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コンパクト・シティーの姿(10)---日本のITの傾向と対策:対策

2020-09-25 | 地球の姿と思い出
「日本社会のITの傾向と対策:傾向」から続く。

(2)日本のITの傾向と対策:対策
前回に述べたとおり、日本のITの傾向は分散型、その傾向は公共システムにも色濃く表れている。言い方が悪いが、中央が黙っているので地方自治体はてんでバラバラにシステムを開発・運用しているといえる。

これは極めて非効率的、無駄な作業も多いと見られる。

10万円給付のオンライン申請が混乱したのは記憶に新しい。あちこちの自治体でオンライン申請停止が相次いだ。ランダムに発生するトラブルに自治体は人海戦術で対処した。

忘れてはいけないが、2045年代以降は大幅な人口減の時代、中には消滅の危機に陥る自治体があるかも知れない。さらに、その頃の日本では健常な働き手の比率も減少し、異常事態への対処を人海戦術に頼るのも難しくなる。最悪、トラブルのドミノ現象が起こり行政崩壊もありかも知れない。

しかし、行政崩壊ばかりはなんとしても回避しなければならない。

そのような危機を想定するにつけ、菅新内閣の行政刷新担当大臣とデジタル庁には大いに期待する。

ここ十数年、自治体システムの標準化と集約化を目指す動きがあちこちに見られる。デジタル化が遅れ日本社会だが、自治体システムを本気で整理統廃合すれば、近代的なシステムを構築することが可能である。デジタル技術が発達した昨今、近代的なシステム構築の成否は、やる気と決断の問題である。

---◇◇◇---

最近、Yahooで「自治体システム 標準化」を検索した。いくつかの検索結果をここに紹介する。
標準仕様書案等に関する全市区町村及び事業者への意見照会について 2. 自治体 システム等標準化検討会開催要綱の改正について 3. 新たな自治体情報
セキュリティ対策に係る検討について

総務省トップ > 組織案内 > 研究会等 > 自治体システム等標準化検討会(税務システム等標準化検討会) > 税務システム等標準化検討会(第1回). 税務システム等標準化検討会(第1回)...

2020年4月8日-地方自治体が基幹業務システムに使うコストを3割減らす――。政府は「5年の計」で自治体における基幹業務の標準化と共通クラウド化を進め、コストダウンを図る考えだ。自治体情報システム市場はどう変るのか。

2020年7月21日-高市早苗総務相は21日に東京都内のホテルで開催した政令市の市長が集まる指定都市市長会に出席し、自治体の情報システムの標準化について「国の主導的な支援で推進していきたい」 ...
等々・・・以上で検索結果の紹介終了

菅政権でようやくデジタル庁の設置が決まった(時限組織?本当ならば甘い)。筆者の目にはデジタル庁の創設は「遅すぎる」と映る。・・・今日の日本政府を民間企業に例えると「本社にIT部門がなく、出先機関(地方自治体)は全体像なしでやむを得ず日常業務のコンピューター化を進めている」ように見える。

---◇◇◇---

分散したシステムの標準化と集約化という言葉は、筆者の頭には遠い記憶を呼び戻す。

1990年~98年にクラウドを利用した集約システム(=一元化システム)の思い出である。技術担当者が雲の絵を描いて、空を指差しながら国際通信網をクラウド(cloud)と呼ぶと説明したのを覚えている。

あのタスクフォースは、欧米アジア太平洋地域に事業所を展開する企業が、各国がてんでバラバラに開発したシステムを本社に集約する仕事だった。規模は小さかったが、業務ルールの標準化と整理統廃合を進め、経営情報の透明性と一元化を実現した。

世界のあちこちで生産する製品の生産計画、在庫・配送計画の効率化を実現した。また、各国のシステム開発を本社に集約したので、システム要員の人材不足も緩和した。効率の悪いシステム開発、システム品質のバラつき、トラブル解消の迅速化、データベースの一元化とオンライン更新による精度向上なども実現した。

このプロジェクトの結果として、筆者は今でも象徴的な次の3つ言葉を思い出す。
①魔法の鏡
白雪姫の話には世界一の美女を映し出す魔法の鏡がある。一方、世界全体の経営情報をリアルタイムで表示するパソコン画面が、現代の魔法の鏡に思えた。
②負荷の平準化
Daytime(昼間)は太陽と共に東から西に移動する。同様に、米州→アジア太平洋地区→欧州の事業所がDaytimeを迎える。コンピューターの負荷がDaytimeの移動と同期すのは当たり前、しかし、その動きは不思議だった。
③「仕事が無くなった」
 新システム稼働後の各国子会社の仕事量は減少した。特にその変化は経理部門に現れた。
 以前の月末月初は、自国用と本社用の財務報告書作りで繁忙を極めた。日本の経理主任はネジリ鉢巻きで徹夜を辞さない態勢だった。しかし、新システムは自国用(日本法規)と本社用(国際会計基準)の財務諸表は同時作成、月末月初はほぼ定時終業になった。雑用もすっかり少なくなり、本社への報告資料作成や本社への出張も少なくなった。「仕事が無くなった」のでパートの女性も去り、社員数も減少した。

最後の「仕事が無くなった」の補足になるが、手作業をコンピューターに任せれば、仕事が速く片付きミスはほとんどなくなる。コンピューターには部門間の壁がないので、自然に組織もコンパクト化する。

人口減少時代を目前に控えた日本、コンパクト・シティーだけでなくコンパクト組織の実現も喫緊の課題である。

続く。

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