23年前、香港がイギリスから中国に返却された。返却後、50年間は「高度な自治」を香港に認めるというのが、返却時のイギリスと中国の両政府の取り決めであった。しかし、50年の半分を待たずして、中国は「国家安全維持法」を制定し、香港が中国本土と同じ政治制度のもとにおくことを宣言した。それを主導したのは習近平である。中国政府のこのやり方に対して、イギリス政府の対応が発表された。イギリスのボリス・ジョンソン首相は次のように声明を出した。「返還前に香港の住民であった人に対して、イギリス市民権を与える」と言明した。このことは何を意味するのか。厳密に言えば「市民権」と「国籍」は違うのであるが、「市民権」は「国籍」と同じように扱われる事ができる。その国の国籍がある人は、当該国により保護されるということである。国家は自国籍を持つ人に対しては保護する責務を負う、というのが通説である。それゆえ、イギリスの市民権を持つ香港人がイギリス政府に保護を求めてきたなら、それに対処することがイギリス政府には求められる。「困っている子分に、かっての親分が<困っているのなら、俺んとこ来い>」と言っているようなものであろうか。イギリスはかっての宗主国として「意気を見せた」ことになる。
さて、我国の対応はどうなるのであろうか。官房長官が談話を発表したようだが、いまいち、通り一遍の感じは否めない。それもそのはずである。つい数ヶ月まえまでは、中国の政治指導者を「国賓」として迎えようとしていた。「国賓」を迎えるなら、それにふさわしい人物でなければならない。もしコロナ禍がなければ、それは実現されていただろう。中国指導者を「国賓として迎える」ことがあったなら、日本は世界に大恥を晒したことだろう。コロナによりそれが避けられたことは、我が国にとっては幸運であったかもしれない。
追記
この記事を書きながら、かっての任侠映画を思い出した。
旧い仁侠道を持つ元ヤクザが新興ヤクザの「金と権力にものを言わせるやり方に立ち向かう」というお馴染みの構図である。観客は旧い元ヤクザの振る舞いに大いなる拍手をしたことは言うまでもない。
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