために
「自分はイスラエルとパレスチナの架け橋であり続けたい」
3人の娘をイスラエル軍の砲弾によって奪われた直後に、ガザ出身の医師アブラエーシュ博士が語った言葉だ。その真実の叫びは、人々の胸を打つ。
決して復讐心や憎しみを持たないという「赦しと和解の精神」に世界中の人々が動かされ、同氏はノーベル平和賞に5度ノミネートされている。
娘たちを殺された直後に語られた「共存の道を求めるべき」という真実の叫び
ガザ地区の貧困地域、ジャバリア難民キャンプ出身の医師で、パレスチナ人としてイスラエルの病院で働く初の医師となったイゼルディン・アブラエーシュ博士は、産婦人科でイスラエル人とパレスチナ人両方の赤ちゃんの誕生に携わってきた。
彼は、ガザからイスラエルの病院に通いながら、病院で命が平等なように、外の世界でも同じく人々は平等であるべきだ、とイスラエル人とパレスチナ人との分断に医療で橋を架けようとする。
しかし、両者の共存を誰よりも望んできた彼の赦しと和解の精神が、究極の試練にさらされる。
2009年1月、前年から始まったイスラエル軍によるガザ侵攻に際して、アブラエーシュ博士の自宅が戦車の砲撃を受け、3人の娘と姪が殺害されてしまうという悲劇が彼を襲った。
砲撃直後、「私はイスラエルでイスラエルの患者を診察している。それなのになぜこんな仕打ちがあるのか」という博士の涙の叫びの肉声はイスラエルのテレビ局で生放送され、イスラエル中に衝撃と共に伝わった(この放送はイスラエル国内に大きな反響を呼び、イスラエル軍の一時停戦につながったとされる)。
そして翌日、テレビカメラの前で博士は、突然、憎しみではなく、共存について語りだす。
「私はパレスチナ人であることに誇りを持っている。でも、私はイスラエルとパレスチナの架け橋だ。和解の実例になりたいのだ」
今回の映画公開に合わせて、今年10月に来日したアブラエーシュ医師は、日本のニュース番組によるインタビューのなかで、当時のことを次のように振り返っている。
「私が絶対に受け入れがたいのは復讐です。復讐で娘たちは戻らない。娘たちは若く気高くて神聖でした。その魂は、崇高な大義や人類のために生かされるべきです。暴力の先には何もありません。憎しみは暴力を生みます。暴力は暴力を広げていきます」
「否定を肯定に。暴力を平和に。憎しみは優しさに変えていくべきです」
娘たちを一瞬で失うという極限状態の中で、憎しみではなく和解を呼びかけたその崇高な叫びに、心を揺さぶられずにはいられない。
人間の絶対的な平等性を約束する"魂創造の真実"
こうしたアブラエーシュ医師の「暴力の否定」と「共存への信念」の背景には、ガザ地区の貧しい境遇から、医学を学ぶことによって身を立てて成功を収めたこと、そして、イスラエル人とパレスチナ人の患者を同時に診察してきて、人間には、神から創られたものとしての絶対的な平等性があるとの確信に裏打ちされているようだ。
「ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒の赤ちゃんの違いは? みんな同じく生まれたての赤ちゃんだ」
こうした人間の被創造物性について、大川隆法総裁は、その著書『真説・八正道』の中で次のように指摘している。
「かつて、はるかなる昔に、神仏の意識体の一部が散乱し、大いなる『人間を創るという理念』の下に、個性化して現れてきたみなさんです」「みなさんが『創られた存在である』ということを、まず知らなければならないということです。『創られた存在である』と同時に、『目的性を持った存在である』ということを知らなければならないのです」
ともに一なる神から創られた存在である人間が、憎しみ殺し合うことこそ、根本神の悲しみそのものである。アブラエーシュ医師の人類愛に基づく許しの実践は、被造物である人間同士が果てしなく憎しみ合うことの愚かさを、まざまざと実感させてくれる。
地球上に広がる「憎しみの連鎖」を断つために
宗教や民族の違いに発した紛争や戦乱は、いまだに世界各地で続いている。こうした「憎しみの連鎖」を止めることこそ、今最も必要なことだ。そして、その究極の解決策は、人類を創られた根源的な神のご存在を明らかにし、その一なる神に向かって全人類が心を合わせていくことによって、憎しみを超えて愛を取ることではないだろうか。
このことについて、大川隆法総裁は、2017年に行われた東京ドームでの大講演「人類の選択」の中で次のように語っている。
「あなたがたに言う。真の神の言葉を知って、人類はその違いを乗り越えて融和し、協調し、進化し、発展していくべきである。これが、地球神エル・カンターレの言葉である。二度と忘れることなかれ。あなたがたの心に刻むのだ」「人類は一つである。地上的な争いを乗り越える神なる存在を信じ、その下に、自由と民主主義を掲げる世界を、これから続けていくことを選び取るのだ」(『大川隆法 東京ドーム講演集』より)
主なる神は、人種や民族の違いを超えて人類を愛している。人類は、今こそ、この主なる神を信じることを通して、許しとは何かを真剣に学び取らなければいけないだろう。
憎しみが連鎖する中で、共存の道を模索し続ける医師の行動を描いたこのドキュメンタリー映画は、その実践的な第一歩が、まず、憎しみという"毒"を心に食らわず、「私は憎まない」と宣言することであることを教えてくれる。
『私は憎まない』
- 【公開日】
- アップリンク吉祥寺ほか 10月4日から全国ロードショー中
- 【スタッフ】
- 監督:タル・バルダ
- 【キャスト】
- 出演:イゼルディン・アブラエーシュ
- 【配給等】
- 配給:ユナイテッドピープル
- 【その他】
- 2024年製作 | 92分 | カナダ・フランス合作
【高間智生氏寄稿】映画レビュー