コンパクト・シティーの姿(3)から続く。
前回までの「コンパクト・シティーの姿(1)、(2)、(3)」では、少子高齢化社会への問題意識、Feasibility Study(実現可能性の検討)、タスク・フォースの例を紹介した。(2)と(3)は中堅の多国籍企業の事例だった。
一般に、人間活動に由来する大きな社会変動は突然に起こるものではない。戦争といえども、ある程度はその可能性を予測できる。また、多くの予測の基礎となる人口の予測そのものは、予測誤差が少ないと分野だと一般に云われている。もちろん、戦争、疫病、飢饉、移民、政情不安などで予測が狂うこともある。
余談になるが、昔のアメリカで食品メーカーが人口予測をたった1%ほど過小に評価したために、工場建設計画と実需が乖離、窮地に陥った。その話は、マーケティングの授業で学んだが、長期計画の修正の難しさを物語る話だった。また、この講義のケース・スタディーでは、予測ではデータの蓄積量が多ければ多いほど精度が向上すると教わった。もちろん、AIも然り、コンピューターの性能が決め手になる。
ここで言いたいことは、政府は、日本が近い将来に確実に遭遇する少子高齢化社会への対策を、タスク・フォースを立ち上げて本気で検討すべきであると。
その規模は、筆者が経験した中堅企業の数十億円ていどのプロジェクトではなく、遙かにスケールが大きな研究・開発(R&D)型のプロジェクトである。そのプロジェクト・メンバーは、国内外の英知を集めた多国籍チームである---高齢化の問題は独り日本だけでなく人類の問題でもある。
ここで、日本の危機に立ち向かうタスク・フォースが存在するかどうかをインターネットで検索した。
5.日本の動き
少子高齢化社会に深く関連しそうな省庁の一つ、国土交通省のHP(Home Page)を検索した。検索の結果は下の表に示すとおりである。
(1)国土のグランドデザイン2050(表の黄色い部分=全国計画と広域地方計画を含む)
この計画は、当ブログ「日本の将来---5.展望(4):Gデザイン50計画-国土交通省」2014-07-25 および「日本の将来---5.展望(5):Gデザイン50の位置づけ」2014-08-10 ですでに検討した。しかし、次の理由で検討を中止した。
理由:
①2050年の人口は約9700万人(総務省統計局 平成24(2012)年1月推計)である。9700万人は
日本の人口減少の入口に過ぎない。
その後、さらに人口は減少、2100年頃には約4600万人、それは2008年の人口1億2800万人
の約3分の1の人口である。この意味で2050年を目標にするプロジェクトは的外れである。
②「グランドデザイン2050」では、人口6000万人のスーパー・メガリージョン(東京・名古屋・大阪の
都市経済圏)を目標にしている。しかし、筆者の目には、せっかくのスーパー・メガリージョンも完成と
同時にゴースト・タウン化が始まると見える。
移民を検討する案もあろうが、人口の過半数が移民の日本は、もはや日本とはいえない。
・・・当ブログの検討範囲外。
(2)「国づくりの100年デザインの提案」(上の表の緑色部分)
この提案は、国交省各部門から選出された36名からなるタスク・フォース・チームが平成15年4月に公表した21のアイデアである。ただし、この提案には次のような国交省のコメントが付いているので注意したい。
本編の記述内容はすべて、36名のタスク・フォース・チームが「21世紀の100年間にわたって日本の国土はどうあるべきか」について、自由な意思・発想に基づいて様々なアイデアを出したものであり、国土交通省はじめ政府の公式見解ではありません。】・・・国交省各部門の職員36名が提言する21のアイデア(提言)には国交省と政府は責任を持ちません。⇒この国交省の見解は理解に苦しむ。
参考のため21のアイデアに目を通したが、Technical & Operational Feasibilityにさまざまな疑問を感じた。またアイデア間の整合性を欠くものもあり、36名のタスク・フォースは「船頭多くして・・・」の轍を踏んでいるように見えた。36名に「丸投げ」だけで、彼らの成果物に目を通すことすらしなかった国交省には、日本のために仕事をする役所か?との疑問をもった。
さらに念のため、次の二つの白書をチェックしたが、注目すべき記事は見当たらなかった。
1.高齢社会白書(令和元年版)
2.令和元年版介護白書
「高齢化の推移と将来推計」1950~2065年(介護p.95)は興味深いが、2100年頃の推計は存在しない。これらの白書には無理な要望かも知れない。
---◇◇◇---◇◇◇---
残念ながら、現在の日本は「その日暮らし」の状態である。国会は「桜」「モリカケ」で時間を浪費、「新型コロナ」への後手々々の対応、国会議員も頭数が多すぎて「船頭多くして・・・」の弊害が出ている。
たとえば、「マスク不足」も「新型コロナ」への対応の遅れの結果である。適切に対応策を打った台湾はスマートである。下の資料に含まれないが、この番組では医療機関の専用マスク備蓄は2ケ月分あるとキャスターが説明していた。台湾の管理体制は良き参考になる。IQ180+の台湾38歳閣僚タン氏の仕事らしい。
テレビ朝日の資料
出典:テレビ朝日、羽鳥モーニングショー2020/3/5 8am~の画面
筆者の娘一家が在住するベトナムもアクションが速い国である。孫が通うインター全校はテト(旧正月)明けから現在もDistance Learning(遠隔教育)を実施している。コンピューターの活用には学校・生徒・家庭の経験は豊富、アメリカ本土と変わらない。また、検疫、入出国管理、濃厚接触者隔離などの防疫管理は厳格、平和ボケの日本とは違っている(Facetime筆者の娘談)。
今回のコロナ騒動で諸外国の動きを見るにつけ、最近の日本は磨耗期(Wear-out期)に入ったのか、反応が緩慢である。政府には打てば響く素早い動きを求める。
続く。